第351話「更にさっすが、リオ!」
トライアルアンドエラーで行けば良い!
さあ! 行こう!
気合を入れ直しながらも……
リオネルは、気配を消し、静かに歩き出した。
一方、リオネルが照明魔法で呼び出した魔導光球は、
ふわふわと頼りなく、トンネル内を飛んで行く……
周囲を注意深く見まわし、索敵を張り巡らす。
視認は勿論、リオネルの索敵……魔力感知に、ワームの反応はない。
ワームは、地中をとんでもない高速で移動する。
そして危険を感じれば、すぐ土中へ逃れてしまう。
神出鬼没と言って良い。
そもそも、何故ワームはこのトンネルに現れたのか?
一番可能性があるのは、王国街道と直結するこのトンネルが、
餌である人間を捕食する為、身を隠しやすい絶好のポジション……というところか。
でも、『何か』が引っ掛かる。
疑問が生じる。
違和感を覚え、『心の内なる声』が、「待て! 熟考しろ!」と、
リオネルへ求めて来るのだ。
うん!
確かに……おかしい!
被害が全く出ていないというのは不可解だ。
どうしてなんだろう?
もしかして、ワームの奴、人間を襲って喰う気がないのか?
でも、このままにはしておけないよな……
ぱぱぱぱぱと考え、結果が出た!
……ワームと遭遇したら、いきなり戦うのではなく、様子を見て対応する。
今までにワームとは戦った事がないけれど……仮にここで戦ったら、
フォルミーカを含め、今後ワームに遭遇した際、
戦った経験が役に立つかもしれない。
リオネルは考え事をしながらも、油断なく進んで行く。
トンネルを半分ほど進んだその時。
!!!!!
飛ばしている魔導光球、リオネルの索敵、両方に反応があった。
それも土中である。
少し先、街道の深き地下から、ワームが地上に現れようとしているのだ。
魔力感知により土中の気配が探れるのは、ティエラから授かった地の加護のお陰かもしれない。
身構えるリオネル。
改めて体内魔力を上げて行く。
やがて!!
ぼごごっ! と街道の表面が異様に盛り上がり、どしゃっと、大量に土が噴き出した。
遂に!!
ワームが現れる!!
ぐっは~っっ!! きっしゃ~っっ!! しぇあ~っっ!!
耳障りで奇声に近い咆哮をまき散らしながら……
竜というより、巨大なミミズのような怪物が、リオネルの前に現れた。
それも次々と、1体、2体、3体、4体、計5体。
どれも体長15mをゆうに超える巨大な体躯だ。
成る程、コイツらがワームか。
見かけは竜って感じでもないし、蛇でもない。
ミミズって感じだ。
そして、いつもならば先手必勝だが……
心の内なる声に従い、様子を見よう。
当然、何かあればすぐ対処出来るようにして。
リオネルはまっすぐに、ワームどもを見つめた。
対して、ワーム5体も……襲いかかっては来ない。
やはり『何か』がある。
瞬間!
『はあ~い、リオ♡ おっひさあ!』
と聞き覚えのある声が、リオネルの心に響いたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
響いたのは、心と心の会話……念話である。
そしてこの声は、忘れるわけがない!
忘れられるはずもない!
すかさずリオネルも念話へ切り替える。
『ティエラ様!』
『わお! やっほ~! 元気ぃ?』
リオネルが、ワームと対峙するちょうど間の空中に、
栗色の肩までの髪、褐色の肌をした、身長150cmくらいの、
10代前半とおぼしき少女がにっこりと笑い、Vサインをし、浮いていた。
複雑な刺繍ししゅうが施された、茶色の革鎧をまとう、
可憐で愛くるしい顔立ちの少女である。
そう!
現れた可憐な少女は、人間ではない!
高貴なる4界王のひとり地界王アマイモンの愛娘、
地の最上級精霊のティエラであった。
思わずリオネルは苦笑する。
『ず~っと、おかしいと思っていました。やっぱりティエラ様でしたか』
リオネルの指摘に対し、ティエラはてへぺろ。
『……あはは、見抜かれてた?』
『はい、俺、いろいろな資料でワームは凶暴で人間を捕食するって、認識していましたから……犠牲者が居ないって聞き、凄く違和感があったんです』
『なっるほど!』
『そしてワームは地中に棲む魔物……地の眷属じゃないかって考えたら、もしやと思い、いきなり戦うのを避けたんです』
『さっすが、リオ!』
『こうやって対峙しても、ワームは戦闘モードに入らない。やっぱりと思いました。そこへティエラ様が現れたという感じですね』
『そっか! じゃあ! 私が来たのは、グッドタイミングだね♡』
『はい、この「ワーム騒動」って……ティエラ様のいろいろな思惑ありきって事ですよね?』
『わおっ! そこまで見抜いてる? いろいろな思惑ありきって、更にさっすが、リオ!』
リオネルの指摘に対し、ティエラは、感嘆。
大きく頷いたのである。
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