第60話
☆☆☆
4日目の朝は期待に満ちて始まった。
今日を入れてあと4日。
あと4人逃げ切れば人権剥奪期間は終了する。
テントの中で両足を抱えて座り、あたしはぼんやりとスマホを見つめていた。
さっきから何度もメッセージが届いていた。
どれもこれもあたしを誹謗中傷するものばかりだ。
知らない間にあたしのスマホ番号がネットにさらされているらしく、電話も頻繁になるようになっていた。
それでも電源をつけているのは時々両親からのメッセージが入るからだった。
「そんなに真剣に何を見てるんだ?」
聡介に言われてあたしは咄嗟にスマホを隠してしまった。
「恵美?」
「……両親からのメッセージ」
隠し切ることはできないだろうと思い、あたしは素直にスマホを見せた。
そこにはさっき届いた両親からのメッセージが表示されている。
《今から助けに行くから、昇降口で待っていなさい》
「これ、本当か?」
聞かれてあたしは左右に首を振った。
「わからない」
メッセージアプリのIDはたしかにお母さんのものだった。
でも、このメッセージを信用していいのかどうかはわからなかった。
もしも、舞みたいになったら?
そんな気持ちが浮かんでくる。
まさかお母さんたちがあたしを殺すはずがない。
でも、もし、お母さんのスマホを他の誰かが操っていたら?
その可能性はあると考えていた。
この誘いに乗って昇降口へ移動すると、何が待ち受けているのかわからない。
「返事はしないほうがいい」
そういったのは花子だった。
花子の目は相変わらず鋭くて、他人を射抜くような目をしている。
「……そうだよね」
わかっていたことだけれど、落胆してしまう。
あと4日間は誰のことも信用しちゃいけない。
そう思い、あたしはスマホの画面を閉じた。
「大丈夫だよ、これが終わったら帰れるんだから」
射抜くような目をしていた花子が不意にそんなことを言った。
あたしは驚いて花子を見つめる。
「ここまで来たんだから、絶対に生きて終わるでしょう?」
「うん。そうだね」
あたしは力強く頷いたのだった。
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