12、明智秀頼は回避したい
太鼓のゲームを終えて、3人でまたぐるっとゲーセン内を探索する。
美鈴が太鼓のゲームの才能があったので、美月が得意そうなゲームがないかと見回っていくとクイズゲームを発見する。
長年愛されていて、スマホアプリになるくらいの人気ゲームだ。
なんかクイズの学校の生徒になって問題を解いていくのがメインであり、オンライン対応、可愛い女の子もたくさん登場するゲーセン鉄板の筐体である。
「これなんか美月は得意そうじゃないか?」
「クイズか、確かに面白そうだな。レースや格闘するくらいのイメージしかなかったがクイズなんてのも楽しめるのか」
「ゲームタイトルはなんか美鈴たちが通っているギフトアカデミーに似ていますね!」
美月と美鈴が隣り合わせの椅子に座り、ゲームを開始した。
どうやら1台を2人で協力して解いていくことにするらしい。
そして俺の見立て通り、計算問題などは美月の得意分野らしくポンポン解いていく。
永遠ちゃんと昔馴染みな彼女は勉強については頭がまわるようだ。
しかし、アニメ系になるとさっぱりらしく俺が横からアドバイスしたりして3人の協力プレイになっていた。
そんな感じで数本のゲームを楽しんでいき、美月も「新鮮で楽しいな!」とはしゃぐように笑っていた。
美鈴も「お姉様のやりたいことが叶って良かったですね!」と姉に対し微笑んだ。
最近はダメだね。
原作でどんな張り詰めた姉妹関係だったのかすら忘れてしまうし、美鈴には笑った立ち絵すらないキャラクターだった。
それを思い出すと胸から込み上げてくるものがある。
仲良し姉妹、ずっとこのまま良好な関係が続いて欲しいものである。
「あっ!これ!美鈴はこれがしたいです!」
「ぷ、プリクラ!?」
美鈴が指さしたものを見て驚愕する。
リア充しか立ち入ることすら許されないプリクラ機だ。
俺の人生、タケルと1回ネタで撮影した時以来踏み込まなかった場所に来てしまったと油断して、後悔した。
ここは日夜カップルや、アゲアゲなギャルの姉ちゃん集団しか立ち寄らないゲーセンのバグみたいなところだ。
そんなリア充巣窟の場所を美鈴に発見されてしまった。
陰の者の俺には輝きが強くて立ち入れそうにない……。
助けてくれタケル……。
このプリクラ領域展開にはお前が居ないと近寄れそうにねぇ!
「う、うん。プリクラ良いんじゃない。2人で撮影してきなよ。俺ここで荷物係してるからさ」
アクションマジック『回避』を発動させる。
カードゲーム主人公の切り札として支えてきた誇り高き最強カードを使った。
これで絶対必中の領域展開を回避するのだ。
「何を言っているお前は?」
「秀頼様!美鈴は秀頼様と撮影する気満々ですわ!」
「!?」
美鈴が左腕を取ってプリクラゾーンの奥へ連れ出す。
「見て見て!これ渾身の出来じゃなーい」
「マジウチら最高じゃーん」
すれ違ったリア充で男漁りしてそうな陽キャオーラがんぎまりしてそうなギャル2人組が目に入る。
うわっ、やべぇ!
俺がこの領域にいること自体が場違い過ぎる!
「わたくしはこの筐体が良いぞ」
「見てください秀頼様!『キュートにデコレーション可能!』ですって!行きましょ、行きましょ!」
「ま、マジかよぉぉぉ!」
美月が自信満々に選んだプリクラ機の垂れ幕の向こう側に入る。
なんだろう、ゲーム屋やレンタルビデオ屋、ドォンキの垂れ幕に入ってしまったかのような感覚に似ている。
そして、男女の神聖な場に踏み込んだようなイケナイ気持ちも同時に沸き上がる。
スゲー、タッチペンとかあるじゃん。
「操作方法とかわかりませんが感覚でいきますね!」
「任せるぞ」
美鈴がコインを投入し、フレームなどを選んでいく。
何回かピッピッと操作していくと、カウントダウンが始まる。
「あっ!あっ!急ぎましょうお姉様!」
「そ、そうだな」
慌てた美月と美鈴がどんな体勢にするか悩んでいるみたいだった。
俺は無難に右手でピースでもしようかと手を伸ばした時だった。
「え?」
美月に右腕ごと引っ張られる。
なんだ?と思った時には左腕は美鈴に絡まれる。
そして、カシャと数回音が鳴る。
え?
予想外の出来事にかなり慌てた顔になっていたと思う。
全然格好付いた姿になれなかった……。
ちょっと不完全燃焼だ。
「見て見てお姉様!落書きとか出来ますよ!」
「本当だ。あははっ、秀頼の顔の慌てっぷりの顔が面白いぞ!不意打ち成功だ!」
「偶然とはいえ2人共、秀頼様の腕に抱き付くなんて姉妹ですね!」
「姉妹で片付けるな、双子だ。あ、顔に落書きはダメだぞ。ハートとか星とか書くぞ」
「ちょっとお姉様ばかり書き過ぎですよ!」
黄色い声を出しながらプリクラのデコレーションの落書きをする2人。
俺は前には駆け寄らず、美月に顔が面白いとか言われてちょっと凹んでいた。
そして、プリントシールが落ちてきた。
それを美鈴が手に取った。
「美鈴……。ついに秀頼様と撮影出来ました……」
「こらこら、わたくしにも早く見せてくれ」
「スマホに画像保存出来るとかするしかないでしょ!」
俺を放っておいて姉妹で盛り上がっていた。
興奮した様子がずっと飽きないみたいで、中々写真が俺に渡されるのに時間が掛かった。
5分くらい放置されていたが、気付いた美鈴が俺にようやく写真を渡してきた。
「…………」
「秀頼様、顔が赤いですよ。赤いですよ!」
「照れてるのだ、弄るな美鈴」
「イエーイ、大成功ですよお姉様!」
ハイタッチして賑やかに笑う2人。
俺の手にはハートや星などの装飾がたくさんあるデコレーションがされてある。
そして手書きで桃色の字でアルファベットが4文字書かれている。
LOVE
「お、男をあんまり弄るなよ……。俺だって怒るからな……」
「照れてる秀頼様、可愛いぃ!」
「照れてる秀頼、可愛いぞ」
「…………」
こいつら……。
M顔をしていて、どっちもSだなというのを悟った。
†
因みにタケルとプリクラを撮ったのは中学時代の修学旅行である。
タケルがテンション上がって誘った。
美鈴は絵美と同レベルで性欲がかなり強い(確信)。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます