18、明智秀頼は疲れる

1時間目終了時刻になる10分前ぐらいになりようやく本調子になる。

マジで机から離れられなくなってた……。

机が温くなったら、隣の席みたいな感じで6回くらい移動をしては机の冷たさに安心感を覚えていた。


さて、授業中であるが教室を見てみよう。


見るのは俺のクラス……ではなく三島遥香のクラスだ。

ひょこっと顔を覗かせる。


おー、美月が美人だ。

昨日の沢村ヤマ似のあの子も可愛いねー。

なんて思って教室を見ていると不自然に席の空白が見える。

三島遥香の周辺が全滅している。

みんな風邪や熱みたいに休んでいると思われる。


思ってた以上に手遅れであり、今すぐ動かないとやばそう。

あれじゃあ、クラスで近寄れる奴いないし、高校生デビュー失敗してるよな……。


永遠ちゃんの時みたいに悠長なことをしている時間は無さそうだ……。

あー、マジで『アンチギフト』持ちのタケルやヨルがいればそいつに俺の役目をぶん投げたい。


「ん?」


三島から少し離れたところに2つ結いをしている人が目に入る。


あ……、あの子セカンドでヒロインを務める詠美じゃねーか。

嘘、マジか……。

なんだよこのクラス……。

詠美とだけは……。

詠美とだけは絶対に会いたくないヒロインなんだよ……。


会いたくないヒロインランキングでヨル以上に高いんだよなぁ……。

彼女にだけは俺の存在を認知されないようにしよう……。


それにしても原作ヒロイン3人が在籍してるクラスか。

色々と大変そうなクラスだ。


でも、よくよく考えると俺のクラスもヨル、永遠ちゃん、理沙の3人のヒロインが在籍してるからな。

いやはや、顔面偏差値が高い、目に眼福な学校である。


そろそろチャイム鳴るな。

チャイム鳴るまで教室から離れているかとトイレ周辺まで離れていく。







『ジーっ。あいつ怪しいな……』






ーーーーー




「秀頼君!?どこ行ってたの?」

「いや、体調悪くてちょっと寝てた……」

「えっ?だ、大丈夫?」

「心配すんなよ」


教室に戻ると絵美から真っ先に心配される。

貧血起こして倒れていたとかちょっと言えねーな。

早退させられてしまう。


「そうだな。少し体調悪そうだ。大丈夫か、お前?」

「明智君!?兄さんに保健室まで運んでもらいますか!?」

「師匠、この漢方薬はどんな病気にも効きます。今すぐ処方を」

「秀頼さん、昨日別れたあと何かありました!?」

「秀頼にはウチのコーヒーをやる。モーニングショットだ」


タケル、理沙、ゆりか、永遠ちゃん、咲夜と次々に心配の声が上がる。

こんなん真夏でクーラーのない武道館で防具着て竹刀を振ってた時の方がよっぽど辛かった。

もうちょっと達裄さんとの修行をこなした方が良いのかな?


ゆりかを撃退した話をした時は『いやー、やったね!』とかあっさりしたお褒めの言葉をいただいた。

まだまだあの高みには行けない。

師匠などとゆりかには慕われてはいるが、正直俺なんかあのシスコンに比べたらまだまだだ。

普通に不意打ちしても目を瞑って避けるわ、顔面殴るわで凄い。


自信のある剣道ですら同じくらい強くて凹む……。

剣道は本気出してイーブンくらいである。

マジで前世の黒歴史であるラノベ主人公風に力を隠したやり方をしたら瞬殺された……。

あれで職業マネージャーとかアドバイザーとかなんでもやってますってんだから参るね……。


「明智君……」

「大丈夫だよ」


円からも心配した顔をされる。

事情を知っている彼女だけは三島遥香と接点を持ったというのが伝わっているようだ。


「そういえばタケル?自分をボクって呼ぶ女の子わかる?」

「ボクって呼ぶ女?…………あー、確かこの学校ではじめて登校した日にぶつかった子か?短髪の子?」

「そうそう。ちょっとあの子挙動不審だけどなんか変わった感じとかあった?」

「別に何も」

「……そうか」


ゲームのプロローグの流れに沿ってるわけね。

そして美月の妹を目撃してちょっと驚いたみたいなイベントもあったはず。

しかし、あんなに『エナジードレイン』をばら蒔いていて気付かないこいつも凄いな。

流石、原作の明智秀頼もタケルのギフトに嫉妬するわけだ。

タケルには彼女の異変に気付く余地もないんだろうけど……。






「お?なんだヨル、お前休みかと思っていたが学校に来ていたのか。1時間目はサボりか?」

「おー。なんだタケルがあたしを心配してくれるのか?」

「べ、別にそんなんじゃねーよ。…………あれ?秀頼とお前一緒にいた?」


タケルの言葉に背中に嫌な汗が流れる。

なんて言った……?


「ただのサボりだよ。あたしが明智となんかいるわけねーだろ」

「本当か?」

「お?タケル君嫉妬っすか?嫉妬っすか?シスコンが嫉妬っすか?」

「いや、別に。ヨルにも秀頼にも嫉妬はない」

「そ、そうっすか……」


真顔でズバッと言ってのけるタケル。

鈍感かお前は……。

ヨルがちょっと悲しい目をしている。


「…………」


俺、ヨルに監視されてた?

多分ブレザーで誰にも見られてはいないだろうけど、全身に鳥肌が立っている。


今はただ、彼女の血のように赤い眼が怖くて怖くて仕方なかった……。


「本気で秀頼君の体調悪そうだけど……」

「気にすんな。大丈夫だよ」

「……わかった」


絵美が心配そうな眼を向ける。

大丈夫。

すぐに体調も戻るはずだ。


すぐに授業が始まるチャイムが鳴り、慌てて席に戻るのであった。


「…………」


最近悩みが尽きない。

原作のこと。

三島のこと。

絵美のこと。

円のこと。

永遠ちゃんのこと。

ヨルのこと。

明智秀頼のこと。


優先順位がわからない。


三島のことを解決しても、『月と鈴』シナリオではタケルの精神か、もしくは命が失われる可能性もある。


あー、ちょっとこの世界、目まぐるしい変化が起きすぎる……。

俺の休まる日がこなくて、過労死しそうであった……。










秀頼はガチでセカンドのヒロインである詠美に会いたくありません。


詠美の名前自体は

第6章 偽りの少女編

第102部分 5、明智秀頼は覚えてない


ここで名前だけ登場してます。

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