10、7月7日
7月7日。
『すこぶる晴天になります!』とお天気のお姉さんが朝のニュース番組で明るく発表した通り、空には雲1つない青空が広がっていた。
(くははははは!時限爆弾を作動させてやったぜ!)
朝からうるせぇよ。
妙にハイテンションな中の人格もどきを嗜めておくが、エニアのような楽しそうな笑いは数分間止まらなかった。
うるさくて、彼の声をシャットアウトさせた。
こないだの決闘以降、やたら話し掛けてきたり、やたらおしゃべりになった。
火の近くにいるのに、寒くなったみたいな不気味さがある。
もしかしたら俺が彼を顕現させたことにより、俺の存在感が薄くなりつつあるのかもしれない。
2割くらいの死亡フラグは回避させたんだから、あんまり努力を無駄にしないで欲しいな……。
朝食のパンを齧りながら、『俺、誕生日なんだな』とニュースの日付を見ながら複雑な心境になる。
前世でも七夕が誕生日だったので、尚更変な違和感は拭えない。
「秀頼、誕生日おめでとう。年々大きくなって私は嬉しいわ」
「え?は、はい……」
「何か美味しいもの準備しておくからね」
「あ、ありがとう……」
おばさんから笑顔でそんな予告をされる。
もうバースデーケーキにロウソクを刺してみたいな年齢ではないとはいえ、なんか照れるんだよねこういうの。
「七夕じゃけぇ。お前の誕生日じゃろ」
「!?」
ええぇぇぇ!?
1週間に数回しか会話がないおじさんがのそのそと食事している俺のところにやってきた。
「あら、あなた……」とおばさんも彼の登場に目を見開き、珍しいものを見たっていう声を出す。
「な、なんだよ?こ、このパンはもうラスト1枚だぞ」
「別にパンもらいに来たわけじゃねぇよ!?というか普通に3枚くらい入ってんじゃねぇか!?」
「え?違うの?」
「あー……。だからよ、……。誕生日おめでとう。んじゃ」
「?」
ボソッと呟いて、すぐに部屋を引き返す。
なんじゃあれ?とパンを齧りながらおばさんの顔を見ると、クスクスと笑っていた。
「なんだよ?何、笑ってんすか?」
「秀頼とあの人、なんか似てると思って」
「んな、バカな……」
「絵美ちゃんとかにしている突っ込み方に似ていたから」
「え!?ショック過ぎるんだが……」
この世界で1番苦手な人に似ているというのは、ちょっと複雑な気分だ。
でも、なんかおばさんは嬉しそうだし『まぁいっか……』ってなる。
「今日は絵美ちゃんと会うんでしょ?」
「会うも何も、毎日会ってるし。学校でも会えるし……」
「ふふふふっ。頑張りなさいな」
「え?何が?」
「学校終わったら呼び出されているんでしょ?若くて良いわねぇ」
「き、期待してるのなんか無いっての……」
最近素っ気ないし、みんなしてこそこそしてるし……。
「何?秀頼呼び出されているのか?」
「えぇ、そうなのよ」
「げ?」
どこで話を聞いてたのか、おじさんはまた舞い戻りおばさんに話し掛けてきた。
「ふふっ。女垂らし兄弟の血をお前は濃く受け継いだらしいな。俺にはわかる」
「…………」
いや……。
幼い時に気持ち悪いこと強要させていたからわかっている風なのおかしいって……。
「もう。槍朕なあんたはともかく秀吉さんは智尋さんに一途でしょうに」
「いや、あのムカつく兄貴だって『自分は女に興味ないです』ってスタンス顔して付き合ってない女が周りに数人いたんだよなー」
「あら……、親子……」
「え?何その嫌すぎる兄弟……」
叔父さんと会話すると、何かしら傷付くことになるので本当に苦手だった。
というか、マジで一緒にしないで欲しい。
…………智尋?
俺の母親か?
なんか無性に可愛い狂の女と同じ名前で複雑な気分である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます