第57話

☆☆☆


大志と花子が2人で武器を移動させている間、あたしは聡介の足の様子を確認していた。



怪我をした当初に比べれば随分とマシになっているようで、少しずつ歩けるようになってきている。



「よかった。まだ走れないかもしれないけど、順調に回復してるね」



「あぁ。ごめんな、あれ以来ぜんぜん助けられなくて」



その言葉にあたしは左右に首を振った。



「そんなこと気にしなくていいよ。部室棟にいれば生徒たちは滅多に来ないし、こうして武器を持てることがわかったから、安心して?」



あたしはそう言ってハンマーを聡介に手渡した。



「これは聡介の分。今のところ保健室は襲撃されてないけど、念のために」



「サンキュ」



生徒たちの登校時間になるまでつかの間を仮眠を取り、1時間目の授業が行われている間にあたしと大志と花子の3人は保健室を出た。



「どこに行くの?」



前を歩く大志に声をかけると、大志は銀色の鍵を見せてきた。



「それ、どこの鍵?」



花子もなにも聞かされていないようで、不振そうな声を出している。



「保健室よりも安全そうな場所の鍵だ」



大志はもったいぶるように答える。



あたしと花子は目を見交わせて首をかしげた。



保健室、部室棟と安全そうな場所はいくつか見つけているけれど、まだあっただろうか?



そう思ってついていくと、たどり着いたのは屋上だった。



鍵を開けて外へ出ると心地いい風が吹いていた。



今日は天気もよくて外は眩しいくらいだ。



「気持ちいい……」



呟いて両手を空に突き上げる。



窓から外の景色を見ていたものの、こうして体全体で太陽の光を浴びるのは数日ぶりのことだった。



「本当。やっぱり外っていいね」



花子も珍しく口角が上がっている。



大志はドアの鍵をかけて自慢げに笑顔を浮かべた。



「普段上がれない屋上に来る生徒は少ないだろ」



「そうだね。その鍵は職員室から持ってきたの?」



聞くと、大志は頷いた。



「あぁ。ちょっと拝借してきた。でも合鍵はまた別の場所にあるだろうから、狩の時間は安全じゃないけどな」



それでも生徒から逃げることはできそうだ。



「でも、どうして急にここに来ようと思ったの?」



花子がそう聞いた。



すると大志は真剣な表情になり「昨日の夜、保健室に誰かが入ってきたらしい」と、答えたのだ。



「え?」



あたしは目を丸くして聞き返す。



そんな話、聡介から聞いてない。



「1度保健室のドアを空けようとして鍵がかかっていることに気がついた相手は、鍵を持ってもう1度戻ってきたらしい」

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