11、佐々木絵美は証明させたい
叔父さんとおばさんの本当か嘘かもわからない話を聞き流しながら、家を出る。
確かに今日は絵美とかに誘われているわけだが、例年同じだ。
マスターの店でケーキとか奢ってもらって、小物をプレゼントしてもらう。
そんなルーティンみたいなものが出来上がっていた。
仲なんて進展しないなー……、なんて絵美や円とか永遠ちゃんなどの人の顔を思い浮かべる。
悪役の親友になびくヒロインなんて、それこそカチカチ山でタヌキがウサギを返り討ちにしたみたいで需要がない話である。
いつか、タケルと戦う日が来るのかねと浸りながら空を見上げる。
朝から暑い気温が肌をジリジリと焼いていた。
「おっはよ、秀頼君!誕生日おめでとう!」
「おぅ、ありがとう。ラインもサンキューな」
絵美の場合、ラインするのも直接会うのも労力は一切変わらないから実はあんまりラインの回数が少なめ。
ただ、深夜に会うことはほとんど無いので0時0分ちょうどに誕生日ラインを送ってきた。
他にも美鈴や永遠ちゃんとかゆりかとか星子とかの順番で通知が届いたが、みんな同じ時間に誕生日ラインが飛ばされて困惑する。
…………何人かには誕生日を教えたことがないのに平然と連絡が来ることに疑問を持ったのは返事を打っている時だった。
(あれ?美鈴とかゆりかとか三島とか美月とかヨルに誕生日教えたっけ?)と、記憶を思い返しても言ってない情報のラインを俺に送ってくる。
なぜ、絵美や理沙らの情報を共有してんだ?と今年はより混乱してしまった。
「ふぅ……。やっと素っ気ない空気を脱却しましたよ」
「あ?なんか言った?」
「もはやわざとでしょ!」
空気が蘇り、いつもみたいに絵美と会話を出来るようになった。
決闘から1週間かかった……。
「じゃあ、学校が終わったらいつもの喫茶店に集合ね秀頼君」
「う、うん」
「わざわざマスターさんが昨日と今日の定休日を入れ替えてくれたんだ。本当に感謝だね!」
「いや、嬉しいんだけどさ。あの親父、わざわざ俺の誕生日に合わせて店を休みにしたの……?」
「マスターさんも秀頼君のこと好きなんだね」
「きっしょいなぁ」
「秀頼君もマスターさんのこと、好きでしょ?」
「……きっしょいなぁ」
気を遣わせてしまったなぁ……。
最近は色んな人に迷惑かけてばかりだ……。
決闘の時も山本、川本武蔵、白田、熊本、鹿野とか関係ない奴巻き込んじゃったしなぁ……。
うぅぅ……、どうやってみんなに恩を返していこう……。
「ふふっ」
「ど、どうした?」
「まーた変に自分を追い詰めるような顔してるね。秀頼君は自分の人生を全部茨の道と勘違いし過ぎだよ。その茨は幻覚なんじゃないの?」
「絵美……?」
「君が考えているより、皆は君が大好きなんだよ」
「お、おぅ……」
「それを、今日、証明させてあげる」
「…………え?」
俺が考えているより、皆は俺が大好き?
み、みんなって誰?
どこまでがみんな?
え、絵美も含まれているのかな?
「秀頼君って顔に出るよね。朝から顔が赤いよ」
「っ……!?い、いや……。日差しのせいだって……」
「隠さなくていいのに。わたしにもっとそういう姿見せてくれていいのに」
「た、頼むからからうなって……」
「誕生日主だからね。今日くらいは追撃しないよ。ニヤニヤ」
「わかったからやめろっての!」
本当に絵美は大人になるにつれて、からかう回数が増えていってる気がする。
絶対サディストの気があるよねこの子。
(てめぇがマゾなんだよ。マゾ豚。きっしょいなぁ)
「…………」
うるせぇ、黙ってろ。
サディストの悪魔が嘲笑う。
本当に最近はよく喋り、誕生日でも祝って欲しいんじゃないかとすら思う。
(誕生日おめでとう)
(ぶっ殺すぞ、てめぇ。てめぇの彼女寝取るぞ)
(お前はそういう奴だよな)
安心、安定な俺様に頭が痛くなりながら、絵美との通学を楽しんだ。
合流した咲夜からも「絶対に店に来い」と念押しをされながら、電車に揺られるのであった。
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