17、十文字理沙は語りたい

「師匠に話がある!」

「どうした?」


その日、突然真面目な顔をしたゆりかから教室で声を掛けられる。

それで隣の席である白田の椅子を雑に引き、座った。

ゆりかのイメージはギャグみたいなイメージしかないので、彼女の真面目な顔は凛々しく美しく見えてしまう錯覚に陥る。


「ヨルと千姫がスターチャイルドでよく盛り上がっているのだ」

「そうか。理沙とかタケルとかもよく盛り上がっているみたいだね」

「それは師匠が引きずりこんだのでは?」

「間違ってはないな……」


確かに元凶は俺だ。

因みに理沙には沢村ヤマも勧めたが、あれはダメだったことを思い出す。


「わ、我もそのスターチャイルドに興味がちょっとだけ出てきてな……。師匠の施しを受けてみたい」

「単に2人が盛り上がっているから寂しくなったんでないの?素直に言えよぉー!」

「…………」

「マジそうだな」


冗談でからかってみたら、ゆりかが黙って俺から目を反らす。

くっ殺みたいなくノ一と重なり、ちょっと興奮する。

ミニ尊厳破壊というやつだろうか。


「何々!スターチャイルド!?」

「理沙やめっ……!?おもっ……」

「ゆりかがダメージ受けてるぞ」


そこへ、話が聞こえてしまったらしい理沙が突然沸いてきて、ゆりかの背中に現れた。

彼女がゆりかの肩に手をついていて、体重がゆりかに乗っかったようだ。


「重くない!」

「胸の圧が凄い……」


そして、何故かラッキースケベにゆりかが巻き込まれたのであった。

なんでやねん。


「ゆりかさん!スタチャのことなら私に任せてください!」

「良かったな、理沙にレクチャーしてもらえるぞ」

「じゃあ、学校帰りにこの3人でスタヴァでスタチャトークしましょう!」

「それは良いな!ありがたいぞ!」

「…………え?」


理沙がレクチャーするのかと思えば、半ば無理矢理に俺までもが放課後の予定は潰される。

今日は真っ先に帰って、セールにて300円で買った評判の悪いバグまみれのギャルゲーをクリアするつもりだったのを、スタヴァで用事に変更されてしまった。


「師匠!理沙!楽しみにしているぞ!」

「はい!任せてください!」


ゆりかと理沙の見慣れない組み合わせに感心しつつ、どんな会話をするのか気になるのもあり2人に着いて行くことを決めた。


ゆりかから誘われた昼休みから数時間が経ち、直で3人並んで通いなれたスタヴァまで行くことになる。

その間は返されたギフト総合の小テストの話題になったが、ゆりかの点数が理沙より高くて地味に理沙がショックを受けてしまったようだ。


元ギフト狩りだからか、ギフト関連のテストや成績は地味に高いゆりか。

真逆に、普通教科は中学まで不登校だった彼女は毎回赤点ギリギリというピーキーな学力を持っているのである。


そんな成績話で盛り上がりながら、スタヴァの中に入り込む。

相変わらずの人気店で行列に並ばされる。

5分くらい3人で雑談しているとようやく俺の番がやってきた。


「やぁ、明智君じゃないか」

「こんにちは!」

「今日来店してきたのか。昨日だったら彼女居たんだけどね」

「そうなんですね」


どうやら今日はスタヴァの姉ちゃんはシフトに入っていないらしく、レジに姿はない。

その変わりにスタヴァの姉ちゃんじゃない姉ちゃんがレジ対応をしている。

スタヴァの姉ちゃんじゃない姉ちゃんは、さばさばしていて一歩引いたような距離感で会話をしてくるムッツリな人だ。

名字は源という。

スタヴァの姉ちゃんの1個上の大学2年生である。

しかも彼女の大学の先輩であり、スタヴァをスタヴァの姉ちゃんに紹介したのがスタヴァの姉ちゃんじゃない姉ちゃんである。

相変わらずスタヴァの店員さんは女性の顔面偏差値が高い。

リア充のバイト先って感じだ。


「そっか……。今日はスタヴァの姉ちゃん居ないのか……」

「今日はバイト休みだから中学生の妹さんと行きつけの喫茶店に行くとか言ってたね」

「へぇ。スタヴァの姉ちゃんって妹居たんだ。俺も妹居るんだ!」

「私、振ってないよ」


にこやかな顔してかわされた。

なんだ、星子の自慢話を聞きたい振りかと思ったのに。


「でも気になるな。俺、コーヒーとか大好きだからさ」

「私もあの子とその喫茶店行ったけどコーヒーが絶品だったね」

「マジで!?」

「しかも店長している人が接しやすくてね。つい長居をしたくなるんだ。あんまり客は居ないんだけど雰囲気良くて穴場って感じ」

「俺そういうの好きだなぁ」


スタヴァの姉ちゃんの行きつけ喫茶店の特徴が俺好みだ。

穴場って感じがサンクチュアリみたいだし。


「自宅兼店って感じだからちょっと道のりがわかりにくいんだよね」

「……そうなのか」

「しょんぼりしないで。なら時間ある時、私とあの子の3人で一緒にその店行く?」

「行く!」


行くのを諦めていただけに源さんの優しい言葉に対し、即座に頷いてしまった。

それくらい、コーヒーにはまっている。


「よし、決定。じゃあ、日付あいそうなところのリスト作ったら私が明智君のラインに送るよ」

「ありがとうございます!じゃあついでなんでその時に借りた小説を返しますね」

「感想は?」

「村夢裸しました」

「君、わかるねー!最近の男は草食気取りでダメだね」


この人は趣味で官能小説を集めているのだ。

それを前に3冊くらい借りたのであった。

真面目な顔でアダルトを語る変人である。

見た目から大人のお姉さん感が強すぎる。

それからカフェモカを注文して、さっと受け取ったのであった。

そのまま理沙たちが確保した席に向かって歩きだした。


「遅いよ明智君!」

「もう理沙と我の飲み物が半分しか無くなってしまったぞ!」

「ご、ごめん……」


ちょっと源さんと雑談していたら遅くなってしまい頭を下げる。

2人はちょっと不機嫌になっていた。


「明智君の歩く度に知り合いと会うのやめてくれませんか?」

「ぐ、偶然だから対処のしようがないんだよ……」


因みにスタヴァでの知り合いはスタヴァの姉ちゃんと源さんだけだ。

他の店員さんは軽く挨拶する程度で連絡先知らないし……。


「早く!スタチャ談義!」


ゆりかに急かされて渋々と彼女の隣に座った。

ようやく始められるとばかりに理沙はため息を吐くのであった。












秀頼とスタヴァの姉ちゃんとスタヴァの姉ちゃんじゃない姉ちゃんのデート回見たいですか?

見たい意見が多い時、掲載します。


3人のデートが見れるのはクズゲスだけ!

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