19、谷川咲夜は相談に乗る

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「おい、秀頼」

「どうした咲夜?」


三島遥香に接近した日の昼休み。

三島に後で会うようにラインを打って、あとはボーッとしていたら咲夜から声を掛けられる。


「秀頼、最近元気ない。ウチが相談乗る」

「お前が?咲夜が相談なんか乗れるのか?」

「ウチをバカにするなよ。大船に乗ったつもりで相談を受け付ける」

「大船ねぇ……」

「信じてない目だな。なんなら豪華客船タイタニックに乗ったつもりで相談に乗る」

「沈んでるじゃねーか」


突っ込みどころしかない咲夜に笑ってしまう。

本当に面白い子だ。


「タイタニックが沈むんだったか?じゃあノルマントン号に乗ったつもりで相談に乗る。むふーっ!」

「いや、やる気出されても……。ノルマントン号も沈んでるし……」

「貴様はちょっと細かい」

「え?俺のせい!?」


咲夜から面倒そうに呟かれた。


「元気を出せよ秀頼」

「元気元気」

「口だけだろ貴様?」

「といってもなぁ……。元気の出し方ってどうするの?」

「ヘイシリ『元気の出し方を教えろ』」

「まさかの機械頼り!」


突然のスマホ使用に心でずっ転んだ。

音声アシストみたいな奴あんまり使いこなせないんだよね俺……。


『オカズを探しましょう』

「…………」

「…………」


俺と咲夜の間に気まずい空気が流れた。

クラスの男子が何人かから振り向いた視線を感じるが気付かない振りをする。


「探す?」

「やめろお前!学校で何する気だっ!?」

「学校じゃないなら良いのか?」

「まぁ」

「良いのか!?」


オカズは自宅で探すもの。

絶対学校ではない。


「ヘイシリ『気まずい空気の戻し方を教えろ』」

『優しいキスをしてあげましょう』

「…………するしかないか」

「するわけねーだろ!?君のシリなんかおかしくない!?」

「それはそれでウチのお尻が変な病気を持ってるみたいで嫌だな」


なんかもうちょっと常識的な答え出すんじゃねーの?

なんでちょっと中学生男子みたいな答えしか出さないんだよ。


「機械頼りがダメなんじゃない?」

「おかしい……、マスターに買ってもらったばかりなのに……」

「シリが変で検索してみたら?」

「ヘイシリ『シリが変だ』」

『薬を塗りましょう』

「ウチは別に痔に悩んでないんだが……」


求める答えと違う答えばかりでてきてスマホってそんなもんなんかな?と思ってしまう。


「仕方ない。秀頼のスマホで試そう」

「仕方ないな。ヘイシリ『元気の出し方を教えろ』」

『興奮するものを視界に入れましょう』

「…………」


クラスの男子も女子もこっちを向いた視線を感じる。

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。


「あっ、おい!」


無言で咲夜が俺のスマホをシュッと取り上げた。


「ヘイシリ『興奮するものとはなんだ?』」

『女性の腋です』

「お前やめろマジで!」

「ヘイシリ『興奮させる腋の作り方』」

『手入れをしましょう』

「もうやめろやめろやめろ」


反射的に咲夜からスマホをひったくる。


しかし、時既に遅し。

コソコソとした声が聞こえてきた。

シリってこんな的外れな意見しか出さない機能だったのか、使わんとこ……。


「ヘイシリ『人のコソコソを収める方法』」

『ぶっ殺してやりましょう』

「血気盛んだな!?」


咲夜とスマホで遊んでは火傷した昼休みになった。

やべぇ、スマホ使うのが怖い……。



「お前は一体何をしているんだ!?恥ずかしいぞ!師匠が迷惑してるだろっ!」


顔を赤くしたゆりかが咲夜に突っ掛かってくる。

それをちょっとムッとした顔で咲夜が答える。


「ゆりかの方がよっぽど迷惑」

「なんだと!?」

「ヘイシリ『ゆりかを追い払う方法』」

『胸を揉んであげましょう』

「むっ……ねっ!?」


ゆりかが赤くなった顔になり後ろを振り返る。

彼女の反応に、またクラスの山本らの男子の視線を集める。


「我、恥ずかしいですぅぅぅぅ!」


シュッとどこかへ消えていった。

スペックは高いのに、ゆりか弱っ……。

また即落ちして負けたよ。


「ウチとシリの勝利」

『友情パワーです』

「なんでもいーや……」


咲夜がスマホを掲げて勝利のポーズを決めていたのであった。

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