【14】第2話 : 捨て身の攻撃〈1〉

『ぐぅぅぅううう!!!!!!!』

 心臓の内側から、ハゲしく突き上げて来る。

『胸がける思い』とは、この事なのか!?

 俺の左手は電撃デンゲキを集中させる事で、スデにガントレット(手袋状の武具)に変形している。

 ボコボコと波打ナミウつ、鳩尾ミゾオチ辺りを、ガントレットの手でオオう。

 直後、そこからリヴァイアサンがき破って来た。

『サンダー・ボルト!!!』

 同時に、咆哮ホウコウする俺!

 指の隙間スキマをすり抜け、エガきながら戻って行く。

 もちろん、高圧電流をびたままだ。

『ウガガガガガガガガガガガガガガ!!!』

 伯爵は回収したリヴァイアサンから、電撃デンゲキらうと、背中からタオれ込んだ。

「やったか…!!!」

 俺が飲み込んだリヴァイアサンを、胸を突き破って回収する事は想定内だった。

 それユエアラカジめ自身の耳の経穴ケイケツ・『神門シンモン』に電撃デンゲキちこみ、胸部キョウブへの局部麻酔キョクブマスイホドコしておいたのだ。

 これにより、心臓をぶちかれても無痛で戦闘を続行出来る。

 直接攻撃を全て無効にしてしまうリヴァイアサンには、捨て身でイドむ、この方法しか無かった。

 加えて、少陰心経ショウインインケイ・『陰郄インゲキ』で心臓の入口である下大静脈カダイジョウミャクを、厥陰心包経ケツインシンポウケイ・『郄門ゲキモン』で出口である大動脈を、お互いの経穴ケイケツを使い閉鎖ヘイサしていた。

 つまり、心臓内の血流を止め、リヴァイアサンの心臓壁シンゾウヘキ破壊ハカイによる出血を、最小限にオサえていたのだ。

 しかし、いつまでも血液循環ケツエキジュンカンを、止めている訳にはいかない。

 脳は5分で障害を起こし、心臓は20分で壊死エシしてしまう。

 俺は元に戻った左手で、ぽっかりと開いた胸の噴射口フンシャコウ触診ショクシンした。

「ふぅ…。 冠状動脈カンジョウドウミャクが、ヤラレなくて、助かった!

 コイツが損傷ソンショウしていたら、命取りだったぜ…」

 息を一つき、安堵アンドする。

 さっそく指先に電流を集め、熱縫合ネツホウゴウ破損部ハソンブを閉じて行った。

「ず…随分ズイブンと、器用キヨウなのねヤマザキ先生。 手探テサグりだけで、直接、見る事もしないで縫合ホウゴウしてしまうなんて…」

 リヴァイアサンより解放されたアクアディーテが、肩をカバいながらオドロいている。

 酸素がまだ充分に脳へと運ばれていない俺は、フラつきを覚えながらも彼女の元へ歩み寄った。

 床に転がる伯爵ハクシャクドノが、2 、3大きく痙攣ケイレンする。

 最低1週間は気絶したままであろうが、命に別状は無い。

 今回の闇稼ギルドは、今宵コヨイ、デスマスク伯爵邸ハクシャクテイで、事件の証言さえすれば良かったはずだ…伯爵の命をウバう事が目的では無いのだ。

「痛むか…?」

 俺がヒザを着くアクアディーテへ、声をかける。

『ブギーマン・ブルース!!!』

 咆哮ホウコウする彼女は、ミズカら右肩をナグった。

 すると俺の前で、レイヒツギをカラカラとらしてみせ『受け取って!』と言う仕草でトビラを開ける。

「便利な能力ジーニアだな…アンタのは!」

 差し出した俺のテノヒラに、先端がツブれた弾丸が一つ、転がり落ちた。

「私には肩の弾丸をヒツギへと閉じ込め取り出す事は出来ても…残念ながら銃創ジュウソウ縫合ホウゴウする能力は無いわ。 出来れば目の前の医者様に処置ショチして頂きたいの…いいかしら?」

 彼女のキレイな目が笑う。

「フン! 俺は、警察が嫌いなんだ!

 高くつくぜ!」

結構ケッコウよ…今回は職務中の負傷フショウだけに、労災保険が下りるでしょうから…どうぞ、いくらでもそちらに請求セイキュウしてちょうだい。

 公務員は福利厚生フクリコウセイ手厚テアツい事が、唯一ユイイツの取りだわ」

 これには俺も、笑っちまった。



 直ぐさま、警察本部に援助要請エンジョヨウセイすると、大勢の警官が伯爵邸ハクシャクテイへとけつけた。

 敷地内シキチナイのパウル孤児院コジインクワしく捜索ソウサクした所、地下室から残りの監禁カンキンされていた子供達を発見し、皆、無事に保護する事が出来た。

 事件の究明キュウメイ自体は、デスマスク伯爵が回復し次第シダイ、始めるらしい。

 まぁともあれ…。

 長いウタゲの夜は終了した。

 ─チキショー。

 まったく…とんだ闇稼ギルドだったぜ。









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