第258話「各自が順調! ……しかし!」

……これまでの実績に加え、今回行った『支援施策』も大好評。


エステル曰はく、問い合わせが更に殺到。

リオネル達は、ますます引く手あまたの状態となった。


それから2か月間……

リオネル達4人はいくつかの町や村で、『支援施策』を請け負い、実施した。


次々と『支援施策』依頼を完遂しながら……


モーリス、ミリアン、カミーユは、冒険者ギルド総本部商人講座の基礎を終え、

応用編を受講し、これも完遂。


3人はワレバットのいくつかの商会で、現場研修も行い、商人として実践を行いながら、『支援施策』を行ったいくつかの町村とは商売を開始したのだ。


そして、いよいよモーリスは自分の商会を立ち上げ、正式に発進しようとしていた。


領主との調整が必要ではあるが、キャナール村との商売開始も前向きに検討され、

その先の3人の移住も見据えていた。


当然、ミリアンとカミーユは、モーリスが創立する商会の幹部『社員』となる。


ミリアンは、魔法の修行を行いながら、

リオネルから料理をじっくり習い、

ギルドの講座で自分の夢である飲食店の運営も学んでいる。


ミリアンの料理は作る手際もよく、結構な数のメニューを習得。

最近は自ら進んで皆の食事を作ったりもする。


特に、焼き菓子が秀逸で大好評なのだ。

キャナール村でカフェをオープンし、名物にしたいと目をきらきらさせて語る。


例によってカミーユが、ライバル意識を燃やし、

速攻で料理をいくつか習得したのがほほえましい。


そのカミーユもシーフとしてのスキルを上げながら、姉とともに仕事をするべく、

飲食店のノウハウを学んでいた。


冒険者、商人、農民の兼務、そしてキャナール村への移住……

3人の夢は着実に進んでいる。


実績と経験を積み、モーリス、ミリアン、カミーユは、

それぞれ冒険者ギルドのランクと、己のレベルを上げた。


モーリスがリオネルに続き、遂に遂に一流の証『ランクA』に!

ミリアンはランクBのランカーが射程圏内となった『ランクC』

カミーユは中堅といえる『ランクD』となった。


リオネルと同じ『ランクA』となったモーリスは、

ランカー冒険者の中でも、抜きん出た存在となり、

その名がちまたで知られるようになった。


レベルも、

モーリスは『42』

ミリアンが『23』

カミーユも『20』となった。


一方……リオネルはといえば、レベルこそ『22』にはなったが、

ランクは『A』のまま。


さすがに『S』までの道は遥かに遠い……


しかし、リオネルは自分のペースを崩さない。


3人と同じく『支援施策』の依頼をこなしながら、

各魔法の修行をひたむきに続けていた。


属性魔法は、リオネルの元々の属性、

風属性魔法の上達、新たな魔法の習得は著しかった。


火属性魔法、水属性魔法はそれなりに上達、習得したが、

最上級精霊ティエラから授かった、地の加護の効果もあり、

地属性魔法の上達、新たな魔法の習得も、

風属性魔法と同じくらいの成長度を示した。


気になる『転移魔法』も、発動の円滑さ、制御は抜群。

移動距離こそ完璧には程遠いが、約10kmの距離を超えるまでになった。


かつて3mの移動距離をティエラには大笑いされたが、

今度再会した際は、胸を張って報告するつもりだ。


「せっかく加護を与えたのに、10kmじゃ、まだまだ物足りないわ!」

と、ティエラからは、厳しく言われるかもしれないが。


それ以外の習得済みの魔法もスキルも、リオネルは熟練度を増し、使いこなすようになり、上級召喚術、上級付呪術の新たな習得に励んでいた。


そんなある日の事……

驚くべき事件が起こった。


何と! 突如、何の前触れもなく、

モーリスたったひとりが、

ワレバット領主で、冒険者ギルド総本部総マスター、

ローランド・コルドウェル伯爵から、『呼び出し』を受けたのである。


つまり、先日リオネルが臨んだような『謁見』が行われる事となったのだ。


リオネルは、業務担当のエステルへ尋ねたが、特に心当たりはないと言う。


そして、当のモーリスはといえば、全然プレッシャーを感じていなかった。


「46歳のおっさんならば、リオ君みたいに、貴族家養子入りの話でもないだろうし、悪事も働いた覚えがないよ」


と、軽口を叩いていたのだ。


しかし『謁見』の当日、リオネル、ミリアン、カミーユは、心配し、

エステルにお願いし、特別にギルドの応接室で待たせて貰っていた。


……1時間ほど待ったであろうか。


エステルに伴われ、モーリスが戻って来た。


当然、何が理由で呼び出されたのか、リオネル、ミリアン、カミーユは気になった。


「モーリスさん、ローランド閣下はどうでした?」


「師匠! 教えて!」

「教えてくださいっす! 師匠!」 


身を乗り出し、モーリスの身を案じるリオネル達。


「うむうむ、大丈夫、心配ないよ」


対して、モーリスはにっこりと柔らかい笑顔で応えたのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る