リリスよ我の元に返れ


 リリスはキスキル=リラに守られ四万年を過ごしていた。

 脱出艇は不時着で動かなくなったが、幸いなことにその外郭は巨大な爬虫類の攻撃にもびくともしない。

 さらに太陽光発電装置のおかげで、最低限のエネルギーを確保していたようです。


 時々キスキル=リラが外に出て、片手ですが巨大な爬虫類を倒して、食料などを確保していたのです。

 二人はアンドロイドで太陽光発電装置のエネルギーで行動できるのですが、いざとなれば生のタンパク質をとりこむこともできるようです。


 今日もキスキル=リラが狩ってきた爬虫類をさばいて、ステーキなんて食べています。

「悪いわね、私がこんな体で貴女に迷惑ばかりかけて……それに希望もないし……」


 リリスさんは首だけとなっていましたが、触手機構が一つだけ残っていて、なんとか這いずって動けるようです。

 それで食事もできるようなのです。


「なにをおっしゃいますか、帰還はもう無理でしょうが、動けなくなるまでお仕えします」

「私はリリス様が壊れられたらその場で自壊します」

「なら私も貴方が壊れたら自壊するわ」


「暗い話をしても仕方ないですよ、せっかくのステーキです、食べましょうよ♪味付けは塩しかありませんが」

「塩で十分よ♪この塩、手に入ってよかったわ♪」

「そうですね、不時着地が塩湖のど真ん中なのは幸いでした、この船の船体は塩分で錆などしませんし、水も塩水を蒸留すれば良い話ですし♪」


「あらあら、仲のいいカップルだこと、少々焼けるわね♪」

 なんと、イザナミさんが転移してきたのです。


「ああ、キスキル=リラ、いよいよ私も最後のようね、イザナミ様の幻が見えるしお声も聞こえるわ……」

「わたくしも……」


「何を言っているの!本物よ、リリス、キスキル=リラ、戦没したと思っていたのよ、でも手がかりを掴んで探したのよ」

「アルダト・リリーもイドル・リリーもなんとか復活させたわ、今では有機体アンドロイドよ♪」


「有機体アンドロイド?」

「いまでは我らの主、ヴァルナ評議会議長のミコ様の御許可を得て、アスラ族の機械生命体、アンドロイドは人種化が認められている」


「リリス、キスキル=リラとカップルになってもいいわよ♪」

「事実、貴方も知っているアナトとラシャプは公認カップルよ♪」


「とにかくここを出ましょう、転移するわよ、マレーネ様、お願いします♪」


 アルダト・リリーは転移してきた二人を見て泣いています。

 イドル・リリーも嗚咽していました。


「二人を見て、元のままでしょう♪アルダトは記憶領域だけになっていたし、イドルは完全に機能を停止していたのよ、でも四万年の時が科学技術を進歩させて、なんとか復活させることができたのよ♪」


 二人のボディをマレーネさんが作り上げます。

 そして二人の人工知能を取り出して、カプセルへ……


 眩しい光の中から、有機体になった二人は復活したのです。


「リリス、キスキル=リラ、お帰りなさい、私のもとへよく帰ってくれました……」


 イザナミさん、涙が止まらないようです。 

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