28、谷川咲夜はデートを語る

「デートスポットねぇ……」


咲夜がニヤニヤした目で山本を見ていた。

それを恥ずかしそうに受け止める山本であった。


「咲夜は彼氏ができたら行きたい場所とかある?」

「デスティニーランドかな」

「もう良いんだよデスティニーは!それじゃあ君を呼んだ意味ないでしょ!?」


咲夜もどうやらデスティニーらしい。

スタブァの姉ちゃんといいやっぱ女子人気も高い。


「デスティニー良いよな?」

「ウチも行きたい」

「だからがっついてる思惑が見え見えなんだって!それで『ホテル予約した』って言ったらさ」

「山本やってんなぁ!」

「大悟やってんなぁ!」

「ってなるでしょ!?」


『なるなる』と俺と咲夜が頷きながら肯定する。


「だから山本がカラオケ以上デスティニー未満のデートスポットを紹介して欲しいんだって。咲夜はどういうところ行きたい?」

「ウチは秀頼と大阪城行きたい」


なんで俺?

あぁ、ダジャレか。

大阪城と秀頼を掛けてるのか。

デートスポットを俺と行きたいとか言ってるのかと思った。


「お、大阪……。いや、大阪誘って『ホテル予約した』ってなったらやっぱり『やってんなぁ』コースまっしぐらだって!」

「咲夜は時代劇とか好きだからな。歴史的建造物が好きなんだな」

「ウチは日光の江戸村とか東照宮に行きたい」

「デートスポットというか観光地巡りじゃん……」

「姫路城も良き」

「参考にならねぇ……」

「やまもとぉ……」


咲夜が山本に怒りを示す。

イレギュラーなコミュ障娘は観光地でしかデートスポットが出ないらしい。

近所のデートスポットを探す山本と意見が一致しない。

それを咲夜に伝えると「なるほど!」と頷く。

「本当にわかった?」と山本が尋ねると「ああ!」と咲夜がグッと親指を上げる。


「ウチはな自宅デートも良き」

「自宅デート?」

「そう。デート=出掛けるというありきたりな常識を覆す最先端の一手だ」

「そ、そんな手が……?」


咲夜は自慢気に、山本が初めて知ったという顔だがわりと昔から自宅デートってあるけどな。

自宅に誘っている時点でヤリたい感ヤバいけど横槍を入れずに見守っておく。


「山本が得意なスマブラで魅せプレイをするんだ」

「ほうほう。…………俺スマブラ得意とか一言も言ったことねーけど続けて」

「ただ、本気を出して圧勝されると女性の気分が損なってしまうので接待プレイでわざと負けたりするんだ。ここのポイントは女性から『凄いテクニックを出せる人なのに私勝っちゃった!』と気分良くさせるんだ」

「そ、そんな女性の気分を上げるテクニックがあるなんて……。続けてくれ、谷川先生!」

「すると『きゃーDAIGOステーキ!』って絆が上がるんだ」


山本のスマブラ得意前提で始まる謎設定や、咲夜が『私』って単語を出した違和感、ステーキが気になって話がまるで頭に入ってこなくなった。


「長谷川雛乃から『DAIGO!もっかいスマブラ!』って催促されるはずだ。2戦目はあえて僅差で山本が勝つ接待プレイだ。ポイントとしてステージ終点はやめておけ。ポケモンスタジアムなどを選ぶことでエンジョイ勢アピールするのがコツ」

「勝って良いのか?」

「僅差で勝つのがポイントだ。負け続けると『えー?雑魚DAIGOないわー……』って見下される。男が圧勝すると女は白ける。接待プレイも大事だが女性より俺が強いんだぜってアピールもしておけ」

「メモメモ」


そもそも長谷川雛乃は山本をDAIGO呼びなの?

長谷川雛乃のセリフおかしくない?

この3人で唯一長谷川雛乃を知らない俺だから違和感持ってるだけなの?

山本的には彼女が喋り方でOKなの?

疑問が尽きない。


「そして、最後に山本が長谷川雛乃に言うんだ。『ズーム越しじゃなくて直接長谷川雛乃に会いたい』」

「え!?待った!この自宅デートオンラインだったの!?俺、長谷川雛乃とズームしてたの!?」

「そうだが?」

「なんで向こうもゲーム機持ってる前提なんだよ!長谷川雛乃はゲーム機持ってねーよ!どうすんだよ!?」

「簡単なこと。じゃあ山本が1台貸せば良い」

「そもそも俺も1台しか持ってねーよ!ゲーム機を複数台買えるほどに裕福じゃねーんだよ!」


真面目に話を聞いていた山本が不憫である。

仕方ない、咲夜を普通の女子に当てはめるのがダメだったんだ。

たまたま近くを通りかかったクラスメートの女子を呼んで、咲夜じゃなくてこっちの意見を参考にさせよう。


「お?師匠、呼んだか?我になんのお話ですか?」

「ゆりかかよ」


顔見ないで女子を呼んだら偶然上松ゆりかを呼んでいた。

山本が既に『ハズレを引いた』って顔である。


「ゆりか。君がデートに誘われたらどこ行きたい?」

「ししょー!我はデスティニーランドに行きたいです!」

「参考にならない意見はもういいよ!」


山本の突っ込みが教室中に響く。


「お前、目の前で我をバカにしたな?」

「上松さん、なんでそんなんでキレてるの……?」


こうして、無駄な時間が過ぎて休み時間が終わり、なんの余韻もなく数学の授業がはじまるのであった……。









月編で出番がなかった者の集まりという悲しい集団……。





ズームって何?

正式名称はz○omというオンラインで映像を共有したり、テレビ通話みたいにして話し合うアプリと認識していただけたら幸いです。





次回、待ち合わせをする星子にハプニング発生!

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