7、炎上の天才シナリオライター
「どうも。一ノ瀬楓でーす。私たち3人は月原大学に通ってる同級生ね。大学のレポートのネタ探しも兼ねて遥々新幹線から3時間かけて昨日から宿泊してるの」
「わたくしは近城悠久。第5ギフトアカデミーの学園長よ」
「え!?せ、先生だったんですか!?」
「周りはみんな生徒さんだけど」
「やだぁ、先生わかぁい!」
楓が悠久に人なつっこい顔で悠久と自己紹介をしていた。
月原大学って確かスタヴァの姉ちゃんと同じ大学……。
いや、それはどうでも良いけど一ノ瀬楓ってやっぱり『灰になる君へ』の3人娘だよ!
確か、『灰になる君へ』は主人公である灰原ノアを操作して閉じ込められるバトルホテルの探索ゲームだ。
それを牧原小鳥と脱出を目指すのが本筋だ。
因みにリーダーを務める一ノ瀬楓は序盤で真っ先に死ぬから本筋には関わらないモブみたいな扱いである。
「ギフトアカデミーってことはみんなギフト持ち!?」
「いやいやまさか……。私含め、何人かはギフト持ってない一般人です」
「でも第5っていうと、ウチらの大学が近いね」
おどおどしているノアと小鳥に変わり、楓が会話を続ける。
それを永遠ちゃんが謙遜するような態度を取っている。
「ははは……。ノーマル平凡3人組にとって、ギフト持ちなんて凄い人に見えてくるよ」
「ほ、本当だね」
ノアと小鳥も恐れ多いのか、ちょっと腰が低い。
「ふっふーん」と、胸を張った態度の咲夜だが、彼女はギフト持ちでもなんでもない。
「私は一ノ瀬楓。怖いモノ全般好きだわ。はじめて心霊スポットに来てワクワクしているわ。ふふっ、この鬼鴉毒虚死無卍亡村は素敵な場所ね。いかにもな人が消えた村、こんな田舎には不釣り合いに高いホテルのミスマッチ感。あぁ、これは素敵ね。もし幽霊なんて存在がいるならば殺されても良いかも、なんて考えてしまうわ」
今日、その幽霊にいの1番に殺されるんだよなぁ……。
ファンが描いてくれた楓のリョナ絵たちは、大変息子がお世話になりました。
本人には言えないが……。
ミステリアスに微笑んだ楓はショートカットの黒い髪を耳元にかきあげた。
さばさばしているクール系なお姉さんだ。
「な、なんか危ない人ですわね……」
「結構ああいう人いますよね……」
美鈴はこそこそと楓の感想を漏らす。
そういう人をたくさん知っているのか、星子は苦笑していた。
同業者にもそういう人がいるんだろうなというのが、星子から伝わってくる。
「あ、私は灰原ノアです。むしろ私はホラーとか苦手なんだけど楓ちゃんと小鳥ちゃんに連れられて来てみました。でも、こういう歴史を感じる場所は素敵ですね」
主人公であり、ヒロインの灰原ノアも楓に続いて自己紹介をする。
白髪ポニーテールの彼女は嬉しそうに微笑む。
桜祭のメインヒロインはポニーテール傾向にあると、ヨルと比べながら趣味が透けて見える。
「ゲームのヒロインみたいだな」
「なんかヒロインオーラ?ヒロインの華があるわね……」
咲夜と円もこそこそとコメントを漏らす。
そりゃあヒロインだもんこの子……。
円からはなんの疑問もこちらに来ないので、『灰になる君へ』は知らないんだろうなぁ……。
絵しか褒めることのないクソホラゲーだからね……。
桜祭が『灰になる君へ』発売後に全EDのバッドエンドが判明して炎上した際は、『文句あるなら自分でゲーム作ればええやん』と火に油をばら蒔きユーザーとレスバしてた記憶が浮かんできた。
『炎上の天才シナリオライター・桜祭』とエ●タの神様の芸人のキャッチフレーズみたいな異名を持つだけはある。
エ●タの神様風のナレーションで脳内再生余裕だわ。
「こんにちは、牧原小鳥です。楓とノアと私の3人で楽しい思い出でも作れればと思ってまーす」
ふんわり系な小鳥も同じく挨拶をしてくる。
彼女もメインキャラクターであり、一部のシーンでのみ操作可能なキャラである。
楓とは対象的に茶髪で長い髪をしている。
『灰になる君へ』は、よくノアと小鳥で抱き合ったり、手を繋ぐシーンもあり百合だと騒ぐファンも多い。
一応、ノアと小鳥は小学生からずっと一緒の親友らしい。
「やっぱり理沙と声似てますね」
「んー。確かにリサパイと似てるかも」
絵美と和は理沙と同じ声をしている小鳥に気付いたらしい。
「そうですか?」
「我はよくわからん……」
永遠ちゃんとゆりかはそんな気はしないらしい。
理沙の中の人は、あんまり特徴や癖がない声をしているから同じ声と気付きにくい人も多い。
演技幅が広い理沙の声優さんである。
「これで、私たちの紹介は終わり。それじゃあ一応そっちも自己紹介お願いしようかなー」
「そうね。頼むわ。じゃあ、そこの2つ結いしている子から」
「わ、わたしからですか?」
楓と小鳥からのリクエストにより、絵美が指名される。
3秒ほど考えながら目を瞑り、紹介方法が決まったのか自己紹介が始まる。
「佐々木絵美です。そして、彼。秀頼君の彼女です!」
「う、うわっ!?絵美!?」
「ラブラブなんです!」
「ズルいぞ絵美」
「またそうやって抜け駆けする」
何人かで絵美を抑え、何人かが俺から絵美を離れさせる。
ホラゲーが始まる前とは思えないほどに騒がしい。
「ご、ごめんなさいねぇ……。あはは」
悠久が3人にフォローを入れる。
「騒がしいの好きなんで大丈夫です」と、苦笑気味な小鳥の声がする。
「ふん。クズ男ってわけね……」
「ちょ、ちょっと楓ちゃん……」
「男なんて嫌いよ」
楓からはゴミを見る目を向けられていて、視線が痛かった……。
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