第460話「リオネルの降下に気付き、威嚇し唸る竜の周囲で、 大気が凍る音が不気味に響き渡る」

アクィラ王国フォルミーカ迷宮地下121階層、広大な空間を探索するリオネル。


少し先に、ノーマルタイプの火竜が計3体現れた!


対して!

リオネルは仲間達へ、西方に見える峡谷っぽい原野へおびき出すよう命じる。


戦闘開始までは、先ほど異形の巨人フォモールどもと戦ったのと、

殆ど同じ段取りだ。


敢えて、作戦を簡単に言うのなら、仲間達が『囮』となり、

ノーマルタイプの火竜どもを誘い、現在地から西方にある、原野へおびき出す。


岩だらけの原野なら、どのような手立てを使っても、

破壊する被害が限定されるから。


おびき出し、竜どもを釘付けにしたところで、リオネルが赴き戦う。


但し、魔法、格闘、遠距離、近距離、どう戦うのか、仲間達には伝えていない。


当然、リオネル自身、基本の戦い方は決めていて、

状況が変われば臨機応変に対応するつもりだ。


仲間が動いて、竜をおびき出しても、リオネルはその場から動かない。


しかし、動かずとも!


これまで数限りなく使った索敵の経験値が……

張り巡らされ、熟練度が究極の域に達した『魔力感知』が、

絶大な効果を発揮していた。


ひとたびリオネルが念じれば、敵の動き、意思が、否! 

仲間も含めた全者の行動と意思が、心へ、手に取るよう飛び込んで来るのだ。


感じる!

捉えられる!

はっきりと分かる!


仲間達はノーマルタイプの火竜どもを、上手く原野へ追い込んでくれたようだ。

そして、かく乱も行い、火竜どもがその場から動かぬよう、釘付けにしている。


リオネルは、ぱぱぱぱぱぱぱ! と考える。

新たに考えるのではなく、再確認である。


ノーマルタイプドラゴン、火竜ならば、飛竜ワイバーンなどと違い、飛行は不可能。

重々しく地上を移動する、完全な陸戦型だ。


奴らの武器は、高熱の息から繰り出す火炎、鋭い牙を生やした巨大な口、

前足のかぎ爪、巨大なしっぽ。


そして、底知れぬパワーとスタミナを誇る。

生半可な武器は、簡単に跳ね返してしまう分厚い皮膚……装甲には要注意だ。


攻め方は、飛翔して、火炎をかわし、頭上から、魔法を撃つのが上策。


しかし、接近戦で、奴らのボディへ、パンチと蹴りもぶち込みたい!


リオネルは改めて確認する。


人間の気配もなし!


失われし、飛翔、転移の魔法を使っても露見はしない!


接近する第三勢力なし!


邪魔は入らない!


よし!

行くか!


飛翔フライト!』


心で言霊を念じたと同時に、


ぶわわわわっっっ!!!!!


言霊とともに、リオネルの身体は強き聖なる風に乗り、

勢い良く、舞い上がっていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


地上から高さ約60m。

すいすいっと、聖なる風に包まれ、軽々と飛翔するリオネル。


……あっという間に、ノーマルタイプのドラゴン、火竜3体が足止めされている原野の上空へやって来た。


見やれば、眼下には……

ケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟、火の精霊サラマンダーに擬態したファイアドレイク、1mの鷹に擬態した鳥の王ジズは……

まるでからかうかの如く、ヒットアンドアウエイ戦法で挑発。


たまに軽く一撃を入れ、怒った竜が攻撃するのをすいすいとかわしていた。


ちなみにアスプは『予備隊』となり、遠巻きにして見守っている。


竜の攻撃は様々。

先ほどリオネルが、再確認した通りである。


高熱の息から繰り出す火炎を吐きまくる。


鋭い牙を生やした巨大な口で嚙み殺そうとする。


前足のかぎ爪で切り裂こうとする。


巨大なしっぽで、薙ぎ払おうとする。


仲間達はこれらの攻撃を見切り、楽々と躱していたのだ。


仲間達はただ竜を牽制し、この場に留めておくだけではなかった。

竜達に攻撃させ、見切る事で、リオネルにその様をしっかりと見せている。


いちいちお願いしなくとも、こういうフォローをしてくれると助かる。


お前達のお陰で竜……ノーマルタイプのドラゴン、火竜3体の動き、攻撃は、

全て見切った!


リオネルは満足そうに頷く。


訓練の成果も合わせて、試そう!


『よし! ありがとう! 最初の話通り、3体全て俺が倒すよ。危ないから少し離れていてくれ!』


念話で指示を入れると、仲間達は、潮が引くかの如く、撤退した。


少し離れた場所で、リオネルの戦いを見守る。


そう念話で戻して来た。


『了解!』


リオネルはそう言うと、降下を始め……


降下しながら……


『絶対零度!』


水属性魔法最高位のひとつ『絶対零度』を発動した。


これまでファイアドレイクを始め、マイナーバージョンを使った事はある。


だが今回使うのは、手加減なしのノーマルバージョンだ。


ぐおおおおおおお!!!!!


バキバキバキバキバキバキ……


リオネルの降下に気付き、威嚇し唸る竜の周囲で、

大気が凍る音が不気味に響き渡る。


ちなみに『絶対零度』はこのような場合、竜を3体一緒に葬る事も可能だ。


しかし!

リオネルは3体のうち、1体のみを狙った。


リオネルの『絶対零度』発動の円滑さ、そして制御はピンポイント!

針の穴を通すくらい、正確であった。


ぱっきいいいいいいいいんんん!!!!!!!!!!


狙った通り!

3体いるうち、たった1体の火竜だけが、ガラスが割れるような音をさせ、

あっさりと砕け散っていたのである。

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