31、偽りのアイドルの崩壊する日常

「は……?」


『明智秀頼』死亡のニュースが流れる。

それ自体は特に悲しみはなかった。


だって、私にお兄ちゃんなんかいないから。

ショックでもなんでもない。

ただ、よく知らない身内が死んだくらいの出来事。





『明智秀頼は、ギフトを使用し人の恐喝、強制猥褻、殺人を幾度もなく繰り返した現代の悪魔。罪が多過ぎて把握仕切れない』と報道され、世間では酷い炎上騒ぎだった。


『人の意思を曲げて命令を下す』ギフトの力だったというニュースは世間にとっては恐怖の対象でしかない。


ギフト廃止を呼び掛ける声が一気に高まる。

しかし、ギフトの覚醒はランダムなので防ぎようがない。

気がつけば拳銃を握っていたという状況が、ギフトの覚醒だ。


ギフトを所持していない人にとって、ギフトの存在は害悪だった。






















そして、最悪は起こる。


『明智秀頼とスターチャイルドは実の兄妹だった!?』


誰かが突き止めたのか、私の情報がリークされる。


『しかも2人の父親は3人の人間を殺害した1番最初のギフトによる殺人の加害者。最低な悪魔の一家明智家。しかも、国は明智秀吉の存在を隠蔽していた』と、続々と私の血塗られた家族の情報が公開される。


スターチャイルドは無期限の活動停止を余儀なくされる。

実質引退である。


あんなに応援をしてくれたファンの手のひら返しも異常に早い。


『悪魔のクソアイドル』

『俺が貢いだ金を返せ』

『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね』

『殺人一家の娘、生きてて恥ずかしくないの?』

『お前の親、人殺ししておいてどんな神経でテレビに出演してたんだ?』

『キモいぶりっ子。ずっと嫌いでしたw』

『人殺しの子供も人殺しなんですね』


SNSもファンレターも非難する声ばかりで、もう応援のコメントは1つもなかった。











ある日学校へ通うと頭に卵を投げつけられる。


「あいつ、ギフト使って俺たちを騙してやがった!明智秀頼の妹のスターチャイルドだ!」


クラスメートが非難の声を上げる。


「細川星子の正体はスターチャイルド!細川星子の正体は明智秀頼の妹だっ!」


どこからが情報が漏れたのか、教室では一気に私への言葉責めが始まった。


「最低!」

「死ねよクズ!」

「兄貴と親父の罪を償えよブス女っ!」

「目付きが人殺しの目付きしてる」

「俺の兄貴、明智秀頼の被害者だぞ!兄貴はそのせいで廃人になったんだっ!ほら慰謝料出せよ!稼いでんだろアイドルっ!」

「おら、殺すか?お前も人殺すのか?」

「人殺しの親と兄に顔似すぎwww」


逃げ出した。

違う、私はなにもしてない……!

こんな簡単に非難してくるお前らの方が悪魔だっ!


もう嫌だ、助けて!

助けて!?

お兄ちゃん、助けてよ!


「おい、細川」

「っ!?……あ、先生……」


先生に呼び止められる。

普段は優しく温厚な先生だ。

先生、みんなして私を虐めてくるんです。







「お前ゴミだな、ギフト使って偽りのアイドル演じて楽しかったか?僕が情報を全国に広めてやったからな」

「…………え?」

「明智には僕もうんざりしててさ。兄貴がゴミだと妹も大変だな。ほら、明智の恨み全部妹のお前が肩代わりしろよ」

「っ!?」


友達も先生も全員が敵になった。

学校中がお祭り騒ぎになった。

急いで昇降口玄関に行くも、朝に履いていた靴が消えていた。


「……なんで!?……なにが悪いの!?」


私は内履きのまま家に走る。

違う、こんなの学校じゃない!

悪夢だっ!


違う、これは夢だ。






「なぁ、星子ちゃん!待ってくれ!?」

「っ!?」


男子生徒が私の前に立っている。

どうせまた非難される。

私は下を向いて走る。


「俺は十文字タケル!お前の兄ちゃんの親友なんだ……。秀頼を止められなくて悪かった……。ガキの時から一緒にあいつといたのに……、俺……あいつの親友なのになんにも知らなくて……本当にごめん……」


どうせまたお前も手のひら返しをしてくるのはわかってる。

そのまま男子生徒を横切った。

























「絶対に、……絶対に悲しみの連鎖を断ち切るから!何年かかるかわからないけど、俺が悲しみを終わらせるから!

だから生きてくれっ!秀頼を苦しめた男が何言ってんだって感じだけど……絶対に死なないでくれっ!

必ず、星子ちゃん、君を助けるからっ!」


何を言っているのか全然わからない。

遠くへ離れている彼は本当に明智秀頼の親友だったのかもしれない。


でも、何年もかかるようじゃ遅い。

今すぐにこの悲しみを終わらせて欲しいよ……。


















「ごめん……。本当にごめん…………。秀頼の暴走を止められなくて……。ごめんな……星子ちゃん……

…………秀頼、……なんでお前はたった1人の妹を苦しめてんだよ……。めっちゃ可愛い妹がいるんじゃねぇか……

スターチャイルドって、うっそだろお前……

秀頼……、絶対星子ちゃんを助けるからな……」










第4章 変人親子の喫茶店

4、ギフトへの憧れ


マスターにより『ギフト所有者の犯罪とかかなり罪重いんだよ』と語られている通り、ギフト絡みの犯罪は重罪です。


少年法は適応されません。

幼稚園児でもギフト所持者で万引きを犯したら顔写真付きで報道されます。

※ギフトの使用の有無に限らず。

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