幻の女たちⅢ 地獄の貴婦人たち 【ノーマル版】

ミスター愛妻

幻の女たちⅢ 地獄の貴婦人たち 【ノーマル版】

第一章 グレモリイの物語 試験航海

『公爵夫人の宝冠』号の凱旋


 ヨミ一番の美女と呼ばれるグレモリイは、二十六の軍団を率いてある宇宙で虫を相手に奮戦した。

 何とか武勲をあげニライカナイに凱旋、部下は休暇がもらえたが、グレモリイには『お願い』という命令が下った。

 その『お願い』とは、戦闘用大規模拡張シェルターステーションの試験航海に立ち会うというものだったが、有機体はグレモリイだけ。

 試験という名の戦闘航海の途中、グレモリイはその昔の仲間に出会うことになり、局地紛争に巻き込まれてしまう。


     * * * * *


 ヨミ一番の美女と呼ばれるグレモリイは、二十六の軍団を率いてある宇宙で虫を相手に奮戦した。

 

 宇宙海防戦艦スキーズブラズニル改級六隻で正八面体を構成、中央にミニ・インフェニティ・カーゴを配した、艦隊旗艦である『公爵夫人の宝冠』号は被弾。

 スキーズブラズニル改級が二隻大破、その上にミニ・インフェニティ・カーゴが破壊されたのです。


 急遽、被弾した二隻の内、戦闘に堪えない一隻を切り離し、虫の艦隊中央に転移、ノヴァを命じて何とか危機を脱したのです。

 その後、何とか防御戦闘が出来る一隻を含む五隻で正四面体に再構成、応急修理されたミニ・インフェニティ・カーゴを中央にして、戦闘を継続したのです。


 ミニ・インフェニティ・カーゴは戦場では修復できませんでしたが、スキーズブラズニル改級ぐらいの大きさであるミニ・インフェニティ・カーゴに、ヴィーナスさんが作ったマイクロ・インフェニティ・カーゴが転移されたのです。

 ミニ・インフェニティ・カーゴには造船ドッグなどもあり、宇宙空間で戦闘艦艇を量産しながら、ここを使って小さい艦艇などもどしどし作れるのです。


 この造船ドッグは長さ一キロ、幅三百メートルの宇宙戦闘艦艇、ミリタリーヤードと呼ばれるものまでは量産できるのです。

 マイクロ・インフェニティ・カーゴは一キロ四方の立体で、造船ドッグに接続するように転移設置されたのです。


 この『ミリタリーヤード』を旗艦として、コンテナと呼ばれるもの六隻一セットで、小さい防衛戦隊が構成されます。

 ミリタリーヤードとコンテナは直列結合できます。


 コンテナの主兵装は反陽子ビーム砲を搭載したコンバットと呼ばれる無人戦闘艇と、ボンバーと呼ばれる中性子過剰核誘導弾、虫相手なら十分にやりあえる兵器です。

 またミリタリーヤードは、陽子崩壊領域設定バリアも搭載しているのです。

 本来は拠点防衛用の宇宙戦闘艦艇ですので、防御バリアはかなりの物を搭載しています。


 急遽設置された、『公爵夫人の宝冠』号のマイクロ・インフェニティ・カーゴは、この防衛戦隊を無限に量産、なんとかこの後のラグナロク戦争を戦い抜いたのです。


 ラグナロク戦争が終わった時、『公爵夫人の宝冠』号の残った五隻の宇宙海防戦艦スキーズブラズニル改級は、一隻は補助動力だけが生きていてなんとか負傷者の治療船として機能しているだけ。


 もう一隻は防御兵器も含むすべての兵装が機能せず、しかも表層が穴だらけ、ただメイン動力は生きており、なんとか『公爵夫人の宝冠』号の戦闘にエネルギーを供給するだけ。

 完全なのは二隻だけで、後の一隻は防御バリアと補助動力だけが機能している状態でした。


 ミニ・インフェニティ・カーゴにあった造船ドッグも、あまりに酷使されドッグの半分が崩れ、『ミリタリーヤード』が製造できなくなり、最後の方はコンテナを量産していたようです。


 本来六隻分のメイン動力は三隻分となりましたが、マイクロ・インフェニティ・カーゴが持つマイクロブラックホールからのエネルギーが、『公爵夫人の宝冠』号の機動戦闘を可能にしていたのです。


 とにかく戦争が終わった時、『公爵夫人の宝冠』号は満身創痍の状態でニライカナイになんとか凱旋してきたわけです。


「グレモリイ、只今帰還いたしました!」


「ご苦労様、御覧の通りミリタリー号は被弾した船の修理で余裕がないの、修理は長くなるかもしれないわ」

「とにかく戦争も終わったので、貴女の艦隊乗組員はゆっくりと休暇を取ってください」


「メイド号でのんびりと保養してくれて構わないわ、とりあえず戦時の一時報奨金としてチケットが増額されています」


 ヨミの最高指導者、戦姫神、ダッチェスでもあるイザナミが答えました。

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