第19話

源氏は天皇の皇子が発祥で、天皇の子供という血縁だけで大臣となれた根なし草だ。古くからの地縁や氏縁のない彼らにとって荘園は貴重な収入源で、当初は小遣い位の程度だった。

しかし荘園制度が確立し、役人の手が及ばないことを知った富豪の輩が積極的に王族貴族など大臣に近づいていった。多くの役人もその富に集まり、この頃になると年貢輸送などでは国衙の租庸調などよりも王族領荘園の年貢輸送が優先されたり、また国衙の使者の側も実際には大臣に上納するものを運上する場合もあった。 

既に、腐敗はある程度まで進んでいた。しかもこのシステムが確立している以上、このまま放置しておけばあっという間に朝廷は立ち行かなくなる。心ある役人は早急に改革をしなければならない使命感に苛まれいた。

彼らはまず富豪の輩の不正を正し、彼らの賄賂や上納を律令にのっとって処罰し、租庸調の制度を正常に戻す責務にかられていた。彼らはこれからを原案として作成し、多くの役人がこれを元に徳政としてまとめ上げた。その中心的な家が良岑家、在原家、紀家、小野家、伴家、文屋家の後の六歌仙の家だった。

これら六家は、文徳天皇と共にこの徳政を練り上げていった。多くの下級役人は賛成した。

既に朝廷は、徳政派と反徳政派に分かれいた。源氏の両大臣や彼らについて得をしたりしている役人は、この徳政に反対していた。桓武天皇の頃は下級役人と公卿の間にも多くの交流や対話があり意思疏通は可能だったが、この頃には見えない壁ができていた。

特に天皇の皇子だった源氏はこれら下級役人との接点がなく、彼らの気持ちは分からなかった。源氏の大臣は、下級役人が天皇に良からぬ事を吹き込むのではと警戒していた。源氏は天皇を守るために創設されなが、今は天皇の意向に則さずとも自家の繁栄を考えるようになっていた。

この徳政が成功すれば、徳政を勧めている連中はその功績で出世するだろう。そうなれば自分の地位が脅かされる。源氏の今の地位は親から与えらたもの

で実力で勝ち取ったものではない。父の嵯峨上皇が亡くなっている源氏の大臣にとって、実力や能力のある徳政推進派は邪魔な存在とうつった。

藤原良房は、その源氏の思惑を最大限に利用した。彼も大臣でありその地位を誰にも奪われたくないし、その地位を子供に受け継がせたい。源氏と藤原家の思惑は一致した。

ようは、徳政などの能力が問われる政策は避けなければならない。天皇が政治をすれば、能力が問われる事態となる。

良房は影で源氏の大臣に徳政を妨害する方法を教え、支援した。

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