4、佐々木絵美はからかう

誕生日。

それは、誰もが生を受けた特別な日。

そんな側面もある。


前世の俺は7月7日生まれ。

ゲームのビジュアルファンブックを読みながらなんで明智秀頼と同じ誕生日なんだと怒りも覚えたが、明智秀頼として生きている今、むしろ7月7日で良かったとすら思う。

違う日が誕生日だったら多分思い入れがなかった。


こんなに長々と誕生日を語ったのは、当然意味があり、親に子が宿り生まれるまで10ヶ月ほどのタイムスパンがあるのは保険・体育の授業で学んだ。


これを計算すれば、大体親がいつくらいにやったのかがわかると前世に男子らと盛り上がったのを思い出す。

自分の親は4月頃にやったのかなとか、9月中旬生まれの人は親はクリスマスにやったんだなとか計算できる。


これを知ると、誕生日を知られるのは、親がやった日を逆算されると痛感されて実は素直に祝えない自分がいた。


心が穢れた高校生活だったと思う。


「ほら行きますよ秀頼君」


あぁ、タケルと理沙の誕生日の近さをよくよく考えると親はスゲー元気だったんだなとか思う自分が憎い……。

いっそ、双子設定にしとけよとゲームメーカーのスカイブルーに突っ込まざるを得ない。

誰だよ、この設定にしたの……。


「まったく……、なんで駅前に集合してみんなに会わないといけないんですか……」


ずっと絵美は不機嫌なのを隠さなかった。

よっぽどタケルの誕生日プレゼントを送るライバルの多さに辟易しているんだろうな。


「秀頼君」

「は、はいっ!なんでしょうか絵美さん!」


機嫌が悪い絵美には下手に出るほうが良い。

言い返すと大体負ける。


「腕、貸して」

「…………」


めっちゃおこな態度を崩さない絵美が怖い……。

『悲しみの連鎖を断ち切り』のペコペコ秀頼の命令を聞いていた絵美はもはや消えている。

むしろ立場が逆転している。


「……はい、どうぞ」


関節技極められるかな……?

噛み付かれるかな……?

絵美の挙動1つ1つに心がブルブル震える。


「へへっ、ありがと」


絵美が急に機嫌が良くなり腕を組んできた。

近い絵美の距離感に心がドキドキする。

うわっ……、これやばっ……。

恋人みたいじゃん……。


「何、赤くなってるんですかぁ?にやにや」

「う、うるせーよ……。わざとらしく『にやにや』って口にするな……」

「突っ込みにキレがないなぁ?そんなの秀頼君らしくないですよ?にやにや」

「その『にやにや』言うのやめろ!」

「苦し紛れの突っ込みですねぇ。にやにや」

「あー、お前!それやめろ!」


予想以上に『にやにや』言われるのが恥ずかしい……。


「まるで?まるで?何みたい?にやにや」

「くっ……」


絶対恋人みたいに思ったとか言わねぇ!

なんか絵美にムカついた。

ひねくれた一言をお見舞いしてやる。

とは考えたものの、俺にそんなユニークなトークスキルはない。


「それで?秀頼君は、何を想像しましたか?にやにや」

「……」

「ねぇ?にやにや」

「……」

「なんか言ってくださいよ?にやにや」

「…………嬢から風呂に案内されるみたい」

「じょ……!?」

「待って!なし!これはやめて!」


恋人の次は何に思ったのか考えたら叔父さんが見ていた沢村ヤマのDVDの内容が頭に浮かんだ。

違う、これは最低な例えだ……。


「……そっか」

「ちがっ……」

「今から……、やる?」

「目を覚ましてくれーっ!?頭ピンクいろぉぉぉぉ!俺が悪かったぁぁぁぁ!」


100回くらい謝った、……気がする。


「……そ、そんな風にわたしを見てたんですね」

「……お前も顔赤いぞ。にやにや」

「っ!?卑怯ですよぉぉぉ!」


1回やり返してやった。


「…………」

「…………」


お互い恥ずかしくなって、無言で駅に行くことになる。


「……腕組みやめる?」

「……ずっとしてる」


ずっと緊張して、心臓がバクバク鳴っても腕組みはやめなかった。

ただ、気まずさだけはずっと残っていた……。





ラブコメジャンルなのに、今までイチャイチャが無さすぎたんだと気付きました……。

現レギュラー陣で1番性欲が強いのは絵美(秀頼に対してのみ)。

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