4、三島遥香は信じられない

「やべぇって!決闘!決闘が申し込まれたってよ!」


明智秀頼が所属していないクラスにまでその噂は学園内に広がっていた。

それは三島遥香、深森美月の所属するクラスもまったく同じ出来事であった。


「決闘ですって……。ボク、そんなの申し込む人が学校の中に居るのが信じられませんよ」

「まったくだな。普通の人間は決闘なんか申し込むわけがない」


遥香と美月は盛り上がるクラスを白けた目で見ていた。

その話を持ってきた男子は今やクラス中に揉みくちゃにされていた。


「確かにねー……、てかなんで決闘なんてシステムあるのミツキ?」


一緒にその輪にいた詠美が美月に話を振ると、「あぁ」と頷いてみせた。


「なんでも、ギフト持ち同士の学校生活だからな。そこに衝突もあると考えた国の者がギフトアカデミーの管理下の元に決闘のシステムを作ったという歴史があるらしい。てかこないだ先生が説明してただろ!?」

「あー、じゃあ寝てたんだわ」

「親の学費で学校に通っているんだ。ある程度不真面目なのは口に出さないが昼寝は感心しないな」

「う……」


変な説教モードに切り替わった美月に、面倒になってきたと詠美が焦り出す。

とりあえず平謝りして説教モードを終わらせようとした時であった。


「お姉様!」

「美鈴!?ど、どうした美鈴!?」

「美鈴さん?珍しいですね、こっちのクラスに用事ですか?」


美鈴の乱入に美月と遥香が目を丸くする。

美月とよく一緒にいるが、わざわざ姉のクラスにまで足を運ぶのがはじめてなのであった。


「へぇ、この子がミツキの妹さんなんだー。ミツキより発育良くて美人な子じゃん」

「あ、ありがとうございます!……もしかして噂に聞く詠美さんですか?」

「どんな噂かはわかんないけど私は詠美で間違いないよ」

「え、絵美に似てますわね……」

「ふふっ、ありがとう。可愛いでしょあの子。まったく出来た子だよ絵美は」


詠美は自慢の子だと絵美をべた褒めにする。

お互いの仲は良好なのであった。


「って、こんな呑気に話している場合じゃないんですのお姉様!」

「ん?」

「秀頼様が!秀頼様が現在の剣道部部長に決闘の相手として指名されたみたいですの!」

「なんだと!?秀頼が!?」

「なんで明智さんが!?」

「だからちょっと絵美や円が集まっている部室で話し合いましょう!」

「わ、わかった!悪い詠美、ちょっと行ってくる」

「う、うん……」


美鈴の後に続き、美月と遥香が立ち上がる。

その場に詠美だけが残された。


「…………ひぃ君……。君なら誰にも負けないよね。ずっと、ずっと応援してるからね」


幼馴染に向かって、詠美の祈るように捧げた声は決闘の報せに沸いている野郎共の騒ぐ声でかき消されたのであった。






「明智秀頼だと?」


黙って決闘の報せの大騒ぎを黙って聞いていたのはターザン・スルスル・メータンであった。

そして、席が近かったこともあり美鈴の話まで耳に入った彼は明智秀頼という名前に聞き覚えがあった。


「いつかのハーフデッドゲームを24秒で終わらせたあの男か。…………決闘を申し込んだ奴も気の毒にな」


ターザンが自分では勝てないと本能的に悟っていた男を高く評価していた。

会話こそしたことがないものの、いつか会話してみたいと考えていたのであった。

そんな機会は果たして、訪れることはあるのであろうか……。












「明智さんが決闘って本当なんですか!?」

「はい。全部真実です」


西軍メンバー全員プラス千姫と概念という普段ほとんど揃わない部活メンバー、後本当に関係ない麻衣という女子らが勢揃いをしていた。


(文芸部ってこんなに人いたんだっけ?)


最初の部活メンバー3人時代を知っている遥香は違和感が強かった。


「でもさ、絵美たちに出来ることなんか何も無いんじゃない?」

「千姫……」


西軍メンバー全員の視線を集める千姫。

自分が嫌いなあの男のどこに惹かれているのか、全然わからない彼女は遠慮なく口を開く。


「結局はヨリ君がやらなきゃいけないことでしょ?周りがどんだけ騒いだって、君たちはヨリ君じゃない。意味無いんだよ、そんな話し合いなんか」


部外者で客観的な意見を出す千姫の言い分は正しい。

みんなどこかでそれがわかっていた。


「好きな人のためには意味が無いんだとしても支えたい。そういうものなんだよ千姫」

「……」


絵美がわかりきっているとの確信した表情で言い切った。


「君はまだ恋をしたことがないんだね。千姫も経験すればわかるよ」

「エミリー……」

「好きな人のためなら、意味なんかないことでもなんでも出来ちゃうんだよ」

「…………」


その絵美の顔は、たくさん可愛いモノを見てきた千姫の中でもトップクラスに可愛い表情をしていたのであった。











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