20、深森美月の発言

「ここが秀頼様のお部屋ですか」

「これがタケルとかと一緒にやってるゲームってやつか」

「あ、あんまりじろじろ見られるの恥ずかしいな……」


沢村ヤマグッズなどは、表向きには見えないようにカモフラージュを施しているので、バレないとは思うが、スターチャイルドグッズは結構ガバイ隠し方をしていたりする。


「おぉ、卒業アルバムがある!凄い凄い!」

「見たい!見たいですわっ!」

「見付けるのはやっ!?」


小学校の時の卒業アルバムを目ざとく見付けた美月に、それに吊られた美鈴が目を輝かせていた。

それを意味することは見たいということである。


「見ても良いか秀頼!?」

「…………」


部屋を物色して沢村ヤマグッズや『ドスケベティチャー』シリーズのゲーム、『悲しみの連鎖を断ち切り』の原作についてまとめたノートを発見されるよりはマシか……。

家が火事になるよりは100倍良い。


「い、良いよ。お手柔らかにね」

「なんか硬いぞ秀頼?」

「そ、そんな……、美月が下ネタなんて!」

「え?」


美月の直球下ネタ発言にどぎまぎしてしまう。

硬いとか、硬いとか!

ど、ドスケベぇぇ!


「流石お姉様、秀頼様をクラクラさせる下ネタでしたわ」

「え?下ネタ?」

「秀頼様、本当に硬いですか!?」

「硬いからぁ!硬いからやめてぇぇ!卒業アルバム読んでてぇぇ!」

「あ、逃げた……」


自室に双子姉妹が来ているという、姉妹丼とか呼ばれるシチュエーションにドキドキしていないと言われたら嘘になる。

気持ちを落ち着かせるために、トイレに逃げ込み、何もせずただ座ってムンムンした気分を振り払う。

1分ぐらいで心と身体を落ち着かせて部屋に戻る。





「見ろ、美鈴!秀頼だ!秀頼だ!」

「可愛い!絵美も居ますわ!」

「絵美はあんまり変わってない気がする」

「キッズ秀頼様も、キッズ絵美も可愛すぎてどっちも大好きですわ!」

「…………」


めっちゃはしゃいでいる2人。

マジで卒アルとか黒歴史以外のなにものでもない。

ある程度前世の記憶があるから、裁縫道具をドラゴンにするとか、じゃらじゃらとしたダッサイシルバーアクセサリーを身に付けたりみたいなことは無かったが、自分が小さい時の写真があるのが無理……。

焼却して、ジャポポニィカ学習帳の再生紙に使ってもらうべきだったと後悔する。


「おお、円だ!」

「円が秀頼様にツンとしてる画像発見!」

「デレデレ円の今では見れない表情だな……」


どうやら津軽円の黒歴史まで見付けたらしい。

あの頃の円は確かに、ツンツンしていて、俺の邪魔をするのに一生懸命だった。


「タケルと理沙は昔の方がより似てるな」

「美鈴とお姉様の方が似てますわ!」

「双子だからな」


とりあえず知り合いの写真で盛り上がっている。

美月も美鈴も、宮村永遠以外の知人が学校には居ないレベルだし、昔のみんなの姿に興味があるのかもしれない。



あ、鹿野がスルーされた……。



俺と小5の時に色々あった鹿野の姿は、姉妹には完全スルーされた。

面識ないだろうし、仕方ない。


写真コーナーが終わり、文集コーナーに差し掛かっていた。

俺は恥ずかしさから目を反らすように、推理小説『そして誰もいなくなった気がしたが、そんなことなかった』を開き、ベッドの上でくつろぐ。


やばっ、クローズドサークルでみんなに逃げ場ないやん。


ミステリーの古典を永遠ちゃんに勧められていたので、容疑者が全員死んだんだけど、そんなことはなかった感じの本を読み進めることにする。

そんな、はしゃぐ姉妹と黙って読書する俺の構図が出来上がった時であった。









「ひっでより君!あっそっぼっ!」

「良い!良いな卒アル!…………あ、絵美」

「みんなの変わる前が素敵!……あ、お邪魔してますですわ!」

「…………んん?」


いつものように事前の知らせもない絵美が、部屋に乱入してきたのであった……。


「…………どういう状況?」


部屋を覗いた絵美は、だいぶ混乱状態であった……。











>>部屋を物色して沢村ヤマグッズや『ドスケベティチャー』シリーズのゲーム、『悲しみの連鎖を断ち切り』の原作についてまとめたノートを発見されるよりはマシか……。

>>家が火事になるよりは100倍良い。



家が火事になるってなんで?


第9章 連休の爆弾魔

19、エニア

こちらを参照。

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