ノックの音がした
紫風
ノックの音がした
ノックの音がした。
こんこん。
誰だろう。男は思った。
時刻は昼の3時を回って、長針が2つばかり進んだ頃。
こんこん。
誰だろう。こんな、誰も訪ねてくるはずのない部屋にノックなど。
「・・・・」
立ち上がり、ドアを開けようか。
この退屈な日常の、何かが変わるかもしれない。
しかし、男はドアを開けなかった。
何故なら、人類は滅びてしまい、自分は最後の人間なのだから。
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その木の周りには、枝がいっぱい落ちていた。
枝のほとんどは短く、強い風が吹くとばらばらと風に乗って散っていった。
時には壁に当たり、音を立てることもあった。
こつんこつん。
こつんこつんと。
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ノックの音がした。
こんこん。
こんこん。
誰だろう。男は思った。
時刻は午後4時を回って、長針が1つばかり進んだ頃。
誰だろう。こんな、誰も訪ねてくるはずのない部屋にノックなど。
男は立ち上がり、ドアを開けてみた。
「・・・・」
そこには誰もいなかった。
居るはずがなかった。
人類はとうに滅びてしまい、自分は最後の人間で。
ドアを開けた先には、見渡す限りの砂漠。
男の目線より上にあるものは、男の住んでいる建物のみ。
地平線まで薄い黄色の砂ばかり。
男は見飽きた風景に落胆して、ドアを閉めた。
終
ノックの音がした 紫風 @sifu_m
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