19、明智秀頼の弱点
「今日はこれから暇ですか!秀頼様ぁ!」
「う、うん。ひ、暇と言えば暇だよ……」
ただ、スタチャグッズだけは片付けたいなぁと思う。
美月と美鈴はいかにもこれから遊ぼうオーラが見て取れてしまう。
せめて、家に置いて帰りたい紙袋を手に持ちながらドキドキする。
スタチャグッズ以外にも、マスターから借りた沢村ヤマグッズに、円に返してもらった『ドスケベティチャー』シリーズの7作目のギャルゲーも入っている。
持っていても良いが、中身だけは見られたくないのだ。
「秀頼はなんかの荷物持ちか」
「あ!これはなんでもないやつ」
円と咲夜以外はドン引きしそうなグッズ目白押しな紙袋の興味を反らそうといかに動揺しないようにして、紙袋を動かさないようにする。
「それにしても2人共オシャレなネックレスを付けているね。初めて見たよ」
さりげなく話題をすり替える。
見られたくないシーンを100回以上絵美に目撃されている俺に死角はない。
「わかりますか秀頼様!これ、フランスのなんちゃら女王が付けていたネックレスです!」
「マジか!?凄いな!フランスのなんちゃら女王が付けているネックレスとかご利益ありそうだし、オシャレなわけだね!」
「開運グッズというやつだ」
「へぇ、開運グッズか」
サーヤの店に置いてそう。
勝手なイメージである。
「これから3人でどこか行かないか秀頼?」
「うん、良いよ」
暇は暇なのには変わりないからね。
紙袋の中身さえ見られなければなんでも良い。
「ただ、荷物が邪魔だから荷物だけ家に置いていって良いかな?」
「確かに身軽にデートしたいですわね!」
美鈴の許可を得て、一旦明智家に帰宅することになる。
ちょうど昼間だし、どこか3人で昼食の食べられるところを脳内で検索する。
(ヨネダ珈琲なんかどうだ?)
なんでお前が勝手に検索してんだよ。
便利でもなんでも無いんだよ!
しかも、絶妙に有り寄りなのがムカつく。
そう言わわれちゃうと、ヨネダ珈琲のパンとか食べたくなってくる。
「そうだ、どうせならわたくしは秀頼の家に行ってみたいぞ」
「…………は?」
「確かに!ナイスアイデアですわお姉様!まだ美鈴は秀頼様のお家にお邪魔したことありませんでしたわ!」
「…………え?」
2対1の数の暴力で明智宅に決まってしまった……。
お金持ちな深森姉妹に比べたら、本当に俺の家は一般ピーポーで恥ずかしいんだよなぁ……。
今日の叔父は日勤だから家には居ない。
だが、おばさんは普通に家に居る。
家族を知り合いに見られるって本当に嫌なんだよね……。
「どこですか秀頼様のお家!?」
「こっちで合ってるのか秀頼!?」
荷物を片付けるだけが、いつの間にか自宅デートになるのはちょっと予想の斜め上になってしまった……。
(お持ち帰りデート?)
触れなかった部分に触れてくる中の人。
暇になるとちょいちょい突っ掛かってくる悪霊である。
(常に暇なんだよ)
身体の実態がないニートみたいな奴である。
「どこの家だ秀頼!?」
「どの家ですか秀頼様!?隣の家は絵美の家って聞きました!」
「…………じゅ、10分くらいで着くからさ」
マスターの家から自宅に帰る途中で2人と出会った。
かなりの偶然である。
とりとめのない雑談をこなしながら、あっという間に明智宅にたどり着いてしまう。
どでかいマンションに住む2人に比べて、どこにでもある一軒家がどう映るのか、聞いてみたいところである。
そのまま俺の家が見えてきて、「あそこ……」とだけ声を出す。
「おぉ!ここが秀頼の家か」
「二階建てですわね!楽しみですわ!」
深森姉妹に自宅に引っ張られながら、玄関を開ける。
鍵が閉まってなかったので、おばさんが中にいるのは確定だった。
「ただいまぁー」
「お帰りなさい秀頼。あら……?」
「お邪魔します」
「お久し振りです、おば様!」
「えっと……、美月さんに美鈴さんだったかしら?」
「覚えていてくださり嬉しいです!」
「秀頼の保護者です。いつも迷惑ばかり掛けていると思いますが本当に申し訳ありません」
「べ、別に迷惑なんてかけてへんわ……」
おばさんが美月と美鈴に深々と頭を下げる。
「恥ずかしいからやめてくれ」と追い払う。
それでも申し訳ないオーラがおばさんから消えることはなかった……。
「秀頼様はおば様の前だといつもより幼く見えるな」
「絵美がよくおば様の前の秀頼様は可愛いというのがわかりますわ!学校では見たことないテンションですわね」
「わ、わかったって……」
「いつも堂々としている秀頼が小さくなってる……」
「エモい……」
「もうやめて……」
俺の弱点・おばさん説がタケルや絵美から囁かれているくらいには自覚があるのだから……。
†
美月と美鈴っておばさんと面識あるの?
第10章 月と鈴
69、明智秀頼は隠したい
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