古代の戦闘艇の残骸


 三日目、三軍統合司令部からの想定座標をとうに越え、先遣部隊のヘルメスジュニアで広域探知しながら、膨大な数の知的生命体を観測記録、未踏査領域宇宙を調査している『ナアマ』号。


 四日目も何事もなく、ついに五日目……


「先遣部隊のヘルメスジュニアが、戦闘艇の残骸を発見したそうです!」

「現在戦闘態勢で回収に向かうそうです!」


「本体がつくまで回収を見合わせろ!防衛戦隊を集中して警戒を密にし、現領域にとどまれ!」

「すぐに先遣部隊と合流する!ワームポイントステーションに待機中の防衛戦隊の半分をこちらに合流させよ!」


 先遣部隊の確保した領域に、グレモリイさんの戦力が集結を始めます。


 十五個の直衛防衛戦隊に待機していた防衛戦隊の半分、十個戦隊……


 結合ミリタリーヤード二十五隻、コンテナ百五十隻……


「大規模拡張結合シェルターステーションに戻る、その間全防衛戦隊は戦闘態勢で警戒せよ!」


「ガエネロン副長、臆病と笑ってくれても良いが嫌な予感がする、回収は第一防衛戦隊に任せる」


 第一防衛戦隊が戦闘艇の残骸に近づき、その映像が送られてきました……


「これは……この映像を最優先で三軍統合司令部と、ヨミ最高司令官に転送せよ!我れ、四万年前の女性体戦闘艇の残骸を発見との電文をそえて!」


 その戦闘艇の残骸とは、四万年前あたりの古い女性体の戦闘艇だったのです……


「友軍の物である、慎重に回収せよ、友軍の物なら人工知能が生きているかもしれん、古代の女性体の暗号で呼びかけてみよ」


「我、アスラ族女性体所属艦艇、ただいまより回収する」


 すると……


 ……私はアルダト・リリー……危険……危険……浮遊機雷が目覚める……キ……ケ……ン……


「最大出力でバリアを展開せよ!」

 ガエネロン副長が即座に命令を発し、第一防衛戦隊旗艦の統合ミリタリーヤードの戦闘コンピューターが、瞬時に最大出力でバリアを展開しました。

 バリアは味方の戦闘艇残骸も覆っています。


 直後にバリアに衝撃が走りました。

 

「バリアに大質量エネルギーが連続で直撃しています!」

「大丈夫か!」

「バリアは無傷です!当方のエネルギーがうわまっています!」


「陽子崩壊領域設定バリアで反撃せよ!あたりのものは全て崩壊させよ!」


 バリアの周りの空間にある物質が崩壊していき、エネルギーとして回収されたのです。


「戦闘終了、艦隊に復帰します」


「浮遊機雷?今のはなんなのだ?」

 ガエネロン副長が、

「多分ですが、大質量物質で出来た物をぶつけたのでしょう、中性子星のかけらと思いましたが、それほどの質量でもありませんでした、白色矮星のかけらでしょう」

「ようは重い球をぶつけられた、というわけだな?」


「そうです、かなり原始的な物ですが効果的でしょうね、それに大きさも十メートルぐらいでしたし」

「浮遊機雷とかいっておりましたが、あの戦闘艇の残骸に近づくものを撃破するために、休眠状態で周囲に設置されていたものが起動、攻撃してきたのでしょう」


「しかし、あれで当方の戦闘艦の外殻を打ち破れるのか?」

「十メートルクラスでも、さすがに中性子星クラスなら防衛戦隊の外殻装甲では無理ですが……そうですね、白色矮星クラスですから二三発、ピンポイントにぶつけられれば穴が空くかと思われます」

  

「脅威といえば脅威なのだな」

「そうなりますが……シェルターステーションクラスの外殻装甲なら、あの大きさの中性子星クラスを二三発、ピンポイントにぶつけられても破壊できません」


「もっとも、百メートルぐらいの中性子星クラスならさすがに外殻装甲も大穴があきます、今後の課題でしょう、これも三軍統合司令部に報告した方がいいと思われます」

「わかった、報告しておく」


 回収された戦闘艇の計器板の奥に小さな記憶領域があり、これが生きていたようです。

 冬眠状態?で味方の通信を受信したとき、目覚めるようにセットされていたようです。

 パイロットは最後の時に、自らの人工知能を全てこの保存用の記憶領域に転送したようなのです。

 

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