第418話「絶対に倒してやる!」

戦闘を重ねたので、約2時間を要したが……

リオネルは全くの無傷で、地下21階層から30階層を、楽々通過した。


ボトヴィッドから譲られた、至宝『ゼバオトの指輪』の効果も実感している。

魔力、精神力、身体能力、攻撃力、防御力が底上げされていた。


また、古文書に記載されている魔物が従うというところまでは行かないが、

リオネルが威圧せずとも、『及び腰』のような気がする。

……多分、指輪は能力を発揮するのはまだ少し先。

リオネルを完全に主と認めた時なのだろう。


さてさて!

時刻は午後0時30分を少し回ったところ。


地下30階層にも、下へ降りる階段付近に『小ホール』があった。


昼夜を感じにくくなる深き地下迷宮ではある。


だがリオネルは、すぐ31階層へは降りず、『ランチ休憩』する事にした。


30階フロアを探索したピクシーのジャンを呼び戻す。


しばらくして……

ジャンが戻って来ると、収納の腕輪から敷物を出し、床へ敷く。

床へ座ると、更に山猫亭で作って貰った弁当、焼き菓子、

冷たい紅茶の入った水筒、金属製のカップをふたつ取り出す。


焼き菓子と紅茶をジャンに勧め、リオネルは弁当を食べ、紅茶を飲む。

アクィラ王国料理もすっかり好物になった。

さくさくと完食し、紅茶を飲んだリオネルは、食事の後始末をした。


迷宮の地図を取り出し、31階層の頁を開く。


いつもの癖で、自問自答する。

ピクシーのジャンも、すでにリオネルの『癖』に慣れ、床に座ったまま聞いていた。

リオネルの自問自答が、情報共有になるからだ。


「ええっと、地下31階層から40階層は、オークの帝国か。出現するのはオークのみ。ノーマルタイプのオークに、上位種は、オークソルジャー、オークオフィサー、オークカーネル、オークジェネラル、そして奴らの王と言われるオークキングか……勢ぞろいだ」


「完全なパワー型脳キン軍団だな。最上位のオークキングは既に戦って倒しているし、習得したギフトスキル・オークハンターの効能効果はあるし、魔法を使わない奴らだし、アドバンテージだらけだ……普通に戦えば負ける相手じゃない。まあ油断は禁物だけどな」


そう言いながら、リオネルは、王都を旅立って間もない頃、

アルエット村でオークカーネルと戦った際、魔道具と火属性魔法の組み合わせという奇策を使い、苦労して倒した事を思い出した。


「……あの頃は……俺も今ほど強くはなかった。でも、数多のいろいろな戦いを経て、ず~っと強くなった。そしてはるばるフォルミーカの迷宮まで来た」


感慨深いと、リオネルは思ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ランチ休憩を終え、リオネルは出発した。


時刻は午後1時15分を回ったところだ。


地下31階層に降り、まず32階層への階段を目指す。


出現するのはオークのみ。

という圧倒的なアドバンテージで戦える領域なので、リオネルは習得した数多の魔法、スキル、戦法を実践しながら進む事に決めていた。


まずは、格闘技のみ。

破邪聖煌拳はじゃせいこうけんを中心に、シールドバッシュ、投げ技も駆使しして戦う。

戦っている最中、わざと打撃を受け、オークの攻撃が無効化している事も確かめた。


次に遠距離から魔法で撃つ。


まずは、風、岩、水、火の『弾』を普通に撃つ。

次に『フリーズハイ』『威圧』『大地の束縛』を使い、敵を行動不能にし、撃つ。

体内魔力がいくら消費してもすぐ満タンになる無尽蔵さ、

消費魔力も微量なので容赦なく撃つ。


魔力制御が著しく上達したリオネルは、直線、正面だけでなく、

放った魔法の軌道を自在に変えて、護衛に守られた最後方の敵を撃ち抜く事にも成功した。


威力の強弱も、魔力の調整だけでなく、『貫通撃』を加えてみたりもした。


戦法もいろいろな事を試してみる。


正々堂々と正面から。

シーフ職スキル『隠形』『忍び足』を使った奇襲。


ここで初めて従士を呼び出した。

まずはケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟だ。


彼らに『勢子』となって貰い、追い込んで来たオークどもを掃討する。


また階層間の転移魔法も試してみた。

万が一何かあれば、魔獣兄弟へフォローを頼んで。


同フロア内での近距離移動は既に成功している。

まずは上層へ。

既に通過したフロアへ戻る形だ。


何回か試したが、問題はない。

地下31階層から、地下1階層へも安全に、瞬時に戻る事が出来るだろう。


現時点でリオネルの転移魔法の移動可能距離は、約100km強。

多分、フォルミーカ迷宮の最下層300階へも容易く移動し、

到達出来るに違いない。


しかし、リオネルはそんな味気ない事をしない。


迷宮攻略を楽しみに、はるばると旅をして来たのだ。


習得した己の能力を実践し、効能効果をじっくりと味わいながら、進みたい。


そうこうしているうち、オークどもの『王』とされるオークキングが現れた。


さすがはオークキング。

上位種を5体、ノーマルタイプのオークを50体ほども連れていた。


他の迷宮よりは遥かに広いフォルミーカ迷宮の通路でも、オークどもで満ち溢れている。


……オークキング。

ジェローム・アルナルディとともに、討伐に赴いた時以来の敵だ。


絶対に倒してやる!


しかし!

リオネルと対峙するオークキングは、数多の『護衛』に守られていた。


しゃらくせえ!


俺に対し、そんな『盾』は無駄! 無駄! 無駄あ!!


ダン!

と迷宮の床を蹴り、リオネルは猛ダッシュ!


がんがんがんがん!

と、立ちふさがるオークどもを弾き飛ばし、


どぐおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!!


重く鈍い音を響かせながら、驚愕するオークキングのどてっぱらへ拳を打ち込み、

あっさりと絶命させていたのである。

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