京都府八幡市 飛行神社
コーヒーシリーズで12日連続投稿した直後に、カクヨムで8月中、毎日投稿したら500円相当のポイントをくれるという企画が始まった。タイミング悪すぎ。
というわけで、エセ観光客・近所の旅シリーズを、スポットごとに分けて投稿することにすることにした。……まあ、1ページにごちゃごちゃ書くより、その方が読みやすいかもしれない。
今回の目的地は飛行神社。
本当は行く予定はなかったのだが、高槻に行くついでに寄れたので寄った。
飛行神社は、日本で初めてゴム動力の飛行器を飛ばした、二宮忠八という人物が建てた神社である。
二宮はゴム動力飛行器の飛行に成功し、次いで、人が乗れる飛行器を試作していたが、その途中で日清戦争が始まり出兵。軍用飛行器の設計図を軍に上申したが却下された。
軍は当てにならないと悟った二宮は、軍を除隊し、大日本製薬株式会社に入社して働いて資金を稼ぎ、ようやく資金も貯まって製作に入れそうになったが、1903年に、ライト兄弟による人類最初の初飛行が成されてしまう。
いまさら飛行器を作ってもライト兄弟の二番煎じとしてしか見てもらえないと悟った二宮は、飛行器の製作を断念。
その後、1915年に、飛行機事故による犠牲者を弔うために建てたのが飛行神社である。
忠八が亡くなったことで、しばらく飛行神社は廃絶していたようだが、1955年に息子の顕次郎によって再建される。
そして、1989年、忠八の飛行原理発見百周年を記念し、境内が改装された。このときに、ギリシャ風の拝殿やステンレス製の鳥居、資料館など、今日の飛行神社を象徴するものが新設された。
wikiによると、1992年に顕次郎は亡くなり、三代目宮司に二宮裕二が就任。この時、宗教法人としての資格を得たらしい。
その後の話はwikiに書かれていないが、四代目以降の宮司は二宮の血縁者ではなくなっており、2025年現在は五代目となっている。この辺の詳しい事情は知らない。
飛行神社は、第1殿には饒速日命、第2殿には飛行機事故で亡くなった人や、飛行機の開発に功績のあった人などが合祀されている。
そして第3殿には、大日本製薬株式会社の同僚達などが祀られている。
つまり、亡くなった人を英霊として祀っているわけで、靖国神社と性質としては似ている。
飛行神社は、入口にF-104Jのジェットエンジンが展示してあり、かなり目立つ神社である。神社には他にも、岸和田漁港から引き上げられた零戦の頭の部分も展示されている。
私は子供の頃に行ったことがあるが、当時はそこが神社だと思っていなかった。「飛行神社、飛行神社」と口では言っていたが、なにしろ神社らしい雰囲気がまるでなかったので、資料館みたいなものと思っていた。
久しぶりに行ってみると、やたらと監視カメラがわざわざ目立つようにたくさん設置されていたり、やたらと注意書きが多いしで、なんか変な雰囲気になったなあという感じがした。
特に違和感があったのが、本殿に参拝しなければ資料館に入れない、と書かれていたこと。
関係者しか閲覧できない資料館はよくあるが、閲覧はできるが参拝しなきゃダメ、というのは初めてである。
宗教関係の資料なら、それもわからんではない。しかし、飛行機に関する資料館に入るのに宗教的儀式が必要というのは変な感じがする。
あと、注意書きをよく読めば、資料館には、参拝して、入館料を払えば誰でも入館可なことは書いてあるのだが、ぱっと見だと「関係者以外立ち入り禁止」に読めなくもない書き方をしている。明らかに一見さんには入ってほしくない感じが漂っている。
実際、呼び鈴を鳴らして人を呼び、資料室への入館希望を伝えると、明らかに面倒くさそうな素振りを見せていた。
まあ、私はこの程度のことでは引き下がらないが。
かつて、個人経営の古本屋の多くはこんな感じだった。客が入ってきたら面倒くさそうに「何を探してるんや。あ? そんなんないわ」と、早々に追い返したがる。そこで私は「品揃えをひと通り見ても構いませんか?」と言い、たいがいの店主はあからさまにうざそうにしつつも「勝手にしろ」と身振りで示すのである。中には「用がないなら帰れ」と、はっきり言う店主もいたので、その場合は素直に帰った。
もちろん、愛想の良い古本屋や、やたらと文学談義で盛り上がった古本屋もあったので、みんながみんなそういうわけではなかったことは付け足しておく。
資料館は、昔訪れた時と大きくは変わっていなかった。……とは言っても、その時は子供だったので、資料の意味をちゃんと理解して見学するのは今回が初めてになる。
資料館の展示物の大半は、二宮忠八の残した設計図などの関連資料。あとは、自衛隊から寄贈されたコックピットの計器や、寄贈された大量の飛行機のプラモ。
飛行機関連の資料もあり、自由に読むことが可能。ソファも置かれている。
そして、製薬会社時代の資料も少しある。ほとんどが飛行機関連の資料の中で、製薬会社時代のものは異彩を放っている。
最近展示されたらしきものとしては、三菱重工から寄贈されたというロケットや人工衛星の模型と、フライトシミュレーターが置かれていてプレイ可能になっていた。
一見、ゲーム機が置かれてあったり、読める資料コーナーにソファがあったりで、資料館創設当時の「ゆっくりしていってね!」という雰囲気は残っているが、と同時に、わざわざ目立つところに監視カメラがいくつも設置されており、「見てんぞコラ」という威圧感もビンビンに受ける空間でもあった。
正直、資料館に展示されている資料そのものよりも、この資料館が辿ってきた変遷のほうが興味をそそられた。
明らかにこの資料館には違和感がある。来客を歓迎する雰囲気と、来客を嫌う雰囲気が混在している。「昔とは雰囲気が変わった」と感じた私の印象は、単なる思い出補正ではなさそうである。
帰ってから調べてみると、飛行神社は近年、メディア露出が増えており、特に2022年の連続テレビ小説『舞いあがれ!』でにわかに有名になったらしい。それで客が増えたものの、あの神社は狭いのでキャパオーバーになっているのだろう。
かつて、飛行神社は常連しか来なかった。だから暗黙の了解が通用していた。貴重な古い本が閲覧可能だったり、その資料コーナーにソファが置かれていたり、ゲーム機が置かれていたり、といったことは、信頼できる常連だけを相手にしていたからこそできたわけである。
しかし、メディアに露出したりするようになって有名になってくると、当然ながら、ルールを知らない客が増えてきて、暗黙のルールは通用しなくなってくる。
そこで神社は選択を迫られる。一見客を想定したルール整備を行うか、一見客にルールを叩き込むか。
飛行神社は後者を選択したわけだが、うまく行ってなさそうなのは雰囲気からわかる。
私としては、観光気分で飛行神社に行くのはおすすめしない。一見さんお断りな雰囲気が漂っているし、であれば、それを尊重するべきだと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます