3、明智秀頼のスマホが鳴り止まない

「うー、理沙ちゃんか……。理沙ちゃんならまぁ……」


絵美がぶつぶつと呟きながら頭を抱えていた。

どうしたんだ?

恋の悩みか?


「なんで秀頼君は断らない性格なんですか!?」

「あっ、ちょっと待って!咲夜からラインきた」

「え?」


咲夜から『おい、秀頼!』『タケルの誕プレ買い行くぞ』とラインがきた。

『今から行くけど来る?』『駅前に』『昼抜いてこいよ』と返信を打つと秒で『いくぅ!』と書かれたコーヒーを片手にした可愛いクマのスタンプがきた。


「咲夜も来るって」

「来るってというか、狂ってる……。おかしい、なんで毎回邪魔ばかり……。わたしが最初に約束したのに……」

「あっ、円から連絡きた」

「え!?」


『和が十文字君の誕生日プレゼント買おうと提案しました』『暇なら2人で明智君と合流します』そっけない2つのメッセージを受信した。

『今から駅前行く。昼抜きできて』と俺もそっけなく返すと『OK』と2文字の返信がきた。

性格が出る。


「津軽姉妹も来るって」

「な、な、な……?」

「しかし、今日はみんな暇してるんだな」


永遠ちゃんも誘ってきそうな気がする。

まぁ、そんな偶然あり得ないか。


しかし、ギャルゲー主人公モテモテ過ぎる。

あんまり会話してるのを見たことない咲夜や円まで誕生日プレゼントを送るとか……。

ひぇ……、修羅場かよ。

外野は影ながら見守ってます。

タケルのリアルギャルゲーとか、うはっ、モニターの外から誰攻略するか楽しませていただきます。


「秀頼君!せめて人数制限とか作るべきですよ!3人までとか……」

「あっ、エイエンちゃんから通話きた」

「…………」


しかし、ブルブル鳴るスマホだ。

みんな使いこなすね。

もう、俺の中身おっさんだから使うの億劫なんだけど、周りはみんな若い。


「もしもし?エイエンちゃん?」

『こんにちは秀頼さん。実は十文字さんの誕生日プレゼントを買いに行こうと思ってて、今日暇ですか?』

「ナイスタイミングだね。昼から駅前に行くよ。昼食は食べないで行くから待ち合わせしよ」

『わかりました!ふふっ、同じタイミングなんて私たち気が合いますね』

「そうだね、じゃあまた後でね」

『わかりました』


嬉しそうな永遠ちゃんだった。

普通に偶然って起こるな。

あっ、スマホの通話切ったら円から追加のラインが入っていた。

『和から』『星子ちゃんも来るって』『以上』と短文3つを受信した。


「エイエンちゃんに星子も来るって。ちょっと人数多いかな?」

「ちょっとじゃないでしょ!?異常でしょ!?十文字君の誕生日プレゼントを何人で買い物する気ですか!?」

「みんな、暇してたんだな。受験組も息抜きの時間でしょ」

「んな呑気な……」

「あっ、山本から電話きた」

「は?なんで山本君……?」


まさか山本グループ全員でタケルの誕生日プレゼントとか言わないよな?

まさか、ないない。


「もしもし?山本?どうした?」

『おい、明智!急ぎ!急ぎの用事だ!』

「何々?」

『いまな西山らと盛り上がってたんだが、スターチャイルドって黄色と黒のどっちのパンツ履いてると思う?』

「黒」

『だよなー!ほら、黄色とかいうお前らがおかしいんだよ!これで、2対2だな』

「切って良いか?」

『サンキューな』


タケルの誕プレに全然関係ない通話だった。

妹のパンツの色で盛り上がるのはやめて欲しい。

あと別にスタチャは金髪と黒髪メッシュにしているだけでパンツの色のチョイスは2色ではないと思う。

ピンクとか白とか水色とかボーダー柄もあると思う。

妹のパンツの色考察とかしたくないけど。


「山本君たちはなんて?」

「スタチャのパンツの色は何色履いてるイメージ?って聞いてきた」

「秀頼君は妹のパンツのイメージは黒なんだ、へー」


死んだ魚のような目をしている絵美の顔が怖い。

嘘付いても大体ばれるので真実を語ったのに、それでそんな顔をされるならもはやどうしようもない。


「とりあえず行くか?」

「はぁ……。2人のデートプラン作ってたのに……」


絵美がため息を吐いた。

よほど妹のパンツの色考察に呆れたのかが伝わってくる。

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