32、宮村永遠の希望

「それにしても、秀頼は妹に弱いんだな」

「う……」

「もうちょっとシャキッとしないと」


美月からのアドバイスをされ、背筋が伸びる。

その姿を見てスタチャと永遠ちゃんがクスクスと笑っている。


「それを言うなら美月だって妹が大好きだろ!?」

「わたくしは美鈴大好きだぞ」

「俺も星子が大好きだ」


抵抗というかマジレスである。


「や、やめて秀頼さん!?せめて私がいない時にして!」


恥ずかしがっているスタチャが赤い顔をしてテーブルを軽く叩きながら俺を止める。

照れてるスタチャも可愛いな。


「星子ちゃんがいない時は良いの?」

「…………大体想像が付いているんで」

「あー……」


星子と永遠ちゃんから引かれた目で見られる……。

そんなに俺って星子自慢をしているイメージだろうか……?


「シスコンって肩身が狭いな美月……」

「お前と一緒にするな。わたくしは同性のシスコンだが、お前は異性のシスコン。若干違う」

「俺の味方ゼロか!」


四面楚歌の状態。

タケル、達裄さんというシスコンガチ勢どこ行った!?

彼らなら、俺の気持ちをわかってくれるはずなんだ……。


「シスコンって響きがなんか犯罪っぽいんですよね……」

「でも星子ちゃんはブラコンじゃ……」

「違いますよ」


永遠ちゃんの呟きをスタチャが遮るように言い切った。

なんか最近、ガチで星子から嫌われているんじゃないかという不安が過る。


「ブラコンの字面ってブランコみたいだよな」

「あ、秀頼さん。その話は後にしてもらって良いですか?」

「あっ、はい」


強制的にスタチャから会話を終了させられた。


「しかし、なんだ……。はじめて見たタイプの兄妹だな」


美月が俺とスタチャのやり取りに興味津々であった。


「まぁ、俺と星子で名字が違うからな。少し変わった兄妹なのは間違いないか」

「明智星子になってた可能性もあるんだよね。新鮮ですね」

「なんか結婚したみたいだな」

「ブッ……」

「ぐっ……」


美月のさりげない言葉に俺が口に含んでいたコーヒーを吹き出しそうになり、星子が口元を抑えている。

明智星子、確かに兄妹の筈なのに結婚してしまった禁断の響きがある。


「……明智永遠、あぁ良いなぁ」

「あ、永遠先輩。その話は後にしてもらって良いですか?」

「あっ、はい」


隣の永遠ちゃんや前方のスタチャにかからないように通路側を向いてのけ反って咳をしていたら、星子が永遠ちゃんが切り出した話題の方向をズラした声がする。

一体、永遠ちゃんは何を言ったんだろうか……?

それを疑問に思ったのだが、すぐに永遠ちゃんが話題を変えてしまいわからず仕舞いで終わる。


「そういえばこないだ秀頼さんと咲夜とゆりかがデートスポットについて話をしていたみたいで」

「デートスポット?」

「お兄ちゃん達はそんな話してたんですね」

「さっきからスタチャ、俺の呼び方バラバラなのね……」

「気にしないで」


あと、山本も含まれていたのだが、話を広めたであろう咲夜が山本の名前を出さなかったのは想像が容易だった。


「みんなはどこ行きたい?」

「わたくしはデスティニーだな」

「美月はミーハーですね」


案の定な意見が美月から出て、「んなっ!?」と美月が驚愕の声を出す。


「私は秀頼さんと大阪城行きたいです!」

「え、エイエンちゃん……」


永遠ちゃんが俺の左腕に抱き付いて、上目遣いで俺を見てくる。

咲夜といい、そのダジャレは流行っているのかな……?


「私は秀頼さんと横浜中華街とか行きたいなー。時間とか人の目とか気にしないでブラブラ食べ歩きしたいなー」

「せ、星子?今、デートの話をしているんじゃないのか?」

「え?私、何か間違ってますか?」

「え?」

「え?」


美月とスタチャが何かお互いの主張に相違があるのか顔を見合わせていた。


「美月はどういうところ行きたい?」

「え?わたくし?」


永遠ちゃんの言葉で我に帰り、スタチャに向いていた顔を正面の永遠ちゃんに向けた。


「そうだな……。ちょっと趣旨が変わるかもだが、わたくしは好きな殿方と屋上で手作り弁当を食べてもらいたいかな」

「うわぁ、乙女だぁー」

「う、うるさいなぁ……」


永遠ちゃんにからかわれる美月。

なんか、もう美月はそういう弄られキャラよね。

たまに三島からも弄られるという。

隙だらけなんだよね、美月って。


「あっ、でも恋人とスタチャのライブとか行きたいなぁ」

「ちょっ!?そ、それは恥ずかしいですよ!」

「うふふ、わたくしも最近反撃を覚えたのだ」

「反撃するなら私じゃなくて永遠先輩にして!?」


完全にスタチャはとばっちりであった……。


「秀頼さんは!?秀頼さんはデートでどこ行きたいですか!?」

「…………猫カフェ?」


特に何かあるわけじゃないが、猫でモフモフしてくつろぎたいなぁと考えた。


「か……」

「か……」

「か……」

「か?」


みんなが「か……」と呟きプルプルしていた。

まずい、なんか俺は変な地雷を踏んでしまっただろうか……?


『かわいいー!』


3人からニヤニヤした目を向けられる。

……完全に選択肢をミスった。

3人から弄られるターゲットにされてしまう。


「秀頼さん、猫派なんですね!私も猫派ですよ!」

「お兄ちゃん、猫好きなんてかっわいい!」

「秀頼も虜にする猫強いな!」

「わ、わかったってばーっ!」


結託した3人から帰る時までずっと猫カフェを弄られた……。

帰る頃には羞恥心で机に突っ伏していたのであった……。







帰り道。

1人で歩いていたら、またスマホのバイブが鳴ったのでラインを開くとスタヴァの姉ちゃんからメッセージが届いていた。


『私と今度、猫カフェ行こうฅ^•ω•^ฅにゃんにゃん』


「…………」


頭が痛くなってきた……。

彼氏持ちのスタヴァの姉ちゃんの心境が全然わからない……。

とりあえず既読無視をして、5分経ったらまたラインが届く。


『既読無視シャー ฅ(`ꈊ´ฅ)』

『ちろฅ(ↀᴥↀ)ฅ』


「…………」


無言になりながらも、『俺、猫好きだけど、猫アレルギーだから』とやんわりとお断りのメッセージを送信するのであった……。














最近、周りに変な人が増えたスタチャ及び星子の必殺技。

「あ、○○さん。その話は後にしてもらって良いですか?」

話を切り上げたい時、話に興味がない時、話を聞きたくない時、都合が悪い時など様々な用途で使える星子の処世術。





永遠ちゃんと星子はガチで秀頼誘って猫カフェ行こうとか、西軍メンバーには共有しないとか考えているんだろうね。




因みに秀頼君が発言した

「ブラコンの字面ってブランコみたいだよな」

について

一応過去の発言によるセルフパロだったりします。

第1章 覚醒

第3部分 3、公園に現れた女の子


5歳くらいの絵美には通じてないし、多分これを言われた絵美も覚えてないと思う……。







次回、番外編!

原作・三島遥香の好感度アップシナリオ!

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