第5章 鳥籠の少女
1、中学生はじめます
早いもので、小学生の6年はあっという間だ。
俺の前世では長く感じた6年だが、心は約30歳。
6年なんか光陰矢の如しだ。
しかし、あと3年で本編開始。
ただ、原作に纏わるエピソードが無さすぎて津軽円とも若干疎遠になりつつある。
絵美とはギャーギャー言い合える友達で、それを仲介する理沙という構図なので、原作キャラトリオが完成されてある。
「次こそ、次こそ、わたしは秀頼君と同じクラスが良いよっ!」
「いや、秀頼は俺と同じクラスだ」
「兄さんはずっと同じクラスじゃないですか……。私、1回も明智君と同じクラスになったことないんですよ!」
誰が俺と同じクラスになるのかで言い争う3人。
好きにしてくれって感じだ。
ほぼ毎日会っているのになんでそんなに同じクラスが良いのか……。
「明智君。気を引き締めてください。中学からは原作キャラが増える可能性が高いんですからね!」
「わかってるけどー…………、なんで津軽もいるの?」
疎遠になっていて、彼女が近くにいるだけで居心地が悪くなる存在。
肩身が狭くなる。
「同じ学校だからです」
「もっともだな……。そういえば部活とか入るか?」
「原作を壊す役割を持ちながら部活なんかするわけないじゃないですか……。明智君も部活禁止です」
「え?ダメなん?」
唐突に部活禁止を言い渡された。
「部活する気だったんですか!?何を呑気な!何部に入るつもりだったんです!?」
「いやー、だって強制的に部活に入れって可能性とかあるっしょ!剣道でもしようかなと」
「え?剣道……?」
「ん?何その反応……?」
津軽が固まって俺を見るも一瞬、すぐに動き始める。
「中々良い趣味してます。でも明智君は剣道弱そうです。部活入るの強制ならあんまり時間の拘束がないのにするべきです」
「剣道弱そうって……、酷い……」
唯一の取り柄を否定された気分だ……。
秀頼に生まれ変わり竹刀を握ったことはないが、そこそこ動けるとは思う。
身体も鍛えてはいるし。
「そもそも秀頼君が剣道してるの見たことないよ」
「そうです、そうです。格好付けないでください」
絵美も会話に混ざって、剣道批判をしてくる。
つまらない、別に剣道への道は諦めているから本気で打ち込むつもりはないが……。
「秀頼君は、マジック部とか良いんじゃないですか?」
「明智君がマジック部?もっとイメージできないわ……。関係ないけど急に『マジック部』とかいう単語が出て驚いたわ」
「じゃあ横文字NGだね」
津軽に突っ込みを入れつつどんな部活にしようかとか、参加しないことを選ぶべきかと色々考えてみる。
「ぶーっ、秀頼君は手品得意なんだよ!秀頼君がマジック部に入ったらわたしも入部する」
「え?明智君、手品得意なの……?」
「天才です!」
「ハードルを上げるなお前は!絵美のハードルは高過ぎるんだよ!」
「それくらい格好良いんだもん!」
まるで絵美を自分がそう思ったならそう、イエスを強要させる暴君に見えてきた。
「はいはい、イチャイチャ」って感じで津軽は白けていた。
「でも、良い趣味してますね。明智君が手品してるとかミジンコ並みの評価がハムスターレベルにランクアップしました」
「褒めてるのかそれは……?」
「褒めてます。ハムスターは可愛いですから」
本気なのかどうかはわからないが、普段の顔でそんなことを言うから判断が付かない。
なんか俺にトゲがあるんだよな……。
「わたしはもっと秀頼君の魅力を色んな人に知ってもらいたいです。『わたしの秀頼君はこんなに凄い人だっ!』って自慢したいです。だからハードルを上げます」
「余計なお世話過ぎる……」
「でも、自分の好きな人が色んな人に魅力を伝わって欲しい絵美の気持ちわかるな」
「恋愛アンチな円からもそんなことを聞けるとは……」
「恋愛アンチではないもん。好きな人がもうずっと存在しているから同年代の男子とか興味ないだけ。明智君とか十文字君含め論外です」
3年の付き合いのある2人はいつの間にか名前で呼びあう仲へ変わっていた。
原作の流れとたまたま一緒なのか、男子に興味がない津軽円というキャラクターの個性が出てきてゲームの強制力の強さを再認識する。
「円の理想ってどんな人?」
「剣道が強くて、手品が上手な人。挫折しても立ち上がって前向きになれる様な芯が強い人。私だけが意識していると思ってたらお互いが意識していて、私が倒れた時も優しく直行で保健室に駆け込んでくれる人!」
「理想細かすぎない?」
「普通、保健室よりも病院に駆け込まない?」
俺と絵美から総突っ込みされる津軽の理想の人。
どんな奴だ、と脳内でも突っ込んでおく。
「あー、もう!変な突っ込みを入れないで!」
「妄想シチュエーションが細かい」
「うるさいなー!関係ないけど急に『妄想シチュエーション』とかいう単語が出て驚いたわ」
「じゃあ横文字NGだね」
「なんで秀頼君は毎回その突っ込みなの?」
「癖で……」
前世で来栖さんに突っ込みを入れていた時とシチュエーションが似ていて、つい同じ返しをしてしまう。
「秀頼ってモテるよなー」
「モテてるんですかねあれ……」
兄妹は兄妹で仲が良さそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます