IF、ギフトの存在しない世界:冷やかし

朝から詠美をおんぶしながらダッシュをしたからだろうか?

妙に疲れが溜まっている。


「…………」


なんだろう?

自分の人生そのものが変わってしまったかのような……。

変な感覚が抜けない。


「明智君?だ、大丈夫?」

「あ、あぁ。大丈夫だよ……」


お隣さんの詠美の従妹さんに心配される始末だ。

無理に笑って誤魔化す。

彼女は「そう?」と少し心配してくれているらしい。

佐々木絵美だっけ……?

なんか、最近はじめて会ったのに、そんな気はまったくしない女だ。

そんなことを考えていると朝のHRの時間になる。

つまんない、平穏な1日が今日もはじまる。

そこからは特に何もなく、ただただ時間が過ぎるだけだった。

変わったことは1つだけ。


「よっ!秀頼って頭良い感じ?」

「ふ、……普通」

「あれ?でもテスト85点じゃん。見た目に反して頭良いな……」

「ほっとけ!」


十文字タケルとかいう男がちょいちょい絡んできては軽く相手をして会話をするというのが数回起きた。

目がキラッキラしていて、純粋な奴なんだろうなと顔や出で立ちでわかる。

俺みたいな陰の塊とは生き方や考え方が違うんだと思う。


「また明日なー、秀頼ー」

「また明日……」


タケルにほぼずっと付きまとわれていた1日であった。

廊下へ出ていく彼を見て物好きな奴もいたもんだなと感想を抱く。

俺も帰ろうと思い立ち上がった。


「あ……、また明日ね明智君」

「あ、あぁ。また明日な」


お隣さんからも帰りの挨拶をされて返しておく。

彼女を横切った時だった。



『…………秀頼君』



…………?

なぜか佐々木絵美の声で俺の名前を呼ばれた気がした。

振り返ると彼女の近くに宮村と深森と津軽とかいう女グループが集まっていた。

……俺の名前なんか呼ぶわけないか。


ガラッと教室の出入口の戸をスライドさせて廊下を踏み出した。

そのまま今日の放課後はどうしようか考える。

歩いていると1つの教室が視界に写る。


「………………」


まぁ、いっか。

毎日会うのなんか恥ずかしいし。

詠美や関に冷やかしされるのも嫌だしね……。


「目標対象、華麗にスルー!恥ずかしがっていると思われます!」

「目標対象、教室前には来たので気にはなっていると思われます!」

「…………おい」


俺が通りすぎた出入口からひょこりと顔を出し、関と詠美がガッツリ俺の姿を捉えてしまっていた……。


「……あ、明智さん」

「っ!?」


その横から件の付き合ったばかりの彼女が姿を現した。

水色の短髪を揺らし、顔を赤く染めた三島遥香という名の少女は申し訳なさそうな声を出していた。

詠美からは「ガンバガンバ」と背中を叩かれ、関からは「明智のことで面白いことあったら報告よろー」と声を掛けられている。


「あぅ……。こ、こんな時どう反応すれば……」

「その2人は無視で構わねーよ」

「おう、オラオラ系彼氏気取ってんじゃねーぞ」

「気取ってねーよ」


詠美の軽口をあしらい、ずんずん足を進ませる。

それを「待ってぇ!」と三島が追いかけてくる。

「あらあら」とニヤニヤ笑う2人に見送られながらこれ見よがしに1番近くの角で曲がり見えない位置に移動してやった。


「ご、ごめんなさい……。明智さんがこういうの嫌なのはわかっているんだけど……」

「謝らなくていいよ。悪いのはあの2人で三島は責めてないし、責めないよ」


罪悪感があるのかおどおどする三島。

困った……。

一応彼氏ではあるのだが、実はそんなに親しい仲ではない。

突然告白され、なんとなくOKを出したくらいの関係なのだ。


出会い自体、俺はあんまり覚えてないのだがクラスの女子らによってたかって、三島がいじめみたいな目にあっていた時に通りかかった俺が『邪魔なんだけど』的なことを言って追い払ったらしい。

目付きの悪いチンピラみたいな見た目をしている俺の圧にびびった女子らは逃げ出したのだが、三島は助けられた事実が残りそれがきっかけで好きになったのことだった。


『こいつは口も態度も悪いけど、妹想いの優しい奴』とかいうきめぇ評価が詠美の中の俺らしい。

三島的にはこの評価はありらしい。


「ど、どこか出掛けたりとかしたいな……、なんて……」

「……んじゃ、行く?」

「え……?」


手をぐいっと掴むと、三島が赤い顔をして照れ出した。

そのまま俺は彼女を連れて学校を飛び出した。












今までの原作描写から、原作秀頼と1番相性があいそうなのが遥香だなぁと思っていたためこの展開に。

永遠ちゃんと迷いました。

ギフトない世界の秀頼は詠美の『こいつは口も態度も悪いけど、妹想いの優しい奴』がすべて。



因みに原作の畜生な秀頼の友人関係はタケル、絵美、円、理沙のみ。

あとのほとんどはセ●●か、ギフトを使って不幸に貶められる子のどれか。

男は見下しているし、嫌いなのでギフトの被害者にされるのがほとんどです(山本らの扱いを参照)。





次回、デート!

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