第305話「え!? ええええええ!!?? ほ、ほのおっ!!??」

立ち入った事情こそ聞いてはいないが……

お互いにシンパシーを感じ、心の絆を結んだリオネルとジェローム。


気持ちを新たにし、さくさくと砦本館内を進んで行く。

目標は最奥の司令官室。


途中、残党のオークが何体も潜んでいたが……

魔獣ケルベロスと同アスプに追い立てられ、全てが呆気なく倒された。


そんなこんなで……リオネルとジェロームは、ノーバトル。

満を持して、司令室前に到着した。


それまで先行していたケルベロスとアスプも、

主の指示通り、突入などせず、リオネルとジェロームの到着をじっと待っていた。


ぽっかりあいた司令室の大きな入り口からは、

上位種特有のおぞましく怖ろしい気配が漏れ出て来る。


索敵……魔力感知をせずとも分かる。


オークキングは間違いなく中に居る。


レベルは、軽く50オーバー。

下手をすれば60近いと思われる。


しかし、リオネルは全く臆していない。


否、

むしろ逆である。


これまで戦った事のない難敵へ思う存分に挑んでみたい!

そう思っている。


司令官室の前は、広さも高さも充分ある大きな空間となっている。

オークキングを相手に、リオネルがひと暴れするにはもってこいだ。


司令官室前に陣取っても、オークキングは出て来ない。


リオネルはケルベロスとアスプへ命じ、オークキングを挑発させ、引っ張り出した。

もしもダメだったら、アスプの睡眠誘因とスキルを使い、戦闘不能にし、あっさり倒すつもりだった。


いよいよ、リオネルが、オークキングと対峙する。


ぐおはあああああああああああああああ!!!!!!


ケルベロスとアスプの魔獣軍団に無理やり追い立てられ、

配下を全て倒された、オークキングは目を血走らせ、怒り狂っていた。

体長は5m、体重は軽く500㎏を超える堂々たる体躯である。


てめえらを喰ってやる!

骨まで残らず喰ってやるう!!


殺意と憎悪の念が、リオネル達に激しく放たれていた。


しかし、リオネルは平然としている。


彼は『内なる声』が告げた課題を忘れてはいない。

なので、思わず心の中でつぶやく。


『まさか、ここでお前に会えるとは思っていなかったよ。出来れば、オークジェネラルも居れば、なおベストだったな』


リオネルが心の内なる声から与えられた課題とは……

オークジェネラル、そしてオークキング……


更に上位2種と戦い、圧倒的な勝利を収めれば、

お前は、オークには無敵となるギフトスキル

『オークハンター』を習得出来るというもの。


順番が逆になっちまったが……

こいつを圧倒的な強さで倒せば、俺は『オークハンター』習得にリーチだ。


と,その時。


オークキングが、怒りで身体を震わせ、奇妙な声で咆哮する。


きえおおおおおおおおおおお!!!!!


すると、オークキングの目の前に、

何と何と何と!

異様な形状をした『魔方陣』が現れたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


オークキングが生成した魔方陣は不気味に蒼く輝いている。


魔法使いでもない魔物が魔方陣を呼び出す?


とジェロームはびっくりした。


しかし、リオネルは驚いたもののすぐに納得した。

魔法学校で、そして冒険者ギルドで受講した召喚魔法の授業、講義で、

教授された事を思い出したのだ。


「ジェローム、落ち着け。大丈夫だ。俺は魔法学校の授業で習った!」


「え? 魔法学校の授業で習ったあ?」


「ああ! 習った! これが、高位の魔物もしくは上位種が使う、召喚魔法に近い魔物特有のスキル、『仲間を呼ぶ』って奴だ」


「はあ!? しょ、召喚魔法に近い!? ま、魔物特有のスキル!? な、な、仲間を呼ぶう!?」


「ああ、己よりやや低いレベルの、同種か異種の個体を呼ぶのさ。俺も生まれて初めて見たよ」


「え!? お、己よりやや低いレベルの、同種か異種の個体を呼ぶう!? や、やばくないか!? それぇ!! オ、オークキングだろ!!」


仲間を呼ぶ……のロジックを聞き、動揺するジェローム。

オークの中で最悪最強なのがオークキング。

であれば、『召喚』されるのは!?


ぐわあああああ!!!!!


果たして!

魔方陣から、おぞましい咆哮とともに現れたのは!


オークキングのすぐ下位に位置するオークジェネラルであった!!


体格がひとまわり小さいだけ。

身長2m50cm、体重400kgオーバー、やはり堂々たる体躯である。


「うっわ!! 何だ!? オークキングと変わらない!! でかいぞぉ!! こいつう!!」


しかし!


リオネルは満面の笑みである。


「おお! ラッキー! コイツはオークのナンバー2! オークジェネラルだ!」


「はあ!!?? オークのナンバー2! オークジェネラルでラッキーだとぉ!!」


何故!?

強敵が出現して、大喜びするのか?

ジェロームには全く意味不明、分からない!


だが、リオネルの表情から笑みは消えない。

待ち人来る!

という会心の笑みである。


「まあ、見ていろよ、ジェローム」


リオネルはそう言うと、ケルベロスとアスプに、

ジェロームを護るように命じた。


自身は、オークの上位種2体を倒すべく、神速で体内魔力を上げて行く。


そして、両手を掲げると、


ごおっ!! ぼおっ!!


直径1mほどの炎が浮かび上がった。

訓練の結果、リオネルは炎弾を一度に2発放てるようになっていたのだ。


しかし、リオネルが火属性魔法発動!?


「え!? ええええええ!!?? ほ、ほのおっ!!??」


リオネルが『風の魔法使い』だと聞き、認識していたジェロームは、

驚きと戸惑いを隠せない。


「はっ!」


気合一閃!!


スキル『貫通撃!!』の魔力も込められた燃え盛る火球は、

リオネルの手からびしっ!と、放たれ、


どごおおおおおおお!!!!

どばんんんんんんん!!!!


凄まじい異音をたて、オークキング、オークジェネラルのどてっぱらを、

見事にぶち抜いていたのである。

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