42、明智秀頼は誇らしい

「それにしても初のミャクドナルドです!ワクワクワクワク」

「初なのか……?」

「はい!CM見たことはありましたけど来たことありませんでした!」


そういえば考えてみるとタケルともミャクドナルドは来たことないな……。

俺がミャクドナルド来る時は大体ボッチの時だからな。


「絵美とかと来たりしないの?」

「みんなでミスドーナツくらいは行きますね。ミャックは始めて!」

「へー」


俺的には新鮮味も何もないハンバーガー屋であるが、十文字家はちょっと金持ちイメージがあるので庶民が行きそうな店には行かないのかもしれない。


「わぁ!パンとハンバーグなんて新鮮!今度兄さんにも出そうかしら!?」

「あれ?喧嘩中では?」

「コホン……。タケルにピクルスだけ出して私だけハンバーグを食べます」

「鬼かよ……」


思い出したかの様に兄に対して当たりが強くなる理沙。


「そうだ!明智君は星子さんと喧嘩した時どうしますか?」

「星子と喧嘩ねぇ?」

「というか喧嘩しますか?」

「するする」

「えっ!?明智君も喧嘩するんですか!?どんな喧嘩内容なんですか!?」


俺はコーラを飲みながらどんな内容で星子と喧嘩をしたことがあるか思い出す。

確かあれはスタチャ関連の喧嘩だ。


「スタチャのパンツは黄色と黒なら黒が似合うって話をしたらゴミを見る目で見られて星子が全く口を開かなくなった経験がある」

「それは100:0で明智君が悪いです」

「う……。山本とそういう話になったことがあって気になってつい……」


確かタケルの誕生日プレゼントを買いに行ってすぐぐらいの出来事である。

本気で妹より立場が低くなった瞬間であった。


数日後、和から『ゴミクズ先輩朗報です!せーちゃんが黒くてエロい下着を購入してました!』とラインが来た時はちょっと恥ずかしくなり、既読無視をしてしまった出来事である。


「理沙は兄貴とこういう話はしない?」

「…………」

「理沙?」

「…………ウチ、兄さ……タケルと私の洗濯は全部一緒にするので兄さ……タケルに全部下着を把握されてます……」

「いや、どんな兄妹だよ!?あと、もう無理にタケルって呼ばなくて良いよ!兄さんで伝わるから!」

「どんな兄妹って……、明智君に言われたくはないかも……」


お互い複雑な兄妹関係である。

しかし、流石ギャルゲーの主人公とヒロイン。

下着すら把握する仲なのは凄い。


「しかし十文字家はどうなってんだ?君らの親とかどうしてるの?」

「あー……。親は私の事嫌ってるから……」

「え?」


理沙から突然の暗いカミングアウトに言葉を詰まらせる。

ギャルゲー主人公だから親が不在にも、タケルと理沙から見たらきちんと理由は存在するみたいだ。


「あ、あぁ!兄さんに比べてよ?私があんまり両親に好かれてないってだけの話だから……」

「そうなのか?それって……」

「うん。ギフトの問題って奴かな。私のギフトのせいで親と別居してるの」


理沙のギフト。

原作ではいつか語るかもしれないと言いつつ、特にスポットも当たることなく消えた理沙のギフト設定。

踏み込もうにも、自分のギフトも明かさない以上、理沙に干渉することは俺には出来なかった……。


「理沙はタケルのギフトについては内容とかわかるのか?」

「全然。本人が知らないのに私が知るわけないですよ」

「そっか……」

「ただ、なんとなく兄さんには私のギフトが効かない気がするから多分それに近いなんかなんだと思う。単に鈍感な可能性もあるけど……」


一応タケルの体質には気付いているのね……。


「じゃあタケルに『ギフト効かない体質じゃね?』って言ってみれば?」


というかあいつは自分のギフトに気付けよ。


「言ったことありますよ。すると兄さんは『偶然だよ偶然』とか言ってますね。あの人、明智君並みに鈍感ですので」


理沙がストローでお茶を飲み始めた。


本当にあいつは無能だな……。

……てか、え?カッターの様に鋭いを異名に持つ俺が鈍感なわけないじゃん。


「あー!兄さんなんか嫌い!ベッドの下に如何わしい本とか隠してたり、辞書のカバーみたいなやつにエロいの入れて誤魔化すし!あの変態魔神嫌いよ!」

「あいつは魔神よりドラゴンが好きだから変態ドラゴンって言っておきな」

「なんですか、変態ドラゴンって……」


シスコン魔神ではなく、シスコンドラゴンを名乗る奴だからな……。


「あー、このチーズバーガー美味しい!ハムハム」


幸せそうな顔をして理沙はチーズバーガーを頬張っていた。

因みに俺はビッグミャックである。


「ポテト食べたいんだけどこの店箸なくない?」

「ハンバーガー屋に箸は置いてないよ」

「えっ!?指汚れるじゃないですか!?」

「じゃあナプキン越しで摘まんだら?」

「なんか行儀悪いわね……」


理沙が悲しそうな目でポテトを見ていた。

確かにポテトを食べる前と食べた後は手を洗うのが必須だけどね……。


「あー、兄滅ばないかな……」

「理沙からそんな言葉聞いたらタケル泣くぞ……」

「シスコンだからね」

「君もブラコンよね」

「明智君と星子さんにも刺さる言葉よね」

「…………星子ってブラコンなん?」

「私と同じ匂いがする。絶対ブラコン。そして、明智君も兄さんと同じシスコンよ」

「…………へへっ、ブラコンか」

「…………明智君に星子さんの話は振らないのが正解ね」


星子がブラコンと言われてちょっと誇らしい。

俺と星子もどうやら兄妹相性は良いらしいな。

俺も箱を開けてビッグミャックを取り出す。

そろそろ俺もハンバーガーを食べようとした時であった。




「あっ!?秀頼さん!理沙も奇遇だねっ!」

「え?」

「あっ、永遠さん!?」


お盆を持った永遠ちゃんが俺と理沙の座る席に立っていた。

そして、もう1人同行者が居た。


「やぁ、秀頼じゃないか。こんばんはだ」

「美月……?」


美月もお盆を持っていた。

…………ミャックの似合わない2人であった。


「せっかくなんで私も一緒して良いですか理沙?」

「良いですよ。そちらは……?」

「深森美月と申します。永遠の友達ですよね。是非、わたくしとも仲良くして欲しい」


そう言って美月は理沙の隣へ、俺の隣に永遠ちゃんが座った。


「偶然ですね、秀頼さん!」

「そ、そうだね」


最近、俺をからかってきてめっちゃ意識をしてしまい少し怖いまである永遠ちゃんである。

あー、永遠ちゃんが好きなのは俺?とか変な期待をしてしまうから本当にドキドキしてしまうのであった。

永遠ちゃんのシャンプーの匂い、化粧の匂い、髪の匂い、全部が好みである。

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