第353話「リオ!! な、な、何これ!?」

『わお! 全て、ばれて~らなのねっ♡ 私も知ってる! 知ってる! リオがさ、オリエンス様から風の加護を受けて、飛翔魔法を授けられ、すっごい従士のジズを貰い、シルフ達と舞い遊んだんだってねえ』


ティエラは言い、全く怒りもせずに、いたずらっぽく笑った。


やはりというか、

オリエンス達風の精霊一族とのやりとりは、ほぼ全てティエラは把握していた。


しかし、リオネルは逆に安堵する。

そして自分の推測が当たっていた事を実感する。


ティエラの告げた言葉が次々と甦る。


「この世界における大いなる自然の営み、そのスケールは勿論、術者の持てる力と数が、私達4大精霊の力には、大きな影響を及ぼす」

「そもそも精霊はね、とても誇り高く、己が最も優れていると考え、基本的には、優劣を絶対に譲らないの」


精霊はとても誇り高く、己が最も優れていると考え、基本的には、優劣を絶対に譲らない……しかし互いの立ち位置を認め、尊重はしている。


何故なら、地、風、水、火、4つの属性がそれぞれ支え合い、この世界を形成しているからだ。


ときたま力のバランスが崩れる事はあっても、

修復し、世界を保つようにすると、リオネルは考える。


そしてティエラが現れたのは、地の眷属の大事な儀式、ワームのイメージチェンジは勿論、リオネルとのコミュニケーションによる現状把握、

植物の繁茂、結実も司るという地属性の啓もう、

そして今、リオネルが考えたこの世界のことわりを知らしめる為など、

いくつもの要件があっての事だろう。


鉄は熱いうちに打てという。


リオネルに会うタイミングとしても、

空気界王オリエンス、そして古の上級魔法使いロランに邂逅した後の、

この機会を計っていたに違いない。


『うふふ、考えてるね、リオ。そして分かったみたいね、今、私が会いに来た意味がさ♡』


『はあ、何となくですが』


リオネルが曖昧に答えると、ティエラがにっこり笑う。


『うふふ♡ いきなりだけど、リオにさ、お願いがあるの』


『お願い……ですか?』


『うん! あの子達に、リオの強さを見せて欲しいのよ』


そう言って、ティエラが指し示したのは、彼女の背後に控えている5体のワーム達であった。


『え? ワームに俺の強さをですか? どういう意味でしょう?』


『うん! あの子達から見たら、私と親しく話すリオの事を、地の眷属に毛が生えたくらいの存在にしか思っていないの。だからリオが持つ力の一端を見せて欲しい、実力を知らしめるのよ』


ティエラはそう言うと、『お願い♡』と柔らかく微笑んだのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


唐突なティエラからのお願い……

巨大な魔物ワームに対し、力の一端を見せ、実力を知らしめる。


どうしたら、良いのだろう。

戦うのは簡単だが、それでは芸がない。


リオネルは、ぱぱぱぱぱぱぱぱぱ!と考えた。


肉体的にダメージを与えず屈服させる。

ある方法を思いついたが、それで問題はないのだろうか?


念の為、ティエラに対し、お伺いを立てた方が賢明であろう。


『ティエラ様』


『なあに』


『俺が考えた方法で、ワームと戦っても構いませんか?』


『いいわよ。殺さなければ、基本的に何でも』


ええっと……殺さなければって。

ティエラ様の眷属だから、まともに攻撃したら、宜しくないだろう。


『成る程。……では肉体的にはダメージを与えず、メンタルを少しへこませるくらいでいかがでしょう?』


『へえ! 何かベストアイディアを思いついたんだ』


『まあ、ベストかどうかは分かりませんが、やってみます。今、ちょうど修行しているんですよ』


『わお! それ楽しみぃ! 早くやって見せて!』


『はい、お見せ出来るかどうかはわかりませんが、やってみます』


お見せ出来るかどうかはわかりません……

何か意味ありげに、リオネルはそう言うと体内魔力を上げ始める。


そして言霊を詠唱する。


ハロム!』


すると!

リオネルから放たれた魔力が5体のワームどもを包み込み、


ぐっは~っっ!! きっしゃ~っっ!! しぇあ~っっ!!


瞬間!


奇声を発したワームどもは、びくびくびくっと身体を震わせ、

5体全てが、気絶してしまった。

生命反応はあるから、死んではいない。


驚いたのはティエラである。


『リオ!! な、な、何これ!? い、一体!! な、何が起こったの!?』


『はい、ティエラ様。行使したのは夢魔法の応用です』


『夢魔法の応用って……ワーム達は眠ってなんかいないわよっ!』


『はい、なのでワーム達には威圧を込めた白昼夢を見せました』


『い、威圧を込めた!!?? は、白昼夢う!!??』 


補足しよう。

白昼夢とは、日中、目を覚ましたまま、

空想や想像を夢のように映像として見ている事。

また、そのような非現実的な幻想にふける事だ。


つまりワーム達は目をさましたまま、何かリアルな怖い夢を、

リオネルにより見せられたのだ。


その気になる内容とは……


『はい、ワーム達が輪切りにされ、燃やされるイメージを見せました』


リオネルはそう言うと、呆然とするティエラへ対し、にっこりと笑ったのである。

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