8、遠野達裄伝説
私は急いでスマホを出して、操作をはじめる。
達裄さん宛へぱぱっと用件を文章にしてまとめてみた。
達裄さんへ!
私、女になっちゃいました!Σ( ̄□ ̄;)
直す方法あるならプリーズ☆(゜o(○=(゜ο゜)o
P.S.
タケルが死んじゃいました( TДT)
助けて……( ノД`)
我ながら簡潔で完璧な文章が出来たと思いながら送信ボタンを送る。
あの人のことなら5分以内に返事をくれるだろう。
「頼子様?誰かに連絡ですか?」
「はい。達裄さんにヘルプを出してました」
「達裄さん?どなたですか?」
「あぁ……」
星子を紹介してくれた時に三島、美月、美鈴はいなかったから面識がないのか。
全員が知っている体で話すことも難しくなってきているな……。
「1年間の365日の内、7日間くらい忙しそうにしている人ですよ」
「ただの暇人ですわ!」
暇人に見えるのだから仕方ない。
実際は有能過ぎて全て要領よく終わらせるから暇に見えるだけの暇人である。
『生きること全てが時間潰し』とか言いながらルービックキューブを完成させては崩すを繰り返したりする掴みどころのない人だ。
「達裄さんってそもそも働いてるの?」
「マネージャーしてたり、スカウトしてたり、コンサルしてたり、バトルしてたり、研究してたり、修行してたり……。フリーランスなんだって」
「へぇ。愉快そうな人ですね」
「色々な人から凄い評価をされている人だよ!」
1ヶ月でサラリーマンの年収以上は稼いでいるらしいが、お金をほとんど姉に持っていかれて一般サラリーマンよりちょっと良いくらいのお金をもらっている(本人談)。
ぶっちゃけ秀頼君の修行をしてくれるような暇人ではない(マスター談)。
武勇伝が真実なのか創作かわからない(男時代の秀頼談)。
オーラだけで凄いのがわかる人(タケル談)。
頭良すぎてやばいです(永遠ちゃん談)。
街でカツアゲしていた893が、たまたま通りかかった達裄さんに気付いて泣いて土下座しまくっていた(星子談)。
彼女とよく近所をうろうろしているが、シスコンだけは受け入れられていない様子(ヨル談)。
睡眠時間が短そう(絵美談)。
客としてダイエットコーラフロートを食べていた彼に『アイス買って』って言ったら買ってくれた(咲夜談)。
下野動物園の名物パンダの『パンパン』の名付け親らしい(円談)。
兄さんがこないだチョコレートを買ってもらったみたいでありがとうございます(理沙談)。
タバコを吸いそうな顔をして、タバコを買ったことすらないくらいに苦手な人(スターチャイルド談)。
週に1回くらい店に来ます(スタヴァの姉ちゃん談)。
と、達裄伝説には終わりが見えない。
数年の付き合いがあるが、出会う度に新しい発見が毎回見付かるなんか凄い人としか表しようがない。
「あ、返事きた!」
「平日の夕方に速攻返信……。本当に暇人ですわね……」
「7日は盛ってるかも。10日くらいは忙しいと思う」
「それはただのズレですわ」
美鈴に突っ込まれながら達裄さんからのラインを開くと短い文章が送られてきた。
草
「全然信じられてないや……」
「頼子の文章から本気度が伝わらないもん……」
「え!?」
絵美からマジレスをされていると、また新しい通知が来る。
いけっ、タケルにメ●ゾーマ
(シ^ O^)シ彡☆
「もはやOVERKILLだな」
「そこだけ無駄に発音良いのなんかイラっとしますね……」
残念ながら今日の達裄さんはシリアス状態ではないらしく、役立たずであった……。
唯一どうにか出来そうな人がやる気がなくて、打つ手がなくなった。
「そういえば頼子……、秀頼さんにギフト掛けた人に直接ギフトを解いてもらえば良いのでは?」
「確かに。先生もそう言ってたしな」
永遠ちゃんと咲夜から至極まっとうな意見を出される。
確かにここで雑談しているだけでは何も解決を見出だせない。
「面識がない人なのは間違いないのですか?」
「面識はない。はじめて見た顔の女だったな……」
原作にも泣き黒子が存在するキャラクターは絵美だけだった筈だ。
つまり、原作キャラクターでも知り合いでもない。
それだけは間違いない。
「タケルさん……じゃなかった。タケル、お前の意見を聞きたい」
「チーン。……死んでます」
「いつまで死んでんだよ」
「……炭酸が辛い」
「お前が買ったんだって」
炭酸が口に残って死にかけているらしい。
「じゃあその特徴は覚えてますか?特徴から私の記憶に引っ掛けるかもしれません」
「…………茶髪でしたね」
「引っ掛かり過ぎてわからないですよ」
「ふふーん。ウチはまったく引っ掛からない!」
「聞いてねーよ」
横入りしてくる咲夜をあしらいつつ、永遠ちゃんにもう少し他の特徴を口頭で伝えていく。
「あと、目元に黒子がありました」
「……絵美?」
「違いますよ!?」
人の顔が広そうな永遠ちゃんでもわからないらしい。
確かに並べれば絵美に近いかもしれないが、ツインテールではないのだ。
「どうだタケル?わかるか?」
「チーン。……死んでます」
「くっ……。早く元気な姿を私に見せてくれっ!」
「なんなの?毎回兄さんに意見を求めるけど軍師かなんかなの?諸葛亮なの?ただの無能な兄さんはほっといてください」
理沙からも無能と断言されてしまった……。
そういうところだぞ、お前……。
タケルの死体がもぞもぞと動こうとしていると思い出したことがある。
「そういえば部活メンバーを自称していたな。三島、初期メンバーは概念さんともう1人いましたよね!?多分その人が犯人だと思うんだけど心当たりはありますか?」
「チーン。……死んでます」
「なんで!?」
三島の魂が抜けていた。
「すまん、わたくしたちに意見が求められるとは思わなくて心霊動画を見ていたら遥香が昇天してしまった……」
「本当に何やってんだよ!?」
全然会話に混ざってこないと思っていたら美月と三島は動画視聴をしていたらしい。
そりゃあ混ざらないよね。
「新品の高性能イヤホンが遥香を殺してしまった……」
「知らんよ」
「本当に申し訳ない」
美月が申し訳なさそうに頭を下げてくる。
「でも、遥香も前にもう1人の部活メンバーに会ったことがないと口にしていたから多分手掛かりなしだぞ」
「…………」
三人寄れば文殊の知恵とは言うが、グダグダと話し合うだけでは何も解決することはありませんでしたとさ。
結局、女の身体のまま帰宅することになるのであった……。
†
因みに以前、原作は『泣いて馬謖を斬る』の物語的な話をしましたが、それが該当するならタケルが諸葛亮なのもあながち間違いではないのかもしれません。
次回、グダグダとふざけあっただけのレギュラー陣の裏で活動するヨルとゆりかの動向は……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます