第36話

「ねぇ、みんな本当にあたしのことが好きなの?」



眉間にシワを寄せて聞くと、美影が「当たり前だろ」と、答えた。



そんな言葉に、また心臓がドキドキと跳ねる。



「どうして?」



「俺たちのことが見えるから」



あたしの質問に、スラッと答える菜戯。



え……?



それだけ?



「姿が見えるだけで、好きなの?」



「そうだよ? だって、ここで僕たちの姿が見えるのって月奈ちゃんだけだもん。



僕たちにとって特別な存在になるのは、普通でしょ?」



小首をかしげてそう言う白堵に、あたしは全身の力が抜けていくようだった。



なんだ……。



そうだったんだ。



どおりでおかしいと思ったんだ。



こんなイケメン4人が、あたしを好きだなんて。



「ははっ」



と、少し疲れた笑い声をあげると、美影があたしの腕をかけのぼり、肩に乗ってきた。



「俺は違うから」



へっ!?



ささやかれた言葉に、あたしは瞬きを繰り返す。



「俺は、あいつらとは違う。ちゃんと、月奈を見ている。1人の女として、月奈が好きだ」



真剣な声。



冗談、でしょ?



あたしのこと、からかってるんでしょう?



そう思うけれど、視界の端に見える美影は真剣な表情をしていて……ドキドキが、今まで以上に増してしまったのだった。



休憩時間が終わって、美影と白堵をそれぞれ肩に乗せたあたし、レジへ戻った。



店内に出てすぐに半泣き状態の和心の姿が目にうつり、あたしは「どうしたの?」と、首をかしげた。



「『どうしたの?』じゃぁ、ないわよ! バックルーム呼び出し何回押したと思ってるのよ!!」



その言葉に、あたしはキョトンとしてしまう。



「そんなにお客さん来てた?」



「長蛇の列よ!! ちゃんと監視カメラ見ながら休憩入ってよ!!」



怒鳴られて、あたしは申し訳ない気分になって頭をかいた。



4人と話をすることに夢中で、監視カメラなんてすっかり忘れていた。

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