第5話
チェルシーが視察がてら町を散歩していると、広場に人だかりが出来ていた。
チェルシーは人混みをかき分けて、その中心を見るとハリス・ヘイゼル嬢が二組の夫婦と子ども一人を相手に、話をしている。
話の内容はこうだった。
「それでは、子どもの手を引き勝った方が、親だと認めます」
「はい」
子どもは両方から手を引っ張られて叫んだ。
「痛い!!」
それを聞いた片方の親が手を離した。
「それでは、手を離した方が本当の親とします。我が子の痛みに耐えられない心の持ち主だからです」
得意げなヘイゼルに、チェルシーは待ったをかけた。
「ヘイゼル様、ここだけの話でしたら、いくらでも取り繕うことができますわ」
「チェルシー様? それでは、どのように解決致しますの?」
「簡単なことです。お子様を孤児院の世話係として、住み込みで雇わせて頂きますわ」
ヘイゼルは驚いた。
「親から子どもを離すのですか?」
「ええ、子どもの毒になる親も世の中には多数いらっしゃいますわ」
チェルシーは冷淡に話し続けた。
「孤児院では文字の読み書きや、仕事のやり方を教えておりますから自立することができますわ。それに温かい家庭とはどのようなものかも知ることが出来ますし」
「神は見ております。チェルシー様がそうおっしゃるのなら、私はそれに従いますわ」
ヘイゼルは静かに頭を下げた。
「頭を上げて下さいませ、ヘイゼル様」
チェルシーは信心深く素直なヘイゼルのことは嫌いではなかった。
「それでは、チェルシー様の指示に従い、孤児院で世話係を務めさせて頂きます」
子どもと親は頭を下げた。
「それでは、ごきげんよう」
チェルシーは、くるりと背を向けて館に戻っていった。
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