第15章 初デートはホラーゲーム

1、三島遥香は死ぬ

「肝だめし!肝だめし!」

「肝だめし!肝だめし!」


全員で初デートの打ち合わせ。

その中でざっくりと『肝だめし』とだけ決まっていて、特に深森姉妹がそこに大喜びしていた。


「ちーん……。死んでます……」

「大丈夫か三島!?まだ始まってすらいないんだぞ!?」


俺が三島を目を覚ますように揺らす。

しかし、彼女は気絶しながら椅子の上でゆらゆら揺れているだけであった。


「こないだの恐怖映像を三島に見せてから、そういう話を振ると気絶する癖が付いたようだ」

「他人事みたいに語っているけど、それ美月が悪いぞ」

「えっ!?」


咲夜の指摘に、ぎょっと目を向ける美月。

「一体どんな動画を見せたんだ」とやれやれとため息を吐きながらゆりかが呟く。


「怖い動画だ。ゆりかも見るか?」

「我も見るぞ」

「他に見たい人いる?」

「あ、じゃあ私も観ます!」


美月のスマホの前にゆりかと理沙がのほほんと集まる。

『フラグ立ってんな……』という言葉を飲み込みつつ、三島が目を覚めるように声をかけ続ける。


「おーい、三島ぁ!?」

「あ……、死んだ両親と和馬とネコ助が川の向こうで手を振ってる……」

「いや、生きてるでしょ!?それ、別世界の幻覚だから!?」


というか、怖すぎて原作の幻覚が混ざっているらしい。

見事に原作の三島遥香が『エナジードレイン』で殺した家族全員である。

シャレにならない幻覚だ。


「三島ぁぁぁぁ!ザオリクぅぅぅぅぅ!」

「あへぇ……」

「ダメだ、明智!マヌーサ状態だから治しようがない」

「クソッ……。彼氏なのに、なんて俺は無力なんだ……」


ヨルの冷静な指摘に幻に包まれた三島遥香を直す手段が見付からない。


「へぇ。光宙でぴかちゅうって名前OKなんだって。凄くない絵美!?」

「ぴかちゅうでテンション上げすぎでしょ」


ピカチュウ好きの円はぴかちゅうという名前が認められた事例のニュースを興味深そうにしていた。

こっちには一切興味ないらしい。


「自分の子供が産まれたらどんな名前にしますか?ぴかちゅう?」

「ぴかちゅうは無いかな……。そうだなー、私と旦那の名前を合わせた名前みたいな……なんて。ベタかな?」

「つまり…………、窓頼まどより

「いやいやいや!どんなセンスだ!」


円と絵美の会話は聞かないことにしよう。

当然のように、俺の子供設定らしい。

気恥ずかしくて、混ざれそうにない。

窓頼ぃ……。


よし、三島復活に注力しよう!


「三島!?大丈夫か!?どうすれば復活する!?」

「手……。手を……」

「手?手がどうした?」

「手をぎゅっと握ってください」

「…………う、うん」


そんな簡単に女の子の手を握って良いのか?という葛藤が起きる。

でも、それが三島の望みなら。

俺は三島の小さい手を包むように握る。


「明智さん、優しい……。だからボクは君が好き」

「三島……」

「秀頼さぁぁん!私の手も握ってくださぁい!」

「うわっ!?」


三島の手を握っていると永遠ちゃんに抱き付かれた。

そのままもう片方の手をさし伸ばすと、笑顔になりながら手を取る。


美しい……。

永遠ちゃんの笑顔が眩しい。

尊い……。

三島を守ってあげたくなる。


「復活しました!明智さん!」

「ちーん……。死んでます……」

「うわわっ!?秀頼さん!?」


オーバーヒートを起こし、死んでしまう。

じょ、女性への免疫がない!

モテない人生街道まっしぐらな2回目のギャルゲーマーライフ。

どうしてこうなったと言わざるを得ない。






「これが遥香に見せた動画だ。どうだゆりか?理沙?」

「ちーん……。死んでます……」

「ちーん……。死んでます……」

「あれ?」


同時に2人も死んでいた。




「1人生き返って3人死んだわね」

「賑やかな人たちですね……」


絵美と円は淡々と実況をしていた。


「結局初デートの話し合いはどうするんだ?」と咲夜の一言で肝だめしの予定をあれこれと決めていく会議が始まるのであった。

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