第369話「シルフの群舞など、児戯に等しい」
数多の課題をクリアし、様々な水の技法を習得したリオネル。
最高に上機嫌となった高貴なる水界王アリトンは、
リオネルに極大攻撃魔法『大渦巻』『絶対零度』を伝授した。
広大なアガムの湖面に立つリオネルへ、アリトンは言う。
『リオネル・ロートレックよ!』
『はい!』
『
アリトンが言う傍らで、ウンディーネのマイムも「うんうん」と頷いている。
対して、リオネルは深く一礼する。
『アリトン様とマイム様がお認めになる、恵みを運び潤す、聖なる水の使徒……この俺がですか、ありがとうございます』
『うむ! これからも難儀する者達の疲弊し、乾ききった心身を充分に潤し、癒やした上で、笑顔と生きる励みを与えてやるが良かろう』
『はい! 難儀する者達の疲弊し、乾ききった心身を充分に潤し、癒やした上で、笑顔と生きる励みを与えるのですね』
『そうじゃ! そして害為す邪悪なる者達へは容赦なく鉄槌をくだせ!』
『害為す邪悪なる者達へは容赦なく
『うむ! それこそが、水界王たる我の加護を授かった聖なる水の使徒の務めなのじゃ』
『アリトン様の加護を授かった聖なる水の使徒の務め……なのですね』
『うむ! そして、妾は知っておる!
アリトンの言う通り、リオネルは既に地の最上級精霊ティエラ、そして風を統括する空気界王オリエンスからも、それぞれ属性の加護を受けている。
『……そうです』
言葉少なく、リオネルはシンプルに肯定。
しかしアリトンは責める事無く、微笑む。
『ふむ、いずれ、高貴なる火界王パイモンも現れ、リオネル、なんじへ、火の加護を与えるであろう』
『…………………』
『その時こそ、なんじは、この世界の根幹たる、4つの属性の真理を心身に宿した、史上最強最高の術者となる』
『俺が、この世界の根幹たる、4つの属性の真理を心身に宿した、史上最強最高の術者に』
『うむ! まあ、正確には、なんじが史上最強最高の術者となるスタートを切ったという事じゃ。これからも日々の
4つの属性の加護を授かったら、全てが終わりというわけではない。
ここからまた新たな努力の日々が始まると、アリトンは言う。
無論、リオネルには想定内。
逆に闘志が湧きあがる。
『はい! 一層頑張ります』
『宜しい! じゃが、なんじの才能、向上心ならば、そう時間をかけずに済むであろう。頑張って研鑽と修行に励むが良い』
広大な水の境地アガムにおいて、水界王アリトンから、熱いエールを送られ、
リオネルは決意を新たにしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リオネルに関する、否、リオネル以外の情報も裏で共有している精霊達だが、
対抗心はやはり相当なものがある。
アリトンは、いたずらっぽく笑う。
『リオネルよ』
『はい』
『なんじが経験した風の谷におけるシルフの群舞など、児戯に等しい事を、
そうアリトンは言うが、反応、コメントに困る話である。
『ええっと……』
リオネルが口ごもると、アリトンは「すっ」と右手を挙げた。
すると、いきなり!
リオネル、アリトン、マイムの周囲に、とんでもない数のウンディーネ達が現れた。
全員マイムと同じ衣装、水色のヴェールをまとっていた。
顔立ちだけは違うが、同じウンディーネである。
髪はプラチナブロンドで肩の辺りまで伸びていた。
切れ長の目で、瞳は碧眼。
鼻筋がすっと通り、唇は小さい。
身体はスレンダーでスタイル抜群である。
先ほど、水宮城の街で、リオネルを誘ったウンディーネ達も居た。
手を大きく打ち振って、全員が熱い眼差しを投げかけて来る!
『わ!』
驚くリオネルを見て、アリトンは「にやっ」と笑い言う。
『さあ! リオネル! 習得した水の技能で、我が眷属達と思い切り泳ぎ、遊ぶが良い! もしも気に入った者が居たら、人間世界へ連れて行っても構わぬぞ』
『ええっと、人間世界へ連れて行くって……』
『うむ、マイムも含め、なんじの妻にしても構わぬという事じゃ!』
『えええええ!!?? つ、つ、妻ああ!!?? マイム様もおお!!??』
『うむ! 但し! 浮気や裏切りは絶対に許さぬぞ、ほほほほほ』
アリトンの高笑いが響く中、マイムが手を伸ばし、リオネルの手をしっかりつかんだ。
『うふふふふ♡ アリトン様からお許しも出たし! さあ! リオネル君! 思いっきり泳ごう! 遊ぼう!』
『えええっと……』
こうして……
リオネルは広大なアガムを、美しい大勢のウンディーネ達と、
楽しく泳ぎ、遊んだのである。
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