300〜1000文字くらいのお話
さとね
「講義風景」
はい、と手を上げて先生の視線がこちらを捉えて初めて、俺は困ったなという顔をした。さっぱり聞いていなかった。この先生、口調が優しくて授業は分かりやすいし、教授という立場にしてはいい意味でオーラがない。口頭試問で教授陣が勢揃いした時、その威圧感に逃げ出したくなった。その時もこの先生は、少し困ったような、こちらを気遣うようなあたたかな目線を投げかけてくれた。
この瞬間も、先生はあの時と同じ表情を浮かべた。俺の視線の先では、馬鹿なあいつが今日当てられるはずの課題を慌てて解いている。高校生じゃないのだから、と呆れつつ、先生が「では回答を」と言い出す呼吸を抑えて、俺は手を上げたわけだ。
その問も知らないまま。
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