21、佐々木絵美の地雷

いつものように、おばさんが絵美を招き入れた形のようだ。

おばさんによる絵美が遊びに来た報告は、いつも通りなし。

醜態を晒し過ぎて、最近は部屋で醜態を晒している行為を目撃されることを減らすことに努力をしている。


不在な叔父の部屋だったり、空き部屋だったり、トイレだったり、自室以外でも醜態を晒すことは可能なのである。

醜態を晒す行為自体は減っていないのがミソである。


「美月と美鈴は何見てるの?」

「コレ」


そういった美月は卒業アルバムを絵美に見えるように見せびらかすように持ち上げる。

表紙、背表紙、裏表紙。

特徴的な3つを彼女が見せたことにより、絵美は気付く。


「や、やめてぇぇぇ!卒アルはやめてぇぇぇ!」


絵美が2人から卒アルを取り上げようと阻止するが、美鈴に阻止される。

ちょっと良い顔で、美鈴は笑う。


「絵美もずいぶん可愛らしいですわ」

「この理沙からツインテールを弄られている写真がわたくしは好きだぞ」

「やめてってばぁぁ!なんで秀頼君は卒アル見せるのぉぉ?」

「取られたんだよ」


『そして誰もいなくなった気がしたが、そんなことなかった』の本を読みながら真相を語る。

1人だけ明らかに島に招待された理由がおかしいよな、と気付いてしまい犯人が確定してしまった。

全員犯罪者なのに、1人だけ明らかに犯罪者じゃないしね。

達裄さんの教えに当て嵌めながら、自分ならこの状況をどうしようかと考えるのが楽しい。

因みにクローズドサークルで、誰か犯人がわからないなか、自分が殺されそうになる状況にあるの最善手は皆殺しである。


「今日の秀頼君めっちゃ冷めてる!?」

「…………」


賢者タイムのような諦めモードに入っているだけである。


「ダァメ!卒アルはダメェ!」

「小学生絵美と現代絵美は服装以外あんまり変わらないな」

「気付いちゃいけないことに気付いたな小娘!」

「え?こ、小娘?」


あーあ……。

美月が絵美の地雷を丁寧に踏み抜いてしまった……。

御愁傷様。


絵美に昔から変わらないは禁句である。


「変わってないからなんなの!?わたしだって身長が伸びるなら伸ばしたいよ!」

「ご、ごめん……」

「身長は伸びてなくても、ブラは付けるようになったんだ」

「そ、そんな卑下するな……。な?わたくしだってブラ付けたの最近だし……」


絵美は、身長も低ければ結構ロリ顔である。

そこが可愛いところでもあるんだけど……。


「ん?」


2人のやり取りから逃げてきた美鈴が、俺の服をちょいちょいと引っ張る。

袖クイというやつである。


「た、助けてください……」

「そろそろ動くか……」


どんなブラを付けているかみたいな話になってきた……。

俺はどんな顔をすれば良いのか考えながら、絵美に宥める言葉を投げ掛ける。


「はいはい。ヒートアップはやめようぜ、絵美」

「秀頼君……。わたしだって身長190くらい欲しいよ!」

「俺より遥かに大きいんだけど!?」


駄目だ……。

身長の高い絵美をイメージ出来ても160センチまでである。

身長190センチの絵美をイメージしようとした瞬間に、エラーが起きて、タケルと山本のキスシーンが浮かび、全力で忘れ去る。

それからいくら頑張ろうと、161センチ以上の身長の絵美はイメージしようとしただけでエラーが出る。


(160センチまでの絵美しかイメージさせません。161センチ以上の絵美を想像しようとした瞬間、エラーが起きてタケルと山本のBLイメージ像を流し込みます。ダメ、絶対。絵美はロリ体型でなければならない)


絵美を虐めることが大好きなサディストが、酷すぎるエラーを頭に差し込むから厄介である。

絵美虐だけは絶対に譲れないという意思を感じる。




「良いじゃん、ちょっとくらい小さくて」

「…………!」


絵美を落ち着かせるために、頭へポンと手を置く。

そのまま、繊細に撫でながら力を加えていく。


「この位置が1番絵美の頭が撫でやすくて良いんだよ。ちょっと小さいくらいの方が絵美は可愛いんだよ」

「秀頼君…………、好きぃぃ!」

「俺は背伸びしない絵美が好きだぞ」

「秀頼きゅぅぅぅぅん!」


(よく言った!わかりみが深い!)


絵美と中の人の歓喜する声がする。

美月が助かったって顔で安心している。

頼むから絵美に小さい弄りはやめてくれ……。

心で思うくらいがちょうど良い。


「秀頼様に感謝ですわ」と美鈴がペコリと頭を下げる。


「秀頼君、ずっとずっと好きです!小学生の時にはもう秀頼君の子供を産む気満々でした!」

「ありがとうな絵美。大好きだよ、絵美」


小学生の時は、娘くらいな認識しかしてなかったことをここに謝罪する。

心の中で土下座をしまくった。






『ひでよりぃー、みんなー。ご飯出来たからいらっしゃーい』

「げ……」


そんなこんなをしていると、おばさんが俺らを呼ぶ声がする。

頼んでもないのに、昼食を作ってしまったらしい。


「よし、行こっ秀頼君」

「う、うん……」

「おばさんに小さくなる秀頼様が楽しみですわ」

「き、緊張するな……」


こうして、おばさんに呼ばれた4人で居間に行くことになる。

身内と彼女3人で食事とか地獄かな……?

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