IF、ギフトの存在しない世界
予告では続きを書く予定でしたが、急遽変更させていただきます。
遅くなりましたが600万PV達成した記念として、今回はIFの書き下ろしを投下させていただきます。
久し振りに記念話です。
本当は新作を書きたい欲も強いのですが、何本も連載書く時間もないのでクズゲスの読み切りを執筆させていただきます。
今回のIF内容は、『ギフトの存在しなかった世界』という根本から本作を否定する物語になっています。
光秀は転生していません。
原作世界の秀頼がギフトによって人生が狂わなかったら……、というモノです。
両親が死亡してなければ、叔父に引き取られもしない、星子と生き別れにもなっていないそんな内容。
ただ、絵美やタケルとは幼馴染ではない……と、もはやただの別物の世界観になっています。
叔父夫婦に引き取られていないので住む家も変わってます。
†
「おう!おはよう、秀頼!」
「…………おう」
半分寝ている脳を動かしながら朝食に手を付ける。
今朝のメニューは……、なんでもいいや。
箸を手に取り、ご飯が入ったお椀を持ち上げる。
「挨拶してんだから挨拶しろやコラァァァ!」
「…………うぜ」
「可愛くねぇぇ!可愛くねぇぇ!」
朝からうるさい母親、明智智尋の声にうんざりしながら箸を動かし、ご飯を口に付ける。
「この口の悪さは誰に似たんだか……」
多分目の前の女だろうなぁ……、とか思いながら味噌汁をかき混ぜる。
「お父さんからもなんか秀頼に言ってよ!」
「……機嫌悪いお母さんそっくりだな」
「おい、なんだと!?あたしは普段から可愛い言葉遣いだろうがっ!」
「…………」
「無言で首を傾けるな!その首、へし折ってやるぞ!」
「可愛いさのカケラもないんだが」
怖いもの知らずな親父である明智秀吉が呆然としながら淡々と母さんに突っ込んでいる。
「お兄ちゃんは反抗期ってやつですよ」
中学生の妹である明智星子が苦笑いをしながら母さんに助言をしている。
家族全員揃って朝飯ってのがだせぇと思う。
そういうのを母さんに指摘すると「家族なのに可愛くねぇぇ!」とか「家族なんだから仲良くするんだ!」とかやたら家族、家族、家族と連呼される。
「星子は可愛いねぇ!可愛いを通り越してきゃわいい!」
「40手前のババアが何言ってんだか……」
「うるせぇよ、思春期シスコン!」
「あ?」
「反抗期ひぃ君もきゃわいい!」
「きも……」
幼馴染である詠美の真似して『ひぃ君』と呼んできて気持ち悪い母親だとつくづく思う。
父さんはまるで視界に入っていないとでも言うように黙々と食事を続けている。
もう妻と息子の口喧嘩は慣れているんだろう。
あまり口を挟まずに傍観に徹する人だ。
星子はその父親に似ているのか、あまり積極的にならず口を挟まないことが多い。
そんな非積極的な彼女がアイドルを目指すと夢を語り、今かなりの位置までオーディションに受かりつつあるらしい。
もう少しでその夢を掴む位置まで来ているのだから凄い。
兄としての色眼鏡はあるだろうが、努力家で健気な良い子だと思っている。
「あらあら?そんな口も見た目も悪いと彼女に振られちゃうよー?振られちゃうよぉぉぉ?振られちゃうよぉぉぉぉぉぉ?」
「っ……!?」
セルフ山びこをしながら煽ってくる母親にカチンと来る。
『あのお喋り詠美め……』と、次にあの生意気な顔を見付けたら首をへし折ってやりたい衝動に駆られる。
「お兄ちゃんは口は悪いですが、悪い人ではないのは私はわかってます!ファイトです!おー!」
「あ、可愛い!」
「きゃわいい!」
「…………可愛い」
「て、照れますよ……」
兄と両親に褒められて星子は恥ずかしそうに頬を染めらせた。
アイドルになったら天下取れるわと確信している。
─────
俺の家の隣にはガキの頃から付き合いのある幼馴染がいる。
お互いの家に出入りしては一緒にスマブラをしたり……。
お互いにマンガの貸し借りをしたり……。
たまには一緒に勉強をしたり……。
家族が不在な時は料理を作ってくれたり……。
長い付き合いの腐れ縁の幼馴染である。
そいつが今日も俺の家の前に立っていた。
「よぉ、学校行こうぜ明智!」
「あぁ……」
その付き合いが長すぎる関翔がいつものポジションで待ち構えていた。
『戦国時代に出てきそうな明智秀頼と、三国志に出てきそうな関翔』とはもう1人の料理の腕が微妙な佐木詠美談である。
「関先輩、おはようございます!じゃあ、お兄ちゃん!行ってらっしゃい!」と見送る星子に手を振り別れて駅に向かって歩き出す。
もう夜まで星子とは会えないのが残念だ。
クラスメートの深森美鈴には詠美と関のクラスに双子の姉がいるという。
俺も星子と双子だったらもっと楽しそうだったなと考える時がある。
「明智に彼女とか……。明智に彼女とか……」
「彼女弄りやめてくんねーかな……」
「オレはずっと上松にアタックしまくってんのに……」
「アタックしまくってんのが原因じゃねーの?」
「は?アタックしないと想いは伝わらないんだが?」
「伝わりすぎて嫌われてんじゃねぇの」
「なんでそんな的確にオレを傷付けるの……」
関が真顔だった。
中学時代からずっとそれっぽいのは伝えているらしいが、残念ながらなびかないらしい。
関のいう上松ゆりかは俺のクラスメートではあるが、恋愛とかまったく興味なさそうな脳筋な女のイメージが強い。
仲良しなクラスメートもいないので、喫茶店『サンクチュアリ』の店長の娘とボッチ同盟を築いているくらいだ。
そんな関へ、上松は諦めろと遠回りなアドバイスをしていると俺の背中へ大きな衝撃が走る。
「がっ……!?」
「いでっ!」
隣の関も一緒に仰け反った。
こんなことするお転婆は知り合いに1人しかいないよなぁとすぐに思い当たる。
「みんなのアイドル!詠美ちゃんでぇーす!」
「てへっ」とちろりと舌を出してあざとい声と仕草を見せる詠美の登場だった。
†
次回、なんだこの世界……?
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