第50話 ロイヤルナイト

 昼食のあと、出発してから三十分ちょっとでゴブリン集落に着いた。

 他の魔獣に遭遇することもな、無事に来ることができたのでよかったよ。


「もしかしてこれがゴブリン集落か?」


 ゼストが、昨日までゴブリン集落だったところを見ながら聞いてきた。

 もちろん質問には頷いておく。

 家は残骸になってしまっているとはいえ、柵はそのまま残してあるのでなんとかここがゴブリン集落だと分かったのだろう。


「かなりボロボロになってるわね」

「これはもしかしてゴブリンの死体?」


 リアが焼け焦げたゴブリンの残骸を見て聞いてきたので、頷いて肯定しておいた。


「ゴブリンや家がすべて燃やされている……。いったい何があったんだ?」


 ゼストはゴブリン集落がこうなった原因がわからないようだ。

 どうやって俺がやったと伝えようか……。

 そうだ!


「ピュイ!」

「どうした?」

「「なに、すーちゃん?」」


 ゴブリンの死体に【ファイアーボール】を1発放つ。

 これで俺が燃やしたと伝わればいいが。


「もしかしてすーちゃんがゴブリン倒したの?」


 リアが正解に気づいてくれた。

 なんか、俺が伝えたいことに一番最初に気づいてくれるのはほとんどリアな気がする。

 俺が頷くと三人は驚いていた。


「集落が全部燃えて残骸になってるけど、これ全部朱雀がやったのか?」


 集落を燃やしたのは俺一人でやったことなので頷いておく。

 ナイトを倒すのだけはボア子に手伝ってもらったが、それ以外はすべて俺がやったことなのでゼストの解釈はあっている。


「すーちゃんすごい!」

「強いんだね、すーちゃん」


 アリスとリアのふたりがすごくほめてくれた。

 ゼストのほうはなにやら考え事をしているようだ。


「最初は何で集落の場所知ってんだって思ってたが、これを見て納得したよ。ゴブリン集落をつぶしてくれてありがとな」

「ありがと、すーちゃん」

「ありがとうね、すーちゃん」


 ゴブリンはほっといたらやばいんじゃないかと思って潰したわけだが、ゼストたちの役に立ったならよかった。

 感謝されるためにやったわけじゃないけど、礼を言われるとやっぱうれしいね。

 というか、ゴブリンや集落を燃やすという知識が正しかったようで良かったよ。


「それにしても、ゴブリンなんかの集落を死体ごと燃やすという知識はどこで手に入れたんだ?」


 やっぱゼストたちからすると、俺が集落の処理の仕方を知ってるのは不自然だよな。

 どこで手に入れたといわれても、ラノベですとは伝える方法がない。

 仮に伝えることができたとしても、ゼストたちからすると意味が分からないだろうが。


 ラノベについて伝えられるはずもなく、ゼストたちは集落の調査を始めだした。

 規模とか生き残りがいないかとか、いろいろと調べなければならないことがあるのだろう。






◇◇◇◇



 調査をしながら集落の最奥部まで来たときに、予想外の出来事が起こった。

 最奥部の地面にバカでかい黒い物体が倒れていたのだ。


 集落は奥に行くほど高度が高くなっていて、最奥部は集落内の一番高いところにある。

 昨日は残り魔力とか時間とかの関係で最奥部は調べることができなかったので、最奥部の階段を上った先にこんなものがあったことに気付くことができなかった。


 それは全身黒色で長さは三メートルほど、太さは直径一メートルほどもあった。

 体の質感を見るに、もしかしてこれ芋虫系の魔獣なんじゃ……。


 【ギガントデスワーム Cランク】

 【巨大な芋虫のモンスター。食欲がとても旺盛で、大きな口で相手を周囲のものごと丸のみにする。身体能力はC-ランクの平均ほどしかないが、高い再生能力と強力な酸性の唾液を吐くという厄介さからCランクに指定されている。人間、ゴブリンやオークなどの人型の魔獣が好物。なお、対象の個体は死んでいる。】


 【鑑定】してみたら予想以上にやばいやつだった。

 だけど、目の前のやつは死んでいるようだ。

 いったいここで何があったんだ?


「なにこれ? 多分魔物だよね?」

「気をつけろアリス!」

「その魔物はもう死んでるみたいだよ」

「そうか。生きていたら【隠密】でも使ってない限り少なからず気配がするはずだが、しないってことは死んでるってことか」

「【敵意察知】のほうも何も反応してないよ」

「なぜこんなところで死んでるのよ?」


 アリスの疑問はもっともだ。

 なんでこんなところで死んでるんだ?


 そのとき、集落の一番奥のひときわ大きな建物から、ガチャンガチャンと金属がこすれるような音が聞こえてきた。


「何か来るぞ。気をつけろ」

「「うん」」


 建物のほうを見ていると、中から金属製の鎧を着た人型の何かが三体出てきた。

 三体ともフルプレートアーマーを着ており、大きな盾と切れ味のよさそうな剣を持っている。

 真ん中の一体の盾や剣は両隣のやつより大きいので、真ん中のやつがリーダーなのかもしれない。


------------------------


種族:ロイヤルリーダー Lv51

名前:なし

状態異常:憤怒


体力 :1078/1078

魔力 :432/432

攻撃力:597

防御力:582

魔法力:131

素早さ:310

ランク:C


固有スキル

【配下統率】【配下強化】


スキル

【剣術Lv5】【切断Lv4】【盾術Lv5】【シールドバッシュLv4】【指揮Lv4】


耐性スキル

【物理耐性Lv2】【魔法耐性Lv2】【毒耐性LV2】【麻痺耐性Lv2】


称号

【小鬼近衛兵団長】


------------------------


 もしかしてとは思っていたが、ゴブリンの上位種で間違いないようだ。

 Cランクと予想以上に強かったが、なぜ昨日の時点で戦いに現れなかったのだろうか?


------------------------


種族:ロイヤルナイト Lv50

名前:なし

状態異常:憤怒


体力 :925/925

魔力 :277/277

攻撃力:513

防御力:504

魔法力:122

素早さ:298

ランク:C-


固有スキル


スキル

【剣術Lv4】【切断Lv3】【盾術Lv4】【シールドバッシュLv3】


耐性スキル

【物理耐性Lv1】【魔法耐性Lv1】【毒耐性Lv1】【麻痺耐性Lv1】


称号

【小鬼近衛兵団】


------------------------


 ロイヤルリーダーの右にいたやつを【鑑定】したら、こんな感じだった。

 リーダーよりはランクがひとつ下で、能力値やスキルレベルなんかもリーダーより少し低かった。

 左のやつもロイヤルナイトで、能力値なんかも右のナイトとほとんど同じだ。

 三体ともCランクとかではなかったので、その点だけは少し安心したよ。


 ……集落がつぶされて怒っているのになぜ昨日出て来なかったのか、このワームは何なのかなど、こいつらについては色々と疑問が残っている。

 【鑑定】さんならなにか知っているかもしれないから聞いてみよう。


 【ロイヤルナイトたちは滅多なことがない限り動かないが、昨日の襲撃だと動かないほうがおかしい。ということは、襲撃したときは集落内にいなかったと思われる。おそらく、集落のそばにゴブリンを捕食するためにギガントデスワームが出現し、ロイヤルナイトたちはその対処に向かったのだろう。ワームを倒して食料として持って帰ったときには、すでに集落は壊滅していたという可能性が高い。】


 ホントに教えてくれたよ。

 最近、もはや【鑑定】は関係ないことまで教えてくれる。

 これはもう、先生とお呼びしたほうがいいのではなかろうか?

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