リリスよ我の元に返れ
リリスさんはキスキル=リラさんに守られ、四万年を過ごしていました。
脱出艇は不時着で動かなくなりましたが、幸いなことにその外郭は巨大な爬虫類の攻撃にもびくともしません。
さらに太陽光発電装置のおかげで、最低限のエネルギーを確保していたようです。
時々キスキルさんが外に出て、片手ですが巨大な爬虫類を倒して、食料などを確保していたのです。
二人はアンドロイドで太陽光発電装置のエネルギーで行動できるのですが、いざとなれば生のタンパク質をとりこむこともできるようです。
今日もキスキルさんが狩ってきた爬虫類をさばいて、ステーキなんて食べています。
リリスさんが、
「悪いわね、私がこんな体で貴女に迷惑ばかりかけて……それに希望もないし……」
リリスさんは首だけとなっていましたが、触手機構が一つだけ残っていて、なんとか這いずって動けるようです。
それで食事もできるようなのです。
キスキルさんが、
「なにをおっしゃいますか、帰還はもう無理でしょうが、動けなくなるまでお仕えします」
「私はリリス様が壊れられたらその場で自壊します」
「なら私も貴方が壊れたら自壊するわ」とリリスさん。
キスキルさんが、
「暗い話をしても仕方ないですよ、せっかくのステーキです、食べましょうよ♪味付けは塩しかありませんが」
「塩で十分よ♪この塩、手に入ってよかったわ♪」とリリスさん。
キスキルさんが、
「そうですね、不時着地が塩湖のど真ん中なのは幸いでした、この船の船体は塩分で錆などしませんし、水も塩水を蒸留すれば良い話ですし♪」
「あらあら、仲のいいカップルだこと、少々焼けるわね♪」
なんと、イザナミさんが転移してきたのです。
リリスさんが、
「ああ、キスキル=リラ、いよいよ私も最後のようね、イザナミ様の幻が見えるしお声も聞こえるわ……」
「わたくしも……」とキスキルさん。
イザナミさんが、
「何を言っているの!本物よ、リリス、キスキル、戦没したと思っていたのよ、でも手がかりを掴んで探したのよ」
「アルダトもイドルもなんとか復活させたわ、今では有機体アンドロイドよ♪」
「有機体アンドロイド?」とリリスさん。
イザナミさんが、
「いまでは我らの主、ヴァルナ評議会議長のミコ様の御許可を得て、アスラ族の機械生命体、アンドロイドは人種化が認められているの」
「リリス、キスキルとカップルになってもいいわよ♪」
「事実、貴方も知っているアナトとラシャプは公認カップルよ♪」
「とにかくここを出ましょう、転移するわよ、マレーネ様、お願いします♪」
アルダトさんは転移してきた二人を見て泣いています。
イドルさんも嗚咽していました。
イザナミさんは、
「二人を見て、元のままでしょう♪アルダトは記憶領域だけになっていたし、イドルは完全に機能を停止していたのよ、でも四万年の時が科学技術を進歩させて、なんとか復活させることができたのよ♪」
二人のボディをマレーネさんが作り上げます。
そして二人の人工知能を取り出して、カプセルへ……
眩しい光の中から、有機体になった二人は復活したのです。
「リリス、キスキル、お帰りなさい、私のもとへよく帰ってくれました……」
イザナミさん、涙が止まらないようです。
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