番外編、三島遥香好感度アップシナリオ
今回のテーマは
原作ゲーム『悲しみの連鎖を断ち切り』体験版詐欺にて収録されている日常パートになっています。
豊臣光秀君、来栖由美さんが生前にプレイしたギャルゲーと思って読み進めてください。
そんなわけで、
主人公が十文字タケル、親友役が明智秀頼と普段の逆でお送りします。
タケル目線の話になります。
クズゲス本編とは、またちょっと違う歪な日常の物語をお楽しみください。
†
よーし、今日も学校終わったー!
さて、いつも通り理沙の下着の色が何色かどうか当てるか。
多分今日は白だと思うんだよなぁ……。
「おっ!?」
あっ!?
三島が1人で歩いている。
さて、どうしようかな?
★選択肢★
1人で帰る【遥香好感度-1】
→三島に声をかける【遥香好感度+1】
「おーい、三島!」
「十文字さん!今、帰りですか?」
「そんなとこ。三島も帰り?」
「今日は部活休みなんですよ。だから直帰です」
三島は文芸部に所属しているらしい。
少しだけ文芸部の部長を見掛けたことがあるけど、なんとなくたまに現れる『謎の少女』みたいなミステリアスさを感じる。
「十文字さんから話しかけてくるの珍しいですね」
「そ、そうかな……」
実はちょっとだけ三島遥香のことが気になっているんだよね……。
いつも笑顔が素敵で、水色の髪に目が惹かれるし、話やすいんだよね。
あと、理沙と同じくらい魅力的な胸とかも大変素晴らしい。
「ふふっ、じゃあ一緒に帰りますか?」
「あれ?いつも自転車通学じゃなかったのか?」
「今朝、ちょっと遅刻しそうだったのでバス使ったんですよ。だから今日は自転車はないです」
「マジ?じゃあ、たまには三島と帰るか」
はじめて三島と下校するということに、内心嬉しくなっていた。
俺が電車通学をしているから、三島も俺に合わせて電車で帰るのを合わせてくれる。
「にしても珍しいな。三島はチャリのイメージ強いからさ」
「いやぁ、電車とかバスとかちょっと苦手なんですよね……」
「え!?じゃあ電車やめる!?」
「あぁ!?いや、大丈夫です!最近、明智さんと一緒に電車嫌いを克服したので」
「は?」
秀頼と一緒に電車嫌いを克服ってなんだ?
突然出てきた秀頼の名前にちょっとだけムッとしたのも一瞬。
『電車嫌いを克服』の字面が全然わからなかった……。
「ど、どういうこと?」
「え、えっとですね……」
三島に突っ込むと、目線が泳ぎはじめる。
声に焦りの感情も混ざっている気がする。
「が、学校含めて人が集まる場所がボクは苦手だったから、明智さんにそういう場所でも大丈夫なコツをレクチャーしてもらったんですよ。うん、そういうことです。あ、あーっ!どこか寄り道しませんか?」
三島なりに説明をし、すぐに話題がすり替えられる。
これ以上聞くなと顔が物語っている。
まぁ、秀頼だし大丈夫でしょ。
ガキの頃からの付き合いで誤解されやすいけど、そこまで悪い奴じゃない。
ましてや女には紳士になり、慕われる奴だ。
それに友達の俺からであっても干渉されたり、注目されるのが好きな奴じゃない。
これ以上この件に深く考えるのは止そう。
三島が笑っている。
それが秀頼のおかげなのだとしたら、それで良いじゃないか。
俺は、1人で心で納得して、三島の話題に乗っかった。
「じゃあ最近クラスメートがバイトしている喫茶店でも行ってみる?結構オシャレなのに人がいない穴場的な感じの店」
「そんな店があるんですね!ボク、楽しみです」
「よっしゃ!じゃあ電車乗るぞ」
「わかりました!」
そのまま15分程度電車に揺られ、駅から10分近く歩いたところにひっそりと運営している喫茶店まで三島を案内した。
「こんちゃーす!」
「こ、こんにちは」
俺に続いて三島が遠慮がちに入店する。
すると、すぐにクラスメートの女子の声が俺らを出迎えた。
「イライライライラいらっしゃいませ」
「そのメロディー、アバレ●ジャーだろ?誰が通じるんだよ……」
「イライラ言ってたから怒っているもんかと……」
ヨル・ヒルの元気な声が店中に響く。
出オチの挨拶をしてきたヨルに対し、三島が少し遠慮がちに愛想笑いをしていた。
俺の周りはヨル含め、津軽や秀頼などなぜこうも取っ付きにくい奴らしないないのだろうか……?
もう少し完璧シスターの理沙を見習って欲しいモノである。
「ん?お、おお?ど、童貞のタケルちゃんが女連れだぁ!?明日、世界は滅ぶ……」
「何故脈絡なく童貞を弄る!?」
「あたしは童貞を弄っているわけではない。タケルを弄ってんだ!」
「悪意の塊じゃねーか……」
質の悪いバイトウェイトレスである。
そして、ヨルは俺の隣にいた三島の方へ近付き声を掛けた。
「あたし、タケルのクラスメートのヨル・ヒルだ。よろしくな!好きなアイドルはスターチャイルドだ!」
「み、三島遥香です!弟の好きなアイドルはスターチャイルドです!」
「いや、お前の好きなアイドルじゃないんかいっ!」
「ボクはアイドルならばぺヒュームが好きです」
「仲良しだな、君ら……」
出会って1分で三島とヨルで漫才を繰り広げられていた。
憎まれ口を叩くヨルではあるが、スタチャファンという事実は実に光栄するべき事実である。
秀頼なんか『は?スタチャ?スタヴァか?』とか素で言うくらいにアイドルに興味がないからな。
曰く『テレビの向こう側の女より、リアルの女に目を向けた方がヤれるし、アイドルと違ってNGもモザイクも著作権も恋愛禁止もないし最高じゃねーか』というちょっと頭のおかしい価値観を持っているのだから恐ろしい。
スタチャの写メを秀頼に見せたところで『はっ。作りモノみてーな顔してんな。きっしょ』とか言われてイラっとしたことがある。
あいつひねくれ過ぎだろってんだ。
それでいて『ウチの彼女の絵美ちゃんの方が100倍可愛いだろ』と真面目なのか、ジョークなのか判断に困る言葉を投げ付けるのが凄い。
それを聞いていた佐々木も顔を赤くして2人してイチャイチャしだすし、スタチャの顔を表示していたスマホを泣く泣く画面を消したのは惨めであった……。
最終的に秀頼が俺の目の前で佐々木の小さい胸を揉んでいて俺が気まずかった……。
「それにしてもタケルも遥香も今日はおめでたい日に店に来てしまったなぁ」
「おめでたい日、ですか?」
三島がヨルの話術に引っ掛かる。
思わせ振りなことを言ってしょーもないトラップを仕掛けるヨルだから真面目にならなくても良いのに……。
「ヤヒュー知恵袋にて、喫茶店で出して欲しい料理をアンケートしたんだ。すると1位が天津飯、2位がたこ焼きときたもんだ」
「おっ?もしかしてメニューに天津飯とたこ焼きが追加されるとか?」
「ボクはミートソーススパゲッティが良かったなぁ……」
俺と三島の発言を横に首を振りながら、ヨルは大袈裟な口調で煽る声を出していく。
「ちっちっちっ。ウチの店はなこれからチェーン店に進化させていく。んなありきたりなメニューでのしあがるわけないだろ」
「いや、お前はそもそも店長じゃないし、ただのバイト……」
「店長代理のバイトリーダーだ!バイト言うな」
「……結局バイトなのでは?」
三島が無情な突っ込みをするが、ヨルは『店長代理』という肩書きに誇りを持っているみたいだ。
「そこでヨル・ヒル考案!あたしのアイデア料理!通称『TOT』が出来上がったぁぁぁ!」
「てぃ……『TOT』だってぇぇ!?」
「こ、これは熱いですよ十文字さん!」
俺と三島は驚愕の声を上げる。
ヨルが自慢気に語る『TOT』とはなんなのか?
店内の注目を浴びる(客はこの場の2人しかいないのだが……)。
「その名も『たこ焼きON天津飯』だあああぁぁぁぁ!」
「まんまじゃねーか!なんでその2つを混ぜたんだよ!炭水化物ばっかじゃねーか!」
「そのメニューがようやく完成した。さぁ食べてくれ2人共」
「え!?アイデアだけじゃなくて作ったの!?」
小皿に盛り付けた『たこ焼きON天津飯』が俺と三島の元に運ばれた。
「お値段1000円で提供予定だが、小皿に盛り付けたこととまだ試作段階だから今日は特別950円で良いぜ」
「たっか!注文すらしてないのに950円取られるとか居酒屋のお通しとしてでもぼったくりじゃねーか……」
「2人で950円ですか……?」
「いや、2人で約2000円」
「きちんと1900円って計算しろよ!というか高いよ!まけて、まけて!」
俺の財布に3000円くらいしか入ってねーよ!
こんな理不尽に2000円が飛ぶとか恐怖でしかない。
「ほーら、あたし親指でスプーン曲げができるんだぞ」
「すごーい!」
三島が惜しみない拍手をして盛り上げている。
「曲げて、曲げてとか言ってねーよ!『まけて』って、値段を安くしろよってことだよ」
あと、ヨルの指が相当プルプルしているからただの力技じゃねーか!
手品ですらない。
「冗談だろ、タケルちゃん。わかってる、わかってるよ」
「ったく……」
「わかってはいるが、値下げはしない」
「なんでだよ!?」
「ジョークだよ、ジョーク。ただで良いよ。試作品に金なんか取らねーよ」
俺が文句を言わなかったら本気で約2000円をぼったくろうとした女のセリフとは思えない。
三島と手を合わせ「いただきます!」と言ってお互いにたこ焼き天津飯を口に入れる。
「…………単体はおいしいが、一緒に食べるとダメだな」
「たこ焼きと天津飯が口で喧嘩しちゃってます……。あっ、でもこの天津飯はボク好みです」
結局2人して、たこ焼きと天津飯は別々に食べる始末であった。
それを眺めていたヨルが寂しそうに呟いた。
「…………ふっ、この店のチェーン展開物語はここで終わった……」
「多分始まってすらいねーぞバイト」
「バイトじゃねぇ!店長代理だっ!」
「バイトリーダーでは?」
「ぐわっ、やられたぜっ……」
遥香からの突っ込みでヨルはやられたらしい。
とんだ茶番だった。
それから喫茶店で3人でワイワイしながら楽しんだ。
1時間くらい喫茶店で時間を潰したのであった。
それからは、俺の家であるマンションと遥香の自宅の分かれ道を別々に歩いて帰宅するのであった。
かなり楽しかった。
また、三島を誘ってどっかに食べに行きたいと思うくらいに彼女に惹かれていて、気になる存在になっている。
「おっ?ひでよりぃー!」
帰り道の途中、秀頼と佐々木がデート中なのか2人で歩いているのに遭遇し、近寄っていく。
秀頼が嫌な顔をして、佐々木は無表情で出迎える。
「なんだ、お前?」
「親友に会った第一声がそれとか冷たい……。おい、佐々木からもなんか言ってやれ!」
「…………」
「せめて口くらい聞いてくれない!?」
佐々木は無表情で、ただ俺の顔を見てくるだけだった。
彼女の目元にある黒子も目に見えてしまい、無言で3つの目でジロジロ見られている気がしてくる。
「なぁ、佐々木!たこ焼きON天津飯ってどう思う?」
「邪道」
「お前の彼女ってロボットかなんか?」
「あ?」
秀頼が不機嫌そうに目を向ける。
そもそも俺と佐々木のやり取りに興味すら抱いてなさそうであった。
「絵美、お前ロボットなのか?」
「違います」
「違うって」
いや、それがロボットみたいなんだよ。
「なぁ、ところで聞いてくれよ秀頼!俺さ、最近気になる子がいてさ」
「おっ?まさかタケルから恋愛相談をされるとは。ほんでほんで」
「三島遥香っていう別のクラスの子が気になっててさ!秀頼も知ってるんだろ?いやー、三島はさなんか目が離せない存在って感じでさ」
「三島遥香?あぁ、あの子か」と秀頼が相づちを打っていた。
「だから恋愛マスターの秀頼にアドバイスをお願いしたくてさ!」
「良いよ。俺とタケルの仲だ。それくらいしてやるよ」
「マジで!?」
珍しく秀頼が真面目に話を聞いてくれている。
いつもこんな感じに優しいと俺も接しやすいんだけどな。
「あの子から離れるな。あの子を支えられる男になれ」
「え?」
「…………」
至極まっとうなアドバイスをされ、普段の秀頼と様子が違うことに驚く。
佐々木もそんな秀頼に対し、無言ではあるが目を丸くして驚いている。
「三島が何もかも壊して孤独になる時があるかもしれない。それをお前が守ってやるんだ。……タケルしか、三島を支えられないはずだから」
「……秀頼?」
「あっと……。なんでもねぇよ」
秀頼が恥ずかしそうに顔を赤くしているのがチラッと見える。
可愛い奴だなお前。
「あばよ」
「あーれー」
そのまま佐々木の手を引きながら秀頼は立ち去った。
突然の出来事に佐々木がギャグマンガのキャラクターみたいなことを言いながら消えていった。
「俺しか三島を支えられないか。……そんなこと言われたら照れるじゃねぇかよ!」
憧れの秀頼からそんなセリフを吐かれたらやるきゃないよな!
俺、本気で三島遥香を狙ってみようと胸に誓うのであった。
†
原作の秀頼は、遺伝子レベルでスタチャが大嫌いです。
アイドルより彼女である絵美の方が100倍可愛いと惚気ているシーンです(白目)。
三島遥香の『病弱の代償』ルート確定のイベントを描かせていただきました。
美月ルートでは秀頼と遥香が繋がっているのが序盤から明かされてましたが、
遥香ルートではルート確定直前で秀頼と遥香の繋がりが示唆されます。
この後すぐに遥香のギフトが暴走します。
あくまで8章の内容は、何回も語っている通りタケルが遥香に一切干渉しないルートの出来事なので、この番外編と軽い矛盾がありますが気にしないでください。
『エナジードレイン』暴走後のタケルと遥香のやり取りもいつか書く予定です。
楽しみにしていてください。
因みに、原作の絵美はタケルが大嫌いです。
秀頼の次に嫌い。
心の中では無能と見下したり、イラつき過ぎて本人の目の前で舌打ちするレベルで嫌いです。
第5章 鳥籠の少女
第94部分 50、佐々木絵美の末路B
第6章 偽りのアイドル
第111部分 番外編、十文字理沙好感度アップシナリオ
ルートが無くて正解だったかもね……。
クズゲス世界では、異性では秀頼の次に親しい相手と認識しています。
恋愛に発展はしませんが、仲は良好です。
次回、絵美にドキドキする……。
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