21、遠野達裄は言いたかった
「んー……。秀頼が大事な話あるっぽいからとりあえず葉子とめぐりは部屋出てって」
達裄さんの兄貴命令。
それで素直に言うことを聞くのかという疑問はあるのだが。
「葉子姉さん、これ、秀頼君コイバナする気だ!」
「あらあらー。若い若い」
「ぐぬぬぬぬ……」
ニヤニヤとクスクスが混ざったニヤクスといった感じに笑う。
血が繋がってないらしい義妹のめぐりさんはともかく、ガチ妹の葉子さんの若い人を見る目が達裄さんそっくりだ。
……裏で策を練っていそうなところとか特に。
「じゃあ、後は野郎2人に任せましょうか」
「ごゆっくりー」
温かい笑みを浮かべながら2人は部屋を出ていき、俺と達裄さんの2人が取り残された。
達裄さんは律儀にゲームを消して後片付けをしている。
「手伝います」と名乗り出て、かなりハイスペックなプロコンを隅に置いておく。
かなりガチのやつである。
「…………というか、いつの間に妹と知り合いなってんの?」
「え?何回か遊びに来たじゃないっすか」
「そうだっけ?」
達裄さんの家に出入りしたのは今年からだけど。
「因みに誰と知り合い?」
「葉子さん、音さん、めぐりさん。恋さんと瑠璃さんは会ったことないけど」
「なんで全員の名前を把握してんだよ!?」
「そりゃあ、尊敬する達裄さんの妹自慢。ちゃんと名前は把握して当然っすよ」
「きっしょいなぁお前」
「酷くないっすか!?」
「本人を前にして真顔で尊敬しているってなんだよ怖いなぁ……」
とかなんとか言ってるが、この人はツンデレなので結構喜んでいるんだと思う。
達裄さんの好感度が上がった手応えがあった。
「んで?突然来た要件は?コイバナ?」
「まさにその通りでございます」
「うわー。めぐりの予想ドンピシャじゃん」
達裄さんの妹さんで、1番何考えているのかわかんない人の勘、ちょっと鋭すぎない!?
「流石、真面目な振りした1番ヤバい妹だ。勘が鋭い」
めぐりさんの兄である達裄さんも、8割方俺の印象と解釈が同じらしい。
金髪をかきわけながら、聞く体勢になっている。
話を聞いてくれるらしい。
「実は……、俺……、彼女出来たんす」
「え?あ?…………俺も高2の時からずっといるよ」
「え?高2からずっと付き合ってまだ結婚してないの?」
「周りの親友が結婚を邪魔してくるからな……。主に女友達10人くらい」
「こわっ!?」
「お前の学校の学園長してる悠久もその1人だからな」
「え!?悠久と知り合いなの!?」
「お前が悠久って呼ぶのは違うだろ」
「あっ、そっか。一応学園長だった……」
悠久は原作キャラのイメージが強くて、つい呼び捨てになってしまう。
前世では、永遠ちゃんと概念さんとアリア様以外、みんな呼び捨てで呼んでたからその癖が出ちゃう。
「って!なんで達裄さんのコイバナにすり変わってんすか!?前にバッティングセンターで『ルアルア』って呼びながら煽ってる姿見たから知ってんすよ!」
「げ……。結構最近じゃねぇか……」
ゆりかと修行と称して、バッティングセンターに行った時にちろっと見かけたからね。
「秀頼の彼女ねぇ……。あ、そういや詠美って子と知り合い?」
「ちょ!?なんで達裄さんの口から詠美って出るんすか!?」
「会ったし、会話したから」
「世間って狭いなっ!」
「1分前の俺が秀頼に言いたかったことだよ」
そういえばこの人、ちゃっかり決闘中に遊びに来てたらしい。
タケルが女の子連れてたって言ってたけど詠美だったとは……。
狭すぎる世間を嘆きながら、俺のコイバナを達裄さんに語りはじめるのであった。
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