第4話
はらはらと頼りなさげに舞い落ちる桜の花びら。
それを目で追って空を見上げてみると、そこには雲一つない、抜けるような青空が広がっていた。
散りゆく桜吹雪が青空というキャンパスに散りばめられ、ワクワクするような寂しいような気持に駆られる。
ニュースの天気予報では、今日も今日とて一日中快晴。
天気がこれ以上崩れることはないから、一円玉天気なんて言われているらしい。昔の人は上手いことを言ったもんだ。
スクールバックを右肩に引っかけ、凛麗学園名物の桜並木をゆっくりと歩く。
俺の隣には誰もいない。鈴乃は朝早く登校し、既に校舎に着いているころだろう。
今頃は、どっかの誰かに王子ムーブをしているかもしれない。王子様は大変だな。
鈴乃と俺が一緒に登校しない理由は簡単。
あいつ、俺が隣にいると直ぐ甘えたそうにしてくるからだ。
流石に学園の王子としてのイメージもあるし、それを崩さないように学校では極力他人の振りをするようにしている。
こればっかりはしょうがない。スクールカーストのトップオブトップである鈴乃の宿命だ。
…………。
さ び し い。
はいぶっちゃけます。超寂しいです。
何で好きな人と半同居状態なのに、学校では全く絡めないのか理解できぬ。
いや、分かってる。鈴乃が変なところで我慢できずに暴走するのを、未然に防ぐためだ。
……あいつが我慢できればそれに越したことはないが、あのお姫様は小学校、中学校と何度やらかしかけたか分からない。
ぶっちゃけ、信用ならん。
ヤ○チン男の「さきっちょだけ」並みに信用ならん。
でも……好きな人と恋人になって、一緒に登下校する、って……憧れるよなぁ。
そんな光景に思いをはせながら、凛麗学園に続く道を歩く。
さて、丁度この辺で
そんなことを考えてると、背後から軽快な足音が聞こえてきた。
足音の主を迎えるために少しだけ振り返る。
すると、俺の胸までしかない小柄な女の子が元気いっぱいといった感じで駆け寄ってきた。
うーん、相変わらずの小動物み。イメージとしてはリス。ちまちましている。
「しょーご! おはおはー!」
「おはよう夢葉。今日も元気いっぱいみたいで安心したよ。丁度お前のことを考えてたんだ」
「あっはー! 私もしょーごのこと考えてたよ(嘘)!」
「(嘘)を言葉で表現するな」
てへっと自分の頭を叩く夢葉。
こんなあざといところもあざとく見えないのは、こいつが本物の美少女だからだろう。
凛麗学園二年一組、
一年の頃からの腐れ縁で、自称凛麗学園のアイドル担当。
ただこの自称、案外間違っておらず、本当にそんじょそこらのアイドル以上に可愛い。
頭の少し高い所で、リボンを使って結んだ茶髪のポニーテール。
太陽のように輝く大きな栗色の目。
小柄な体にマッチした慎ましい胸。
綺麗や美しいといった鈴乃とは対極の、元気可愛い活発的な女の子。
それが凛宮司夢葉だ。
そして特徴的なのが、常に大きめで茶色のカーディガンを身に付けていること。
萌え袖を通り越して手すら出ていないし、丈も長いからスカートも見えない。
一見スカートを履いてないように見えて、油断してるとどきりと心臓に悪い。
ほら、今通り越していった
分かるぞ、その気持ち。俺も最初これを見た時、似たような気持ちになった。
まあ、このカーディガン俺のなんですがね?
「夢葉、いい加減そのカーディガン返せよ。そんで身の丈にあったものを着ろ。ガバガバ過ぎて童貞を殺す服みたいになってるから」
「いーじゃんいーじゃん、減るもんじゃなしに」
「現在進行形で俺の服が減ってる件について」
「ぶーぶー。心狭いなー、しょーごは。ケチー、童貞ー」
「童貞関係ないやろ」
「にししー。……ふぇ……ぶぇっっっくしょぉーい!」
「おい、女の子なんだからもっと慎ましくくしゃみをしなさい。可愛い顔がパグみたいになってるぞ」
「えー? パグ可愛くない?」
「だから例えにしたんだ。お前はどんな顔でも可愛いからな」
「……あっはー! 相変わらずだね、しょーごは!」
若干頬を染めて、再びにししーと笑う夢葉を見ると……出会った当時のことを思い出す。
【あとがき】
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