第634話「リオネルの提案とは……一体何だろうか?」

午前8時、リオネルとヒルデガルドは、仮眠から目を覚まし、

朝食を摂る為、大広前へ。


いつもより約1時間遅れの朝食である。


事前に伝えておいたので、イェレミアスも朝食の時間を遅らせ、

リオネルとヒルデガルドに合わせ、8時にやって来た。


あいさつを交わした3人が席につくと、まずヒルデガルドが、


「おじいさま、宜しいでしょうか?」


「うむ、何だね?」


「はい、ご報告致しますわ。予定通り、フェフから延びる主要幹線道路5つの拡張、舗装工事は、昨夜の午後10時から開始し、翌午前3時過ぎにかけて行われ、無事終了致しました」


「おお、そうか! 終わったのか?」


「はい、それぞれ距離は100㎞、幅8mの舗装工事が完了致しましたわ」


「ふむ、立会いごくろうだった。しかし約5時間でこれほどの工事を行うとは、いつもながらリオネル様は凄すぎるな」


「はい、おじいさまのおっしゃる通りですわ」


「うむ、だな」


「はい、リオネル様の背におぶさり、工事の開始から終了間まで、私がしっかりと見届けました」


「うむうむ、そうか。では実際に歩いた仕上がりはどうかな?」


「はい、リオネル様と私で歩いてみましたが、歩き心地は上々です。とても頑丈で、荷物満載の馬車の車輪でもびくともしないと思います」


ここでリオネルが挙手、イェレミアスが反応する。


「おお、何でしょうか、リオネル様」


「はい、補足説明を行います。地属性魔法で生成した石畳舗装には、雨水が表面に溜まらないよう、または滑りにくいよう、表面を加工してあります。利便性と耐久性も考えた仕様です」


リオネルの言葉を受け、すかさずヒルデガルドも言う。


「はい、リオネル様のおっしゃる通り、誰が歩いても、どんな悪天候でも、全然ノーダメージですわ」


リオネルとヒルデガルドの息はぴったりである。


イェレミアスは嬉しそうに目を細めた。


「リオネル様」


「はい」


「いろいろな事業と並行では大変だとは思いますが、イエーラの道路事情が改善されれば、各所にどんどん好影響が出て来ると思いますぞ」


「ですね。特別地区の建設、市場の拡張、改修工事もそうですが、道路工事も時間を有効に使い、タイムリーに行いたいと思います」


「お願い致します」


「イェレミアスさん、ヒルデガルドさん、まずは主要幹線道路5つを舗装化してどうなるのか、様子を見ましょう」


「「はい!」」


これで道路の拡張、舗装工事の報告は終了。

使用人達へオープンにしても差し支えない内容だ。


差しさわりのある他の打合せは、

いつも通りリオネルの泊まっている部屋の客間にて行う。


という事で、3人は改めて朝食を摂り始めたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


朝食後……3人はやはり、リオネルの泊まっている部屋の客間へ移動。


今後の打合せを始めた。


イェレミアスの言う通り、いろいろな事業を同時進行している為、

重要度、進行状況、必要な対応を随時確認し、

優先順位をつけながらスケジュールを管理するのだ。


管理し、スケジュールを組むのはリオネルが提案、主導する。

それに対し、イェレミアス、ヒルデガルドが意見し、検討、調整する形だ。


「農業支援は、1チーム10名で派遣する事務官と武官の編成は既に終わっています。ですから全ての首長から回答が届く前に、先に来たものから随時処理して行こうと思います。援助物資の確保もしてありますし、俺の転移魔法でチームを現地へ送ります」


これはイェレミアス、ヒルデガルドも了解した。


リオネルは頷き、次のテーマへ、


「公社に関しては直営店がとても好調です。毎日完売が続いており、今回の工事で街道も整備されましたから、フェフへの来訪者も増加し、更に売り上げ増加が見込めそうです。なので2号店、3号店の出店を計画しましょう。ちなみに2号店は拡張改修するフェフの市場内へ出店すれば良いと思いますし、交易の窓口である特別地区の方に3号店を出すのが良いでしょう」


リオネルの言う通り、フェフに開店した公社直営店は絶好調である。

イエーラでは珍しい人間族国家からの輸入品を扱っているという理由はあるにせよ、

それが呼び水となってか、一緒に売っている国産商品の売り上げも好調なのだ。


それゆえ、販売窓口を増やすのは妥当な判断だろう。

選んだ出店場所もベストだと思われる。


「ただ一気に店舗数が増えれば販売商品の不足、品切れ等が起こるかもしれません。そういった事を絶対に防がなければなりませんから、生産者としっかり連携し、仕入れルートの確保が必要不可欠となります。ワレバッドなどから持ち帰った商品、つまり輸入品を売るのも大事なのですが、そろそろ国内産の商品開発、増産にも目を向けましょう」


輸入品を売りつつ、国内産の商品開発、増産……


これは3人でず~っと話しているいくつかのテーマの中のひとつである。


「話が少し戻りますが、国内農業に関してはまず国内への安定した食料数確保ありきで、生産する作物種類の調整、また増産、減産見直しなどの対応をしましょう。小麦、ハーブといくつかの野菜はイエーラにおける主要作物ですが、今回の開拓で新たな農地が増えますから、来年から全体的に生産計画を作り直すのもありです」


国内農業に関してはまず国内への安定した食料数確保ありき。

今回の開拓で新たな農地が増えたから、生産する作物種類の調整、また増産、減産見直しなどの対応をし、来年から全体的に生産計画を作り直す。


「輸入品、国産品とも直営1号店の販売データがそろそろ出るでしょうから、事務官さんに分析して貰いましょう。今年に関して言えば、ひとつ提案があります」


リオネルの提案とは……一体何だろうか?


「輸入食料品の中で売れ筋のもの……特に加工品、例えば酢漬け野菜とか、肉、魚の干物、そして料理なども、人間族社会オリジナルのものをイエーラ産の材料で作り、試作品をまず国内で、受けが良ければ増産し、輸出用にもするのはいかがでしょう? イエーラオリジナルの商品とともに、良い売り物になると思いますが」


そんなリオネルの言葉を聞き、挙手をしたのがヒルデガルドだ。


「はい! リオネル様! それ大賛成です! 私も美味しいと感じてワレバッドで食べた人間族の加工品や料理がイエーラ産の食材で作られる。それも直営店で売れ筋なら裏付けもありますし、上手く作ればとても売れると思います!」


愛孫の賛同を聞き、イェレミアスも同意、また新たな仕事が生まれたのである。

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