43、明智秀頼は嫌われ者を自覚する
3日ほど、絵美と会話ができない状態になり、『お互いあの日の出来事はなかったことにしましょう』という絵美の提案を飲んだ。
よっぽどあの日の出来事は彼女に酷いトラウマになってしまったようであった……。
「タケル……、褒めるってヤバイ……」
「は?」
タケルにも忠告をしておいたが、全然理解ができていないみたいだった。
あの黒歴史を伝えようとも考えたが、絵美とはなかったことという約束だし、俺のキモイ奇行を伝える必要もあるので封印しておき、悶々とした日々を送ることになる。
「理沙ちゃん……、褒められるってヤバイ……」
「は?」
絵美は俺と会話をしようとはせずに、理沙と付きっ切りになっている。
嫌われた代償が凄く悲しい……。
こんなに絵美と会話がない日々を送るのははじめてのことであった。
―――――
「み、水着買いですよー!」
「……はい」
「絵美のテンション低ッ!?やっぱり私にこういうの無理ですよ」
永遠ちゃんがテンションの低い絵美に変わって取り仕切っていた。
確かに絵美がこういうのをしているイメージだったので、永遠ちゃんが仕切るのは新鮮だ。
「ウチもやる!水着買いだー!」
「……うん」
「絵美のテンション低い……。せっかくウチ頑張ったのに……」
そして咲夜も撃沈した。
「ここはやはり円にさせるべきだ」
「絶対にやらない」
津軽は咲夜の提案を呪うような顔で拒否反応を示す。
1番大人しい津軽に振るのがそもそも間違いである。
「じゃあ理沙が……」
「というか、もう私が頑張ったんだから良いでしょ!?進行しよう!?」
「そもそもあの号令必要あるの……?」
さり気なく永遠ちゃんの頑張りが消えそうになっていた……。
というわけで、デパートへいつものメンバーで買い物に来ていた。
「秀頼……」
「どうしたタケル?」
「理沙のことを知り尽くしている俺が理沙の水着を選ぶ権利があると思わないか?」
「本人に確認してください」
しょうもない悩みをしているタケルへ至極当然なアドバイスを送る。
当日はマスターもプールへ来るらしいが、当然今日は店があるので俺とタケルでマスターの水着も決めろとお金を預かっている。
そして、全員が集まったのでデパートで各自の水着選びが始まったのである。
「見ろ、円!タンキニタイプがあるぞ」
「へー、そんな種類があるのね」
「……おい、驚きがないぞ」
「言わせたいだけでしょ?」
最近凄く津軽と咲夜が仲良くなっているようで2人で会話をしているシーンを目撃する。
不発だったけど、横文字NGなんですよこの子……。
「あっ、見て兄さん」
「どうした理沙?」
「これと似た水着3年前もトレンドだったよね」
「そう……だったか?」
十文字兄妹の水着選びのシーンを目撃する。
というかそれ気にする?って心の中で理沙に突っ込んでおく。
「この水着可愛いいいいいいいいいいいいい」
「良いですね!ふふっ、絵美って可愛いよね」
目をキラキラしている絵美と永遠ちゃんのガールズトークを目撃する。
こないだベッドでさなっていた俺みたいな絵美の姿を目撃する。
なんなんだ、さっきから汎用的な会話しか聞こえてこないぞ……?
「……マスターにはこれでいっか」
……メンバーが奇数だからボッチにされている俺。
嫌われているのが伝わってきて悲しくなってきた。
誰も明智秀頼と会話なんかしたくないよね……。
咲夜と津軽のサバサバした会話。
タケルと理沙の本気の水着選びの会話。
絵美と永遠ちゃんの笑い声。
それらが聞こえてくる店内で1人寂しく自分とマスターの水着を10分程度で決めて水着売り場から離れた。
ボッチに耐えられなかった……。
どうせ女の衣装選びだ。あと甘く見積もっても30分から1時間以上は水着売り場から離れないだろう。
この場所から離れて自由に探索をする。
「とりあえず、スターチャイルドに送る便箋を準備して……、あと雑誌の立ち読みして……」
この時間を有効活用して、するべきことを考えておく。
雑貨コーナーで便箋を購入して、次に本屋へと向かう。
「この店の雑誌読めないパターンか……」
お目当ての雑誌が紐で結ばれており、立ち読みを禁止にしていた。
時計を見ると、ほとんど時間が進んでいない。
まだまだ水着選びに時間が掛かりそう。
「このデパートのすぐ近くのコンビニ寄るか……」
2ヶ月ほど前に立ち読みをした記憶もあるので読める保証付きだ。
ついでに切手も買えば一石二鳥だ。
早速コンビニまで走って行こうとデパートを抜け出す。
―――――
20分後、ホクホクした気分でコンビニを抜け出す。
まさか宇宙最強がシスコンだったとは意外だったマンガの展開にニヤニヤが止まらなかった。
早く来月号が出ないかと楽しみにしながらデパートに向かう。
ちょうど良い時間帯だし、そろそろ昼飯時だし水着決めも終わっていることだろう。
ルンルン気分で早歩きをしていた時だった。
『ひったくり!』、『捕まえてくれっ!』後ろからそんな声が聞こえてくる。
「え?」
振り向くと、怪しい男が大きな箱を持って俺がいる方向に向かって逃走をしているところだった。
とりあえず危ないので、避けようと動こうとしたらひったくりの男が「どけっ!ガキっ!」と暴言を吐いてきた。
わざわざ避けようとしたのにガキ呼ばわりされてカッチーンときた。
気分が変わった。
「おりゃっ!」
「!?」
男の脚を払うように、自分の足を低い態勢になりなぎ払う。
見事に男は態勢を崩し地面に倒れる。
あ……、ギフト使えば良かったわ……。
男が倒れてから自分のギフトの存在を思い出す。
全然ギフトを使う機会がないので、結構抜け落ちる。
ギフト所持者のくせに、生活のほとんどは未所持者と同じなのがなんかおかしい気がする。
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