第70話

「食べちゃ、ダメ!!」



ギュッと目を閉じた瞬間……。



犬が、あたしの服を軽く噛んで引っ張った。



「え……?」



目を開けると犬はクルリを後ろをむいて、しっぽをむけてきた。



そのしっぽには赤いリボンがくくられている。



「なに……これ……」



目の前でパタパタとしっぽをふる犬。



もしかして、このリボンをとれって言ってる?



あたしは目をパチクリして、そっとリボンに手をふれた。



そして、それを取った時、コトンッと地面に黄色い石が落っこちてきた。



どうやら、リボンの結び目にねじ込まれていたみたいだ。



あたしがそれを手に取ると、犬は満足そうな顔をうかべ、そして行ってしまった。



「これ……3つ目の、石?」



他の石と同様、キラキラと輝いている石。



「本当だ……」



「これで、全部そろった……」



腕の中にいる美影と白堵が言う。



「3つの宝石を集め、魔女に会いに行くと人間になれる……」



「月奈、どうしてそれを知ってるんだ? 俺たち、宝石の話まではしてないぞ?」



菜戯に言われて、あたしはハッと我に変える。



そして、家にあった童話の話しと、作者から聞いた話を聞かせた。



「まじかよ。そいつ、俺たちのことが見えていたのか……」



美影が、驚いたように目を丸くする。



白堵も菜戯も汰緒も、動揺の表情を浮かべていた。



「うん……。あの宝石のくだりは美影白堵さんのオリジナルかと思っていたんだけれど……違ったんだね」



「あぁ。人間になるために必要なものだって、俺は噂で聞いていた」



「そっか……」



あたしは3つの宝石をポケットに大切にしまって、立ち上がった。



「あとは、魔女を探すだけだね」



「あぁ。そうだな」



「行こう。絶対に、見つけようね」



きっと、魔女を探すことが一番難しいことだと思う。



でも、ここまで来たんだ。



ブログの男の子のためにも、やり遂げたい。



そして、『魔女を見つけたよ』と、伝えてあげたい……。

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