41、十文字理沙は爆発する

ここ最近、円が優しい態度が続き良いことではあるんだろうけど不気味であった。

本当に何があったのだろう?


『何か劇的に変わった日はいつか?』を考えるとおそらく見舞いに来た日からだ。

俺への罪悪感から態度を軟化させた?

まだよくはわからないけど、いまいち捉えどころのない円に対してあまり考えないようにしていた。


そんなこんなで『病弱の代償』三島遥香のギフト問題も解決し、比較的平和を謳歌している。

ギフトアカデミー入学し、概念さんと面識を取ってから休む間もなかったのだからそろそろ俺も次に備えているところである。

シリアスっぽい空気はしばらくごめんである。


そろそろ楽しい楽しい高校生活を満喫して、前世でリタイアしたぶんを取り戻すんだ!

あわよくば恋人を作ってこの虚しい灰色の青春を終わらせて、ワクワクドキドキのアオハルを掴み取りたいところだ!


そして今日は…………。






「もう本当に兄さんは子供なんですよ!」


理沙から愚痴を聴かされていた……。


楽しい楽しい高校生活を満喫するどころか、シリアスは終わらなかった……。


「えっと…………兄妹喧嘩的な話?」

「兄妹喧嘩です!」


ミャクドナルドで俺と向かい合う理沙はプンプンにタケルの愚痴を漏らしていた。


「兄さんは、何もしないクセに文句ばっかりなんですよ!」

「はぁ……」

「味噌汁が味薄いって言われて『はぁぁぁっ!?』ってなりますよね!?」

「そ……なるなる」


危ない危ない。

いつものクセで『それ気にする?』とか言っちゃうところであった。


「『じゃあ自分で料理すれば!?』って言うと『作り方わかんない』とかほざくんです!イライラゲージが溜まります」

「溜まっちゃったか……」

「溜まりますよ!それで喧嘩別れして明智君を夕飯に誘いました」

「はぁ……。…………なんで俺?」


絵美とか永遠ちゃんとか理沙と仲良い人はいくらでもいるだろうに、なんで俺をチョイスしたんだろ……?


「そ、それは私が……、明智君と一緒に居たかったし」

「声張って!独り言の方が声大きいのは嫌がらせだろ!?」


理沙がぶつぶつと小さい声でなんかを口にした。

声小さいし、周りの雑音で聴かせる気がないなんかを口にした気がする。


「じゃなくて……。兄さんなら真っ先に明智君誘って夕飯誘うはずなので先回りしました」

「正解だよ」


理沙から『会って欲しい!』と連絡をもらい、『兄さんから何か誘われても断って欲しい』という文章を読んでから1分未満でタケルから『ちょっと会おうぜ』と連絡来たので渋々先に連絡してきた理沙を優先させた。

タケルの方が早かったらタケルに会ってたところだ。


「ふふっ、この恨みはらさでおくべきか……」

「怖いなぁ!円並みに怖いよ!」

「円さん怖い要素ないでしょ……」


理沙が怪しく笑うので突っ込んでおいた。

それに円の怖さを知るのは俺のみであった。


「最近あいつ笑顔が多くて怖くね……?」

「なんで笑顔が多いと怖いの……?初対面時は印象最悪だったけど、今は普通に仲良しだし」

「初対面時はまぁ……」


絵美、理沙と現在キャラクターがいきなり現れたら拒否反応も起こしたくなるだろう。

俺も最初に会ったのが主人公でもヒロインでもないサブキャラクターの絵美だったから知らぬに遊んでいたが、理沙や永遠ちゃんの様なヒロインと出会っていたらすぐに気付いていただろうし、多分逃げていたと思う。

そういう意味では最初に会ったのが絵美で良かったかもしれない。

そもそも転生してすぐは絵美の存在は頭から抜け落ちていたしね……。


「というか前から明智君の前以外ではあんな子よ」

「マジで!?」

「嬉しくなると腑抜けた顔をするくらいには円さんも笑顔が多いよ」


意外な円トリビアに俺だけが慣れていないのを悟る。

少しは俺に対してのトゲトゲしているのが和らいでいるのかもしれない。


「まったく、兄さんは子供なんです!ガキなんです!キッズなんですよ!」

「はぁ……」

「いつもは我慢しますけど、それがついに爆発した!みたいな?あー、あのタケルめっ!」

「理沙の口からタケルって単語出たのが新鮮だな」

「それ気にする?」

「なっ!?カウンターだと!?」


俺がいつも理沙にしている突っ込みをされてしまう。


「バカなやり取り止めてください!とにかく私はささやかなるにい……タケルへの抵抗として兄とは呼びませんし、明智君を独占します!」

「はぁ……」

「ターケールぅー!って気分です」

「お、おう」


理沙のタケル呼びに違和感しかなくて話が頭に入ってこなかった……。


「で?理沙はタケルと仲直りしたいとか?」

「なんで私がタケルと仲直りしたいんですか?少しはにい……タケルも私の有り難みに気付くべきです」

「兄さんと呼ぼうとしたな?」

「してません。新潟県って言おうとしたんです」

「脈絡考えようぜ!?少しは新潟県っておかしいだろっ!?」

「それ気にする?」

「気にするってー!」


いつもとは逆で理沙がボケ役に、俺が突っ込み役に回ってしまうくらいには今日の理沙は機嫌が悪いのであった……。

タケル……、理沙と仲直りしてくれ……。


「ふんっ!に……タケルなんか居なくなっちゃえば良いんです」

「…………」


わざとじゃねーかってくらいタケルを兄さんって呼びそうになる理沙の反応だけは微笑ましい。












原作秀頼もこんな兄妹喧嘩に巻き込まれていそうである。


理沙が

「ふんっ!に……タケルなんか居なくなっちゃえば良いんです」と言ってますが、

実際に居なくなった結果が2ページ前の話。

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