第435話「どうやら、勢子組は上手くやってくれたらしい」
翌朝……
バルトロメイ・アンドルリーク率いるドヴェルグ族のクランは、
地下81階層の探索へ出発した。
全員が、革兜に探索用の魔導灯を装着している。
今日も一日、リオネルが本日の目標階とする地下90階層まで探索し、
銀製と水晶製のゴーレムの捕獲に励むという。
……昨夜リオネルは一番気になっていた事を尋ねてみた。
倒したゴーレムをどのように運ぶのかを。
バルトロメイ達がはあっさりと教えてくれた。
捕獲したゴーレムは、空間魔法を
特別な魔道具で迷宮外へ運搬するという。
仕組みはリオネルの持つ収納の腕輪に良く似ていた。
リオネルが聞けば、人力で地下80階層へ運んで来た銀製のゴーレムは、
地下81階層の上り階段間近で倒したらしい。
「収納にえらく時間がかかるのが、この魔道具の欠点でなあ。すぐ目の前が階段なのに、81階層でただじっと待つのも芸がないと思ってよ」
実際、リオネルは、バルトロメイ達が銀製ゴーレムを仕舞うのを見た。
バルトロメイの言う通り、確かに、仕舞うのには20分ほど、時間がかかっていた。
残念ながら、この収納の魔道具に関して、製作方法や仕組みは秘伝という事で、
詳しくは教えてくれなかった。
だが、リオネルが王都の宿屋主人アンセルムから譲って貰った収納の腕輪より、
容量でも収納時間でも、だいぶ性能が劣るようだ。
「じゃあな、リオネル君、また会おう。下で何かあったら、互いに助け合おう」
「はい! 皆さん、さようなら! お元気で!」
「ああ、くれぐれも命は大事に……無理は禁物だ。もし地上へ戻って気が向いたら、ドヴェルグ族の国、ロッシュへ遊びに来てくれ。今度は『酒あり』で歓迎するぞ」
昨晩同様に念を押すバルトロメイ達を、笑顔のリオネルは手を振って見送った。
ひょんなことから、ドヴェルグ達のクランと知り合い、
彼らとは、魔法薬の調合、ポーションの開発について語り合った。
体力回復、けがの治療は勿論、
睡眠誘因、毒、石化……全ての特殊攻撃に対応、
魔物達に対し、アドバンテージを持ち戦える薬、ポーションの話はとても興味深かった。
彼らが最も得意とする鍛冶、金属細工の話、
酒と女子の話も単純に面白かった。
いつの日にか、ドヴェルグ族の国、ロッシュへ遊びに行こう。
そう決意し、軽く息を吐いたリオネル。
さあ!
こちらも探索再開だ。
バルトロメイ達が来たので、ケルベロス、オルトロスは、
地下80階層を『巡回』させたままにしてあった。
リオネルは、照明魔法を行使して、魔導光球を飛ばし、
魔獣兄弟を『小ホール』へ呼び戻すと、地下81階層へ向け、出発したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
階段を降り、地下81階層の探索を開始したリオネル。
先に行ったバルトロメイ達の反応はこのフロアにはない。
どうやら、既に82階層へ降りているようだ。
一旦、90階層まで降り、80階層へ戻る方針かもしれない。
さてさて!
この地下81階層は……疑似生命体の領域である。
ゴーレムは、銅製、ミスリル製に加え、銀製、水晶製が加わる。
また、ガーゴイルも出現する。
作戦は既に決まっていた。
魔獣兄弟はゴーレムの勢子兼ガーゴイルの討伐担当。
毒、石化等、特殊攻撃の心配がないので、妖精ピクシーのジャンも、
ゴーレムの勢子役を担って貰う。
よおし!
ゴーレム捕獲作戦、行くかあ!
どれが来ても、どん欲にゲットだ!
張り切ったリオネルが歩き出し……
索敵……魔力感知に反応があり、すぐにゴーレムに遭遇した。
現れたのは……
昨日バルトロメイ達が捕獲した『銀製』のゴーレムだ。
しかし、リオネルにとっては、初めて出会う種類のゴーレムである。
ドヴェルグ族は、鍛冶の素材用として、フォルミーカ迷宮のゴーレムを倒し、
捕獲した。
リオネルは捕獲したゴーレムを加工品の素材にしようと思わない。
だが、戦う相手により、様々な素材のゴーレム軍団を適材適所で使おうと思っている。
これからリオネルが戦う銀製のゴーレム。
そもそも銀という金属は、とても軟らかく、加工がしやすい。
その為か、旧い時代から、人間の暮らしと、ともにあった。
銀は、様々な刺激物に反応したりもし、
おぞましい魔物に対抗できる聖なる力をも秘めており、
護符やアミュレットも銀製のものは数多いのだ。
リオネルは、捕獲した銀のゴーレムは、
更に、究極防御魔法『
どうやら、勢子組は上手くやってくれたらしい。
念話の声が、リオネルの心に響いて来る。
『
『ばっちり仕留めろ!』
『頼むよ! リオネル様!』
『了解! 皆、ありがとう!』
まもなく、通路の奥に銀製のゴーレム10体が現れた!
リオネルは、大きく頷き、「ダン!」と迷宮の床を蹴り、
猛ダッシュしていたのである。
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